第14話 仲間うちでも一人くらい忘れられる奴がいる

 トゥンが保健室で安静にしてる間にトゥンの保護者に連絡がいき、すぐにトゥンの両親が保育園に駆けつけた。


 事情を説明してトゥンに面会してもらう。ジークリンデからも明日は、様子を診たいことを話して明後日また迎えにきてもらうことになった。


 トゥンの両親はトゥンを抱きしめて俺に何度もお礼を言って去っていった。


 トゥンをちゃんと両親に返してあげられて本当によかった。


 トゥン以外の子供達も周りが騒がしいのに気がついたのか、トゥンがいないのに気がついたらしい。


 トゥンにあったことを子供達にもちゃんと話した上で、たとえ聖域でも子供だけで歩いてはいけない事を守るように再度言い聞かせた。


 そしてみんなでお花を摘んでトゥンのお見舞いに行くことにした。


 それぞれお花を摘んでいると、クークが詰んだ花を俺に一輪差し出してきた。


「俺にくれるのか?」


 花を受け取るとクークは俺の顔のケガをスリスリと頭で撫でてくれた。


 俺のケガを心配してくれているらしい。心がホッコリして嬉しい。クークは優しい子だなぁ。


「ありがとうクーク。さっそく机に飾るよ」


 それを見ていたチュダも詰んだ花を俺にくれた。ホッペをペロペロと舐めてくれる。可愛い。


「ありがとうチュダ。チュダも優しいなぁ。嬉しいよ」


 お礼にチュダの頭を撫でてやる。グルグルと喉を鳴らして気持ち良さそうだ。


 リリッドどクリッタも真似をするように花をくれてお礼に二人をモフりまくった。


 ポポル、タタル、シシルもみんなを真似して花をくれるので三人の頭を撫でた。ゴワゴワとツヤツヤが半々といった手触りだ。


 机にみんなから貰った花が飾られた。嬉しくてケガが早く直りそうだ。




◆◆◆



 保健室に行くとトゥンはベットから起きて遊びたそうにするのをジークリンデに止められていた。


 元気そうでなによりだ。


「トゥン、どこも痛い所はない?」


「メェ〜」


 ないよ〜って言ってるのかな?


「みんなでトゥンにお花を摘んだよ。さぁみんなで渡そうね」


 トゥンにそれぞれ詰んだ花を渡していった。


 トゥンは貰った花を見て嬉しそうに鳴いた。


 そして、……モシャモシャ……。食べた。


 それを見て驚いたのは俺だけではなかったようで……。


「キャン!」


 喰うのかよ! とツッコむように鳴いたのはリリッドだ。


「メェ〜?」


 美味しいよ、みたいに鳴いたトゥンは花を完食していった。


 まぁ、みんなの気持ちをしっかり受け止めたんだよトゥンは。



◆◆◆



 心配していた心の傷もなく、トゥンが快復して平和な日常が戻ってきた頃、ソイツは現れた。


 ちょうどみんなで布の巨大積み木で家を作り、おままごとセットで家族ごっこを始めた時だった。


「ここにいたのかハルキよ! 連絡もよこさず何をしているのだ!」

 

 ちょうど壁部分の積み木を取り払って現れたアズのせいで、積み木の家が半壊した。俺達の力作が!


「ああ! 何してくれてんだアズ! すぐ直せよ今すぐだぞ!」


「「キャンキャン!!」」


「ニャ!ニャ!」

 

「メェー!」


 俺だけでなく子供達からも非難が飛んだ。


「な、なぜ我が非難されるのだ! 連絡を寄越さぬお主が悪いだろう」


 確かにちょっと忘れてたけど学校はまだ開校していないから、アズの出番がないのだ。


「いやいや、アズは学校の先生だろう。ここは幼稚園だぞ。学校が開校する予定が経ってから連絡するところだったんだよ」


 忘れてなければ……。つうか、家を直せよ。


「それでも現状ぐらい報告するべきであろう。我がドラゴン族がどれだけ誉れ高いが知らないわけではなかろうが! そもそも我が一族は(以下略)」


 また、始まった種族語り……。これさえなければただのイケメンなのに。もったいない。


 子供達はアズの話を聞かず遊び始めた。チュダはアズのマントのヒラヒラが気になるのか前足で突き始める。


「アズわかった。わかったから。まずは学校の事と子供達のことから説明するから職員室に来てくれ」


 ナナさんに子供達の相手を頼んでアズを職員室に案内した。


 職員室には珍しくジークリンデが顔を出していた。紹介するのにちょうどいい。


「な、なんだこの臭いおなごは?! 鼻が曲がりそうだ!」


 アズが鼻を抓んで慄いた。


「ハルキなにかしらこの失礼な坊やは?」


 本当に失礼な奴だ。今日はまだマシな臭さなのに。ドラゴンは鼻がいいのかもしれないが。


「珍しいなジークリンデ。この失礼なドラゴンがアーズガルストだ。アズ、彼女が学校の保健医のジークリンデだ。今日はそんなに臭くないぞ。いつもはもっと……」


「ハルキ?」


 すんません! マジすんません! 美女の凄みはコワイです。


「ご、ごの臭いは、な、なんなのだ?」


 鼻息を止めて器用に会話するアズ。


「スクレ草とゾルゲの毛皮とヨモツ草を燻して……」


「ヨモツ草だど!? ぞんな希少なものが、どごにあるのだ?」


「あら?希少さがわかるなんて、まぁまぁの坊やね。この聖域なら手に入るわよ。場所は教えてあげないけど!」


「……ぶん、我にががれば、そのくらい、ずぐに見づげでみぜよう……」


 他にやることがあるだろう。何しに来たんだお前は……。


 でも剣や魔法の授業はケガがつきものだ。この二人にはうまく連携して欲しいものだ。

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