第4話 英才(?)教育は早めが肝心

 俺は人よりムチャクチャ優秀だった事は一度もない。逆に人より努力しないと全然ダメなタイプだ。高校も大学も平凡だったし、イケメンな訳でもないからモテたこともない。彼女だっていたことはなかった。


 そんな俺が……世界を導く?何かの冗談だろう。


「えっと、……俺が『聖人』とか何かの間違いなんじゃないか?」


「その額の『星』は間違いなく本物ですニャ!」


 猫が小さい手を握り締めて断言した。


「俺はただのしがない教員だし……」


「キョーインってなんですかニャ?」


「学校の先生のことだよ」


 俺の言葉に猫は目を輝かせた。


「先生なんですかニャ?! 聖人様が先生だニャんて素晴らしいですニャ!!」


 猫だけでなく周りのおじさんやお爺さんも騒ぎ出した。


「勉学を教える先生だったとは! さっそく教育を初めねばなるまい!」


「まずは聖域に認められなくてはな!我が一族から試させてもらおう!」


「待て!我が一族が先だ!」


 おじさんやお爺さん達が興奮して口論を初めた。


 聖域ってなんだ?


 猫に聞くと少し首を傾げた。


「今いるこの場所が聖域ですニャ」


「じゃあ聖域に認められるって何のこと?」


「聖域に認められないとここに居られませんニャ。つまり、ここに入れる子供達しか聖人様の教えを受けられませんニャ」


「こ、子供達?」


「神託には幼いうちから教育を受けることで、『星持ち』や『聖』を冠する者にニャりやすいってことでしたニャ」


 つまり英才(?)教育をして優秀な人材、いや、獣材を育てようってことか? 俺が? マジかよ!


 そしてなにより気になっていることがある。


「この聖域?ってどこに学校があるの?」


「聖域は聖人様が管理される場所だから、これから聖人様が作りますニャ」


「俺が作るのか?!」


「もちろんですニャ!僕らも頑張りますニャ!」


 気が遠くなってきた。いったい何年かかるかわからない。そこのおじさん達は一族がどうのこうの言ってる場合じゃないと思う。


「学校を作るなんてすごい時間がかかるし、この広場みたいな場所じゃ全然足りないよ!」


 泉の岸は少し場所が開けてあるが、学校を作るには広大な土地と予算と時間がかかる。とても俺一人では出来ない。


「聖域は聖人様が願えばいくらでも広くなりますニャ。それに学校なら僕らが作りますニャ!聖人様は指示して下されば何でも作ってみせますニャ!」


「僕ら??」


「あ、申し遅れましたニャ。僕は猫精霊人のパルですニャ。どうぞパルとお呼び下さいニャ。今他の皆を呼びますニャ」


 猫精霊人のパルは空に向かってニャーニャー鳴きだした。後から聞いたが、ただ鳴いてるのではなくて、精霊人特有の詠唱らしい。


 パルが鳴きだしてすぐに森のあちこちや空から、鼠、鳥、犬、狐、兎……etc(二足歩行)の動物達が現れた。


いやはや、本当に異世界なんだなぁとしみじみ感じる。


「聖人様、まだ皆集まってニャいですが、なんでもお申し付けくださいニャ」


 まだいるのか?!

 

 すでに広場は精霊人で埋め尽くされている。


「とりあえず、その聖人様ってやめてくれないか?俺は遥輝(ハルキ)だ。呼び捨てで読んでくれ」

 

 精霊人達は呼び捨ては絶対出来ないと言い張り妥協してハルキ様と呼ばれることになった。





 

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