第5話「一閃」
「ん……」
「お、起きましたね!」
俺はまた、保健室で目を覚ます。
そうか、あの後に倒れたのか。
「あの、巨人は……」
「貴方が倒しちゃいましたよ!」
その言葉に安堵する。
爆炎が既に身体を焼いていたから、耐えられたかどうかの記憶がなかった。
倒せたのなら……安心だ。
「まさかあの巨人を通じて、大元の能力者まで感電させるなんて!流石――」
「あの」
……おべっかを使いまくる先生の言葉を遮る。
「あの、ヒズミは?」
「ん、ヒズミちゃんなら……ほら」
先生が指差すのは、俺のふとももあたり。
その先を見ると椅子に座っていただろうヒズミが、倒れ込んで眠っていた。
「……ずっと居てくれてたのか」
「あ、それでなんですけど……」
俺がヒズミに思いを馳せるなか、先生はおずおずと手を挙げる。
デジャヴを感じつつも、俺が話すよう促すと。
「その、ススムくんの部屋なんですけど……202号室じゃなくて、505号室じゃなかったです?」
「え゛!?」
はぁ!?
でも、字には傍線が……、
「あ、これ私上下間違ってる……」
「はぁ……」
なんだか、遅れてどっと疲れが来る。
この二日間の気苦労は一体。
……だが。
「今からでも部屋移ります?荷物は一応、そっちにありますけど……」
「あ、いや……」
先生の提案を、思わず制す。
なぜだろう。
それはずっと、俺が望んでいた提案だったはずなのに。
……いや、理由は明白か。
「できれば、このままで。勿論ヒズミがいいなら、ですけど」
ヒズミと、共に学生生活を送る。
それも、そう悪くはないんじゃないかと思ってしまったから。
―――だから、その決断は。
「……んん……」
このルームメイトが、目を覚ましてから委ねることにしよう。
ベスト・ルームメイト 鰹 あるすとろ @arusutorosan
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