Interlude:あなたのおもちゃ箱に、夢は詰まっていますか?
お目当てのおもちゃは、箱の奥に
女神様の膝枕をすりすりしたい件
ここは、リリアのいる白い空間。
ふと思い立ったことがあり、声をかけた。
「ねえ、リリア。膝枕してよ」
『ふぇ……?』
ふむ、簡潔すぎて上手く伝わらなかったようだ。
脚を指さすジェスチャーも加えて、もう一度頼んでみる。
「そのすべすべそうな太ももを私の頭に押しつけさせてよ」
『な、なにゆえ露骨な表現に言い換えたのですか……?』
身を守るように、少し
その分だけ、私は距離を詰める。
「わかりやすいかなって」
『えっと、いくら同性だとは言っても、セクハラ行為は成立するのですよ?』
なるほど、リリアの言うことはもっともだ。
多様性が認められるいまの時代、いろいろな状況を想定しておくことは必要だろう。
しかし。
「膝枕はセクハラなの?」
私の要求している膝枕が、それに該当するかどうかは甚だ疑問である。
『いや、まあ……身体的な接触ですし、けっこう密着しますから、無理やり迫ったらセクハラではないでしょうか』
「じゃあ、いままで私は、運営のサポートNPCとスライムの魔物によるセクハラ行為を見せつけられていたってことになるわね。それについてリリアはどう思う?」
私が『テイルズ・オンライン』にログインしてきたとき、いったい何度スラリアが膝枕をしてもらっている場面に遭遇しただろうか。
一度であれば偶然だったと言えるかもしれないけど、なにか申し開きはあるかしら?
『だって、スラリアちゃんは……その、えっと……違うじゃないですか』
スラリアは、なんだか私の存在意義に疑いが生じそうです、と嘆いている。
弄ばれていたということだ、可愛そうに。
「なにが違うの? あと、リリエラも『ママの膝枕は最高なのじゃ』ってセクハラ行為を助長するような発言をしていたことになるけど、そこのところ“ママ”としてどうなの?」
リリエラは、わらわは本当のことを言っているに過ぎないのじゃ、と
生意気な態度だけど、これで証拠が揃っただろう。
『えっと……膝枕は、健全なプレイの一種です……』
絞り出すように、リリアは自らの発言を覆した。
運営側が認めたのだから、私は大手を振っても問題ない。
「あらためて聞くけど、リリア、膝枕してもらってもいい?」
私の問いかけに、少し逡巡するリリア。
しかし、断れないと観念したのだろう、その場に膝をついた。
きっちりとした正座ではなく、少し崩した座り方だ。
『……どうぞ、存分にご堪能ください……うぅ、恥ずかしい……』
「わーいっ、膝枕だ! 私、こうしてちゃんと膝枕って初めてかも!」
小さい頃に、歯磨きとか耳かきとかをお母さんにやってもらった以外では記憶にない。
だから、なんだかどきどきしちゃう。
「えいっ」
ごろんと横になって、リリアの膝に頭を載せる。
顔の向きの正解がわからなかったので、とりあえずリリアの身体側じゃない方に向けた。
ふむ……なるほど、こんな感じか。
なんて言えばいいかな、もちろん枕の性能としては通常のものに軍配が上がるけれど。
「うぅん、癒やされるぅ……」
思わず、ため息のような声が出てしまう。
主にメンタル面において、包み込まれているという感覚が半端じゃないのだ。
これはまずいな、抜け出せなくなりそう。
『……そう言ってもらえると、この恥ずかしい思いも報われます』
なんとなく収まりがよくなかったので、顔をリリアの身体の方に向ける。
そして、手を回して腰を抱くようにした。
『きゃっ……ぁう、こ、これ以上はダメですからね……』
うん、より安心感が高まっていいね。
抱き枕派ではなかったけど、この抱き心地は鞍替えを見当する価値がある。
「脚が痺れたら言って、そしたら退くから」
区切りがないと、永遠にリリアの膝は枕のままだ。
そう思って、私は。
『あの、私はNPCなので脚が痺れたりはしないのですが……』
リリアの声が、遠くに聞こえる。
大きな脂肪の塊が間にあるとはいえ、顔は近いはずなのだけれど。
「すぅ……」
『えっ、ちょっと、リリア様? 寝たふり……いや、本当に寝てるっ……!』
「主様が寝てしまっては、わらわたちも時間を持て余すのじゃ」
「じゃあ私はお姉様のお膝を借りようかな、リリエラは?」
「わらわはママの空いているところを使うのじゃ」
『……あなたたち、リリア様に似てきたわね』
【テイルズ・オンライン】~スライムをパートナーに、ゲーム初心者が不人気ジョブ『テイマー』で成り上がる~ あおば @aoba_story
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