第2話 精霊人は二足歩行
ゴボゴボ……ガボッ!!
一瞬自分に何が起こったのかわからなかったが水の中にいて、息が出来ないのはわかった。
職員室は?! なんで水?!
とりあえず無我夢中で手足を動かして水面を目指す。
「プハッ! ゲホゲホッ!」
水から顔を出してから落ち着いて息を吸い込むと水底にちゃんと足が着けられる事にとりあえず安堵する。
いったいどうなっているんだ?!
急いで周りを見回すと、学校どころか職員室は見当たらない。広い泉のような場所の真ん中にポツンと佇んでいる。
「神託の通り『聖人』様が現れたぞ!」
「御印がある! なんと神々しい!」
人の話し声が聞こえた方を夢中で振り返った。
デカッ! なんだこれ?!
泉の岸辺には車サイズの白い狼、蜘蛛、蛇、虎、羊、豹、…とにかく大きな動物達(一部昆虫)が勢揃いしていた。そして皆、俺をガン見している。
く、く、喰われる?!
今にも襲いかかられたら抵抗なんて出来ないだろう。水の冷たさからか、恐怖からか、両方だろうが身体がガタガタ震える。
嫌にリアルな夢だな。夢なのか?夢であってほしい!
リアル過ぎる水の感触。鼻水が出るし、半泣きだ。水に潜って隠れた方がいいのかと本気で考える。
せめて喰われないように反対側に逃げようとすると、動物の一段から小さな影が飛び出してこちらに向かってきた。
影はよく見ると黒い猫に見えるが……。
走ってる?!はしって、えええ?!
黒い猫は二足歩行でこちらに走っている上に、水の上を走っていた。
もはやどこに驚けばいいのか唖然と見ている黒猫は俺の目の前までくると、やけに人間らしい仕草で軽く口に手を当てた。
「え〜、ニャホン!聖人様、良くおいで下さいましたニャ。心から歓迎致しますニャ」
喋った……。
しかも近くでみると猫はお洒落なワイシャツを着てリボンまで付けている。
「あ、あの、どうされましたニャ?精霊人(せいれいびと)をご覧にニャるのは初めてですかニャ?」
「せいれいびと?」
「はいですニャ。これから精一杯聖人様に仕えさせて頂きますニャ」
はは……ははは……聖人?精霊人?なんだこれ?……。
「聖人様、お身体が冷えてしまいますニャ……ニャ?! 聖人様ぁ?! ニャニャ〜!?」
考える事を放棄した俺は、そのまま意識を手放す事にした。ブクブク沈んでいくなかで、やけにニャーニャー五月蝿かった。
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