第29話 3 添い寝



「ぺぺちゃん、一緒に寝よ」


「え! いや、それは、ちょっと、まだ早いんちゃう」


「もう8時だよ、寝る時間だよ」


「そうやんな、8時やわな、寝なあかんわな」


 そう言うとぺペンギンは、彩香のベッドの中へと潜って行った。


「ぺぺちゃん、抱っこ」


「今、何んて言うたの? それこそ、まだ早いんちゃう」


「何が早いの? ぬいぐるみは抱っこされて寝るんだよ」


「せやんな、そうやんな、ワイはぬいぐるみやんな、何んの問題もないわな」


「そうだよ、問題ないんだよ」

 その夜、ぺペンギンは朝まで眠る事ができなかった。はっきり言ってアホである。


 翌朝、


「あやかー、朝だよー、起きる時間だよー」


 と言いながら母親が彩香の部屋に入ってきた。


「いいねー、ペンギンさんと寝てたの、良かったね」


(やば、ワイ、動かれへんやん)


「おはよう、ママ」


 彩香は、まだ眠そうな顔で朝のご挨拶をした。


「よく眠れたみたいね。ペンギンさんのおかげかな?」


「うん、ママ、ぺぺちゃん、喋るんだよ」

(アホ、そないなこと、いきなりバラしてどないすんねん!)


「そう、いいお話相手が出来てよかったね」


「うん、彩香、素晴らしい未来があるんだって」

(おい! それ以上言うたらあかんて)


「未来? そう? 素晴らしいのね、良かったじゃない」


「うん、それとね、抱っこして寝ようとしたらね」

(あかん、仏滅や)


「抱っこしようとしたら?」


「恥ずかしがってた」

(終わった、世界の終わりや、宇宙文明の崩壊や)


「そうなんだぁ」


 そう言いながら彩香の母は、ぬいぐるみを抱き上げて頬ずりした。


「可愛いぬいぐるみさんね、彩香をありがとう」

(あかん、理解不可能や、宇宙理論物理学の崩壊や)

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