第34話 8 胸の中




 楽しかった3人きりのお誕生日会も終わり、彩香は自分の部屋に居る。

先程までの嬉しそうな顔に少し翳りが見える。


「あやちゃん、どうしたん?」


「うん、なんにもないよ」


「なぁ、あやちゃん? おっちゃんが来る前に誰かと話しててんやろ?」


「ちがうよ、おっちゃんじゃなくてぺぺちゃんだよ」


「うーん、でも、ワイ、自分でぺぺちゃんって、あかん、無理や」


「ワイって言ったらダメなんだよ。僕、って言わないとダメなんだよ」


「うーん、じゃ、僕に、前みたいに誰かとお話ししてた時みたいにお喋りしてもええんよ?」


「うん・・・。」


「ワイ、やなくて、僕に言うてもええねんで?」


「うん、あのね、パパ、胸の中で泣いてた」


「え?」


「ママは、胸の扉、閉めてたの」


「そうかぁ、あやちゃん、人の胸の中の声が聞こえたり、見えたりするねんなぁ」


「うん、聞こえたり、見えたり、するよ」

(そうかぁ、いよいよモリコーネに連絡せなあかんみたいやな。然し、あいつ、だいぶ歳やったしなぁ、死んでんちゃう。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る