第2話 同期

海山畳①

私、電脳 海美は本日も配信をする予定が入っているのだ!(ドドン!)


予定いっぱい、やる事い~~~っぱい! でもお外には出ませ~ん! アプリのデイリーミッションに、育成、スタミナ消費! 録画したアニメを見て、最近読み始めたマンガ読んで、企画の打ち合わせの返信送って、今日は同期の2人と久々のコラボ配信なのだー!!


久々に友達と遊ぶのってワクワクする! ああいや、遊びじゃないですよ~。配信はお仕事ですよ~。くぅ~! 舞い上がっちまってるこの衝動を、喜びを、最寄りの誰かにぶつけたい!


「うぉおおおおお! 嫁くん! 私の超必殺技を喰らえーーー!」


ハイテンションで叫びながら思いっきりリビングの扉をブチ開けた……のだが……。


「っておらへんやないかいっ!!」


ビシッとツッコミを入れるも、静けさや 部屋に染み入る ハイテンション。


リビングのテーブルの上には書置きが1つと、ラップしてあるお昼ごはんが並んでいる。


『バイトに行ってきます。お昼ごはんチンして食べてね。冷蔵庫の中にプリンあるからデザートにどうぞ。帰りは18時頃になると思います。晩御飯は買って帰るから、リクエストあったらライン飛ばしてね』


「そっか、嫁くんも頑張ってますな~! うし! 私も今日はとことんやっちゃる! 同期3人! 海山畳うみやまたたみのコラボ配信! 待ってろリスナー! 今日が伝説の配信じゃー!」


と再び心のボイラーを点火する。燃えて来たその状態で、私は2階の自室に籠りゲームアプリのデイリーミッションを始めた……。石だいじ。


ゲームに集中し過ぎてお昼過ぎになってしまったが、嫁くんの作ってくれた美味しい昼食を録画していたアニメと一緒に堪能し、冷蔵庫から取り出したデザートのプリンも堪能した。


その後休憩してからマネージャーからのメールに返信をし、少しの間やり取りしながらマンガを読んだ。


こうして何時間か予定を消化しながら、後日に控えているとある企画の打ち合わせメールにも返信し話を進めていき、一段落したところで1階のリビングに降りて行き、冷蔵庫から飲み物(カフェオレ)を取り出し、コップに注ぎながらSNSに今夜の海山畳コラボ配信の告知を投下した。


『今夜19時! 久しぶりの海山畳コラボ配信!😄

 伝説を作るぞ!💪💪💪

 ワクワクしてるか? 私もワクワクさんだ!🤓』


よし、若干意味わからんけど、これでよし! 投下した途端に、フォロワーからたくさんのリプライといいねが付いた。拡散もしてくれてありがてぇ。


「うお! やっべ! 興奮してきた! 遠足前日に寝れない子じゃん私! 台風来た夜に何かテンション上がっちゃう小学生じゃん私ぃー! この衝動に塗りつぶされてなるものかー! 鎮まりたまへー!」


ほんとアホみたいなテンションでウネウネしてた。リビングの床を転げまわる私を哀れなモノを見るような瞳で、嫁くんが見つめていた。


「なにをしとんのん?」


「……見たなっ! 私の真の姿を見てしまったな! ならば仕方ない! 貴様にはここで消えてもらう!! シャー! ―――あいてっ!」


かけ声と共に飛び掛かった私のおでこに軽いチョップが突き刺さった。


「バカやってないの。今日これから配信の予定でしょ? 晩ごはん買ってきたよ。先に食べちゃう?」


嫁くんの手にはビニール袋が握られており、ほのかにお惣菜の良い匂いが漂っていた。


「先に食べる!」


美味しそうな匂いにお腹が鳴る。匂いにやられちまった。我慢できぬ。


「わかった。すぐに用意するから座ってて。リクエストとか無かったから適当に買って来ちゃったけど、堪忍ね?」


「私は嫁くんの買って来てくれた物なら何でも喜ぶぞ! 愛してるからな!」


「ぅおう! 唐突な愛の告白どーも。アハハ今日はテンション高めだね。同期の友達との配信、楽しみなんだね」


「私の数少ない友人だもん! なかなか予定が合わなかったりで久々なんだ~。だから楽しみ!」


「ワクワクさんだ」


「そうそうワクワクさ……見たな? 私のSNSをッ! 貴様にはここで消えてもら―――」


「はい、晩ごはんですよ~」


「わん!」

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