第5話 学校をつくろう
学校を一から全部作るのは途方もないことだ。
だが、ここは異世界。
俺はまず大まかな学校の設計をした。専門家ではないので本当に大雑把だ。教室、職員室、理科室、音楽室、図工室、家庭科室、保健室、体育館。外で遊ぶ遊具に校庭。こんなものが欲しい。こんなものが必要だ。
集まった精霊人達に物凄く大雑把に説明しまくった。
精霊人達はまずは学校より俺の住む家が必要だと言い始めて、なぜか神殿を作ろうと言い出した。俺が必死で止めたらではまず仮の家を作ろうと言いだした。
作ろうと言ってから一時間もしないうちに小さなログハウスが建った。みるみるうちに出来上がる家に唖然とした。
精霊人はそれぞれ得意分野や属性があるらしい。
ちなみに以下の通りだ。
パル→猫精霊人(風)…本人曰く何でも出来るオールラウンダー。手先も器用だし風で色々操って運ぶのも組み立てるのも削るのもどんと来い。
犬精霊人(主に土)→土木作業から土壁作り、建築ならすべてお任せな精霊人。皆力持ち。
鼠精霊人(主に水)→掃除も洗濯も家事ならお任せな精霊人。水を操って俺のお風呂もすぐに用意してくれた。
狐精霊人(火と風)→火を巧みに操る。とても器用で料理が旨い。芸術家肌も多いのか俺の家の外観にも色々口を挟む職人のような精霊人。
狸精霊人(風と森)→植物で作った布地を作り、さらにそれを加工して洋服や様々な日用品を作る精霊人。精霊人が着ている服は彼らが作る事が多い。そしてファッションにうるさい精霊人。
兎精霊人(森)→植物を育てさせたら右に出る者はいない。薬についてもとても詳しい。畑作業でガンガン食料を栽培してくれる縁の下の力持ちだ。
以上の他にもわらわらと精霊人が連携に連携しまくって畑も家も学校の土台もその日のうちに完成した。
俺は何をしているかというと、……皆の邪魔をしないように観察していた。
パル曰く、ここにいる精霊人は上級の中でも優秀な精霊人しかいないらしい。俺の神託があってから沢山集まってきた精霊人の中の選りすぐりのエリートらしい。
異世界にきたらチートして無双するのは、どうやらアニメやラノベの中だけらしい……。
ちょっと切なくなりながら何か自分でも出来ることはないんだろうかと遠い目をして考えているうちに異世界の初日は終わってしまった。
◆◆◆
狸精霊人のお手製のフカフカベットで目を覚まし、狐精霊人の作った美味しい朝食を食べ、また現場観察にもどった。
色々考えたが俺も何かしたい!
さっそく顔見知りになった犬精霊人に声をかけた。
「ロブさんちょっといい?」
「おや、ハルキ様。何でもどうぞワン」
犬精霊人のロブさんは手を止めて俺を見上げてくる。可愛いなぁ、外見はビーグル犬。だが先程まで担いでいた大きな木は身体の何倍もあるからギャップがすごい。
「ノコギリとか借りてもいい?」
「ええ?危ないワン!何が欲しいですかワン?僕が何でも作りますワン」
いやいや、皆が働いてるのに自分だけのんびりしていられない。俺は小心者なのだ。
「いや、俺が自分で作りたいんだよ。せめて教室で使う机と椅子くらい手伝わせてくれ。これでもDIYには自信あるんだ!」
「でぃーあいわいワン?」
「そう!棚作ったことあるんだ!だから道具を貸してくれ」
渋るロブさんを何とか説得して道具一式をゲットした。
怪我したら危ないのでと、御目付役にパルが付いてきた。
道具はそろったのでさっそく手頃な木材を切り出そうとノコギリで木を切ろうとしたが、……。
スルスル……
ノコギリを当てた所から勝手に木が切れて、というか割れて(?)くれた。
「木が勝手に切れるんだけど……なんだこれ?」
違和感が半端ない。
「そりゃあ、聖域の木はハルキ様に従う眷族みたいニャものですからニャ。当然ですニャ。さあ、満足したらもうおしまいですニャ。危ないからやめるニャ」
パルは俺からノコギリを取り上げようとするが、まだ何もやってない俺はしっかり抵抗した。
木は眷族?わからんがこれなら俺でも楽に椅子や机が作れるはずだ。
「机は少し広めで、椅子は子供だから小さめに……」
俺はどんどん木を割って机や椅子になる板を用意した。力が要らないからとても楽だ。
次は釘を打とうとするが、はっきり言って金槌はいらなかった。
釘を少し木に押してやるだけでスコンと刺さるのだ。
これは地味だが、チートというやつでは?!
すっかりテンションを上げてちょっと不格好だか、机と椅子が完成した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます