第30話 4 愛、無条件。
彩香の両親は仲の良い夫婦とは言い難い。朝起きると、
「おはようございます」
「おはようございます」
と互いに敬語で挨拶を交わす。
会社から家に帰ると、
「ただいま」
「お帰りなさい」
そして、会話がなくなる。
だからと言って喧嘩をする訳でもない。
互いに干渉し合わないように離れて過ごしている。
このままでは当然のことながら心まで離れていくのは当たり前の事である。
彩香の母親は子供には優しい。いや、夫以外の人には、ほぼ誰にでも優しく接する事ができる。
頑な、と言っていいのかも知れない。
夫は夫で、既に疲弊している。
仕事に疲れ、家に帰って来ても居る場所がない。
彼にとって彩香はこの家の宝物のように思えている。
いや、この世界で唯一の宝物であると信じている。
愛しているのである。
彩香は、そんな両親の間で、分け隔てなく母親にも父親にも接している。
幼いから出来ることなのか?
そんな訳はない。
小さな子供にだって、感じることのできる違和感はある。
では、なぜ? 難しいことではない。
この幼い子だけが、この家で唯一、みんなを愛する事ができているからだ。
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