第13話 男のマジ泣きは後で思い出すとハズイ

◆◆◆トゥン視点◆◆◆


 おいしいごはん おいしいやさい


 あまいみがだいすき いいにおい


 やさしいせんせい いいにおい


 ここはだいすきがいっぱい


 あまいみがはえてるきがあった


 おとうさんとおかあさんにもたべさせたらよろこぶよね?


 みんながねたあとなら あいにいってもいいかな


 もりにはあまいみがたくさんあるし ひとつだけ 


 おとうさんとおかあさんにたべさせてあげよう


 きっとよろこんでほめてくれる


 いそいでいこう


 ……あれ?あれって、にんげん?こっちをみた!


 にんげんをみたら、にげなきゃ!


 にげなきゃ! ころされる!


 だれか! おとうさん! おかあさん!


 あいたい! あいたいだけだったのに!


 たすけて! たすけて! たすけて! たすけてぇ!


「トゥン!!!!」


 せんせいだ! せんせいがきてくれた!


 じめんがわれて にんげんがにげていく


 せんせい! せんせい!


 せんせい けがしてる なんで?


 せんせい ぼくをだきしめてないてる どうして?


 ぼく なにかしちゃったかな……


 いっぱいはしったから つかれたな


 せんせい いいにおい あったかい


 あったかいな……




◆◆◆トゥン視点終了◆◆◆



 俺は、盛大に顔面から転んだ。


 顔面が当たって痛かったが必死だったのでその時は何も感じなかったが後から結構痛かった。


 地面が顔面に当たった、というより俺のデコラティブなオデコが当たったんだろう。地面が音をたてて割れた。


  ドォゴォーン!!


 トゥンを狙ってた人達は悲鳴を上げて逃げて行った。正直逃げてくれて助かった。俺はヘタレで戦う自信なかったから。


「トゥン!!!」


 俺はすぐにトゥンに駆け寄って怪我がないか身体をモフった。


 怪我がないのを確認して腰が抜けるくらい安心した。安心したせいか涙もガンガン流れてくる。


 俺はトゥンを抱きしめながら思いっきり泣いた。


「よがったぁ〜よがったよぉ〜無事でほんっっどによがっだよぉ〜!!」


 トゥンを抱きしめてついでにモフりまくった。


「メェメェ〜メェ〜」


 何言ってるかさっぱりわからないが元気そうだ。


「ハルキ様ぁ〜〜!!!」


 遠くから俺を呼ぶ声が聞こえた。きっと精霊人達だ。


「おーーーい! ここだ! 見つけたぞぉー!」


「あああ! ハルキ様! トゥン!! よかったニャ!」


 パルが到着してから精霊人が次々に到着し始めた。


「は、ハルキ様! 血が! 血が出てるコン! 誰か誰かロロを読んでくるコン!」


「なんでそんなにケガしてるニャ?! 早く手当てするニャ!」


「俺より先にトゥンを診てくれ! 人間に襲われてたんだ!」


 ジークリンデは実験してないといいけど……。


「それもそうだけど早く聖域に入るチュ!また人間に見つかったら面倒だチュ」


 急かされながら聖域目指して歩き始めた。気が抜けたせいか、身体のあちこちが痛い。服も汚れているし、早く帰ろう。



◆◆◆



 聖域に帰ってすぐにジークリンデを呼んだ。ナナさんに彼女を丸洗いしてもらって匂いを落とし、すぐにトゥンを診察してもらった。


「外傷はないわ。でも人間に襲われたならショックを受けてるでしょうし、明日は様子を診させてちょうだい」


 いきなり丸洗いされて怒ってはいたものの、ちゃんとトゥンを診てくれてよかった。薬を飲ませたらしく、ベットでぐっすり眠っているトゥン。ショックな出来事があったからうなされなりしないだろうか。


「そんなに心配そうにしなくても私がついてるわ。それよりあなたも手当てしないとね」


 自分の傷より何より保健室が少し見ない間に研究室みたいになってるのが気になる。


「ジークリンデ、保健室を自分の研究室にする気じゃないよね?なにこの怪しい液体とか、…何に使うんだこの何かの干物……」


 しかも、壁や天井から植物?的な何かが下がっている。


「あらあら、ぜ、全部薬よ。どんな病気にも対応できるわよ」


 なんか噛んでるし、怪しいけど、まぁ今はトゥンが寝てるし止めておこう。


「それより聖域から出たでしょ?」


 珍しく真剣な表情でジークリンデが俺を睨む。


「え?だってトゥンを探して……俺は聖域から出ちゃダメなのか?」

 

「少しの間なら問題ないけど、基本聖域は聖人が管理してるから長い間いないと聖域が縮むわよ」


「そうなのか?! 縮むってどれくらい?」


「たいしたことないけど、一日いなくて小さい畑一つ無くなるくらいじゃない?薬草が無くなるのは困るからちゃんといてくれないと、ね?」


 ね?って言われても、……。ほだされないぞ。ほだされてないが畑が無くなるのは困るから注意しよう。決して美人にほだされてなんかない。


 ジークリンデにケガを手当てしてもらってから幼稚園に戻った。


 寝る前にギャン泣きした自分を思い出して、ベットで転げ回った。


 は、恥ずかしい。み、見ないでくれ〜。


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