第7話
どんな事があっても笑顔を忘れず。
確かに大切な事かもしれない。
翌日から早速やってみる事にした。
しかし、何もないのに笑顔のままでいるって。
結構、難しい。
其れでも会社の廊下で人に出会ったり、呼ばれて返事をする時などは、できるだけ笑顔で挨拶したり答えたりするようにしてきた。
確かにこのまま笑顔を続けるのも良いかな、
と思えるようにもなってきた。
自分自身が憂鬱な気持ちにならなくて済むという事が分かってきた、ような気がする。
それと、周りの人が変わって来たようにも思える。
気の所為だとは分かっているのだが、私に挨拶してくれる時だけは笑顔で、私に声を掛ける時だけは笑顔で、気の所為だとは分かっていても、そう思うと悪い気はしない。
別に笑顔を振りまいて歩こうとなどと思ってもいないが、社内の廊下を歩いていると、一人の女性に声を掛けられた。
「あ、済みません。今、そちらへお伺いしようとしてたところなんですよ」
「え、私に何か御用ですか?」
「はい、うちの部の部長が相談があるので呼んできて欲しいって仰せつかりまして」
「あ、そうですか、じゃ此の足でお伺いしましょうか?」
「宜しければ、お願いします」
内容は簡単なものであった。
そこの部長曰く、新しい企画のために他の部の応援が欲しいらしく、そこで私に白羽の矢が当たったらしい。
私を迎えにきてくれた女性がこれからの連絡係だそうだ。
私の直属の上司には既に話を通していたそうで、新しい仕事はスムーズに進める事ができた。
彼女と仕事をしていく内に世間話をするくらいに、少しづつ理解し合えるようになっていった。
彼女曰く、私は人当たりの良いことで社内の一部では噂になっているらしい。
まさか!。
更に仕事を共にしていく中で驚くような事が分かって来た。
私の直属の上司は、其の傲慢さで社内でも噂が悪いそうである、らしい事が会話の中で薄々と感じられるようになった。
更には、此の企画が上手くいくと、其の企画継続のために、私は彼女が働いている部に移動するかもしれないそうだ。
あの理不尽な部長と離れられる。
既に怒りや憎しみなど消え失せていたが、あの場所から移動できることは嬉しい。
新天地で、新しい企画のもとで、一生懸命働ける。
充分だろ。
勿論、仕事が楽しくなってくれば、ぺペンギンさんとの会話も冗談の言い合いになったりして、自分の部屋に戻っても楽しい。
ぺペンギンさんの「お前、アホやろ」が何発も飛び出しながらの冗談の言い合いだ。
この幸せは永遠に続くものだと思っていた。彼女のあの一言がなければ。
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