インサイド・アウト
出会いは金木犀の香る季節だった
分かりにくいといけないので、
色々な事を人間の世界の呼び名で説明をする事とする。
俺八坂朔夜は
小学校の3学年の遠足が嫌でたまらなかった
俺たちが暮らす化け物しか居ない異界から、人間の住む人間界の勉強に毎年行かなければならなくて憂鬱だった。不安でたまらなかった
よその家みたいに親や祖父母兄弟が悩みや不安嬉しい事に悲しい事を聞いてくれたりしたらまた
少し心持ちが違ったかもしれない。
しかし俺にはそんな優しい家族はいなかった
出来の良すぎる兄がたまにいじめてきたりからかってきたりするくらいで
他の家族も周りの大人も優秀な兄にべったりだった。
かっこいい兄と違い俺は出来が悪く
誰からも必要とされない子供で
「誰かが俺だけを見てくれたら良いな」といつしか願っては叶うわけがないと落ち込む日々を過ごしていた
俺達妖怪や化け物は人間が居ないと存在が出来ないので人間がどんなものかをきちんと知らなければならない事は頭では勿論理解はしているが
行きたく無いものは仕方がない。
この頃の俺は自分達と違う存在がこの世に存在していることが怖くて堪らなくて
出発する日の朝までどうやって休もうかと頭を悩ませていた事を今でもハッキリと覚えいる。
午前中は人間の世界で紛れて働く妖怪の話を聞き、実際に場所を見学をしたりしてそれなりに思っていたよりかは楽しく過ごせた。
しかし午後のフィールドワークで事件は起こった。
余所見をしているうちに行動班から逸れてしまい
一人見知らぬ土地を歩き回り担任や仲間を探し歩いて泣きそうになっていた。
「減点されるかもしれない…だから来たくなかった休めばよかった」
そんなことばかり考えながら歩いていたら
何かをグニッと踏んでしまい転けてしまった
「いってぇぇ…」
ゆっくり起き上がると目の前に
大きな犬が居た。
「うぅ――ワンワンワンッ!」
目の前の犬はものすごい勢いで吠えこちらを威嚇しているように見える
その時やっと先程オレが踏んだものはコイツの身体の一部だったと気付いたしかし
気付いた所でもう遅い――。
恐怖で身動きがとれないでいると
声が聞こえてきた。
仲間かと声の方を向くと自分より小さな女の子で
「あっだめだこれ…」と勝手にがっかりした。
オレの落胆も知らず女の子は
震えながら犬と俺の間に立ち俺を守ろうとしてくれていた。
「だめだよ!犬さんあっち行って!!
お願い!!」
涙声で女の子は必死に何度も叫んでくれた
俺は男なのに何もできないことを恥じた。
犬はいつの間にかしゅんとして何処かへと走り去った
女の子はペタリとその場に座り込み
俺の方を向きにこっと笑った
「こわかったですね!犬さんはどこかにいったから大丈夫です」
女の子の顔はまるで眩しい太陽のようだった
俺は生きてきた中で初めて本当の笑顔とやらを見た
異界に生きる人はこんな笑い方はしない…
笑いかけられたことなんかなかった
「あっ!お兄さん大変手と足をけがをしています!」
慌てて女の子はおそらく血を止めるために俺の手を舐めカバンから出した絆創膏というテープを貼ってくれた。
俺達の世界で相手の血を舐める行為は
契りを結ぶ事を意味する。
結婚する時は酒に一滴の血を垂らして交換して飲む
目の前の女の子は人間だから俺たちとは
違うかもしれないけれど
笑顔と、俺なんかの血を舐めて受け入れてくれた事が嬉しくて泣きそうになった。
ドキドキとして
体が熱くなりぼぅっとした頭で
俺もこの子の血を舐めれたらなと思った
「大変!絆創膏無くなっちゃった!」
女の子は箱を逆さにしたりして慌てていたが、
諦めたのかポケットから
ハンカチを取り出し俺の足に巻いた
「いたいのいたいのとんでいけー!」
キラキラ笑う顔に早くなる鼓動
「ありがとう…あの、名前…」
うまく話せない。おかしい緊張してはっきり声が出ない
「私はくろさわまちこです!お兄さんのお名前は?」
答えようとした時背後から担任の声が聞こえた
俺を探しにきたのだろう、
慌てて俺は女の子の手を握った
「俺は八坂朔…」
朔夜の夜が緊張して舌を噛んでしまって何故か言えなかった
「さく…さくくん!」
「さくくん帰るの?またね!」
女の子くろさわまちこちゃんは大きく手を振ってくれた。
キラキラしたこの子の中で俺はさくくんなら
俺は朔として生きようと担任と歩きながら決まった
担任に叱られている間も
移動中も
何をしてもあの子の事であたまがいっぱいで
ハンカチを眺めては夢ではなかったと
ただ思い焦がれた――
どうすればまた人間の世界に行けるのかわからなくて、遂には兄に「人間の世界に行きたい」と打ち明けた。
「兄さん、内緒だよ。大きな犬に追われて怪我したのを女の子が手当てしてくれた。あちらの人は怖いと聞いたけど名前も教えてくれたんだ。異界の人より優しかったし笑ってくれた僕は緊張して、朔までしか言えなかった…だから名前を朔だけに変えたい」
兄は初めて俺の頭を撫でた
俺の話を珍しく聞いてくれたことも撫でてくれた事も嬉しかった。
兄から勉強をして常にいい成績なら
人間の世界に授業で行く機会も増える
自由時間も与えられると教えてもらえた――
将来は兄が目指している様にトップスコアさえ取れたら自由にあちらで暮らせる
俺はその日から勉強漬けになった。
ハンカチに書いてある名前を眺めながら
あの子と手繋ぎたい
あの子が俺に笑かけてくれたら
俺の為に料理をしてくれたら
俺を抱きしめてくれたら
俺の事おぼえてくれていたら…
そんなことばかり考えながら
勉強をこなした。
翌年も、その次も成績が良い部類だったので
自由時間をもらえた。
親に買ってもらったカメラを持ち俺は
町子の姿を探しひたすらシャッターを押した
話しかけたかったけど、
兄みたいに身長も高くなければ
派手でもかっこよくもなく勇気が無くて
ただ写真を撮るしかできなかった
自分に自信が有れば違ったかもしれない
たまたまなのか、俺が年一で行くたびあの子は
ひとりぼっちだった。
いつも一人で悲しそうな顔をしていた。
抱きしめたい、抱きしめたい、抱きしめたい
細い手を取り走り出せたら
気持ちを伝えられたら
寂しくない様に側に居れたら。
人間の世界から帰りの電車で
幼馴染のヤマノケのやまちゃんが話しかけてきた
「あんた、人間の世界から帰る時毎年泣きそうな顔してない?嫌なら来なければ?そんな辛い?」
俺は少し考えて返事をした
「辛くないよ、ただ普段部屋から出ないから疲れてしまうだけで…」
少し疲れたからときさらぎ駅に着くまで
眠ったふりをして過ごし、
瞼に一年振りの町子ちゃんを焼き付けられたらいいのにそんな事を思った。
俺が変わればあの子の側に行ける
行ったところで好いてもらえるかはまた別だけれど
好かれる為なら何でもする
ペーパー試験だけでは無く成り損ないを倒す為の武器を扱ったり、
人を怖がらせたりそんな勉強も増え頭は一杯一杯で小学校の頃から実技も得意だった兄はやっぱり
凄かったんだなと自分の駄目さが嫌になった――。
兄があちらの世界に行く事になり、
少し寂しさもあったけれど自慢でもあった
行けるのは一部の人でその中でも一番優秀なのが兄さんだから。
ムカつくし嫌いだけれど、やはり尊敬はしている。
俺もしっかりやらねばと気合いをいれた。
兄の部屋にある参考書やら資料を自由に使っていいと言われていたのでたまに部屋に入る様になったけど俺は自分の世界を広げる物に出会ってしまった。
「なんだこれ、楽器?」
赤いギターだった。
兄は部屋にあるものはいらないと言っていたし…と
ギターや教則本を自室に移動させた
兄の部屋を漁ると結構楽しかった。
あちらの世界のファッション雑誌、音楽雑誌
エロ本まで沢山あった。
俺は勉強の最中に読み進めて息抜きをする様になった
そしてある一文に心を奪われた
『モテる為にバンドを始めたんですよ』
『やっぱり最初は好きな子にかっこいいところ見せたくてバンド始めるじゃないですか』
どっかの音楽雑誌のインタビューだった。
あちらの世界では楽器が弾けてバンドを組めば
好かれるのか…だから兄さんもギターを…?
俺は町子ちゃんの前でかっこよくギターを弾く為に
ギターも必死に練習した
兄が放置して行ったCDを聴きあさり
その中で歌詞が繊細なのに音がロックで
たまらなくハマったバンドに出会った
今でも崇拝しているバンドPlasticTreeだ
勉強しながら曲を流し、歌詞に涙を流し
曲を練習した。
親にうるさいと言われても無視をした、あの子を射止める為にはかっこいい俺になるしかない。
親に負けている所ではなかった
そしてもう一つぶっ刺さったものがあった
兄が置いて行ったエロ本の中にあった縛られたり
沢山傷がつけられている女性のページ
苦痛に顔を歪ませながらも頬は赤く染まって…
物凄くドキドキした。
本に付いていたDISCでサンプル動画が視聴出来て
映し出された映像は痛みを喜び男性を欲する姿だった。
たまたまその女性が童顔黒髪でどことなく町子ちゃんみたいで
もし……愛してもらえなかったら
誘拐して縛って監禁したいと危険な願望まで抱く様になってしまった。あの子をこの女の人みたいにできたら最高だなと思うと身体が熱くなった
あの子は色が白いから赤い縄で縛りたい
あの子は色が白いから赤い首輪をつけたい。
あの子の肌に口を付けて、血を舐めたい
い
あの子が俺の血を舐めてくれたみたいに
流れた血を俺が舐めてあげたい――。
そしてあの子の写真をハサミで切って縛られた人のページに貼り付け初めて自慰をした
そんなことばかりして過ごしている内に
事件が起こった
俺は兄さんの表彰を楽しみにしていたのに
表彰ではなく追放だった――。
兄さんは歴代トップのスコアを叩き出し
人間になることを望み、人間の恋人を殺され
異界の偉い人を数人惨殺して暴れ
壊れた。
行動制限付きで人間の世界に追いやられる事になった
最後に俺と話をする時間が欲しいと
親やお偉いさんに頼んでくれたらしく
勉強のアドバイスを貰ったり、
「お前の好きな子の話聞かせてよ。」
と聞いてくれたり
「あっちでまってるからさ、必ず選ばれろよ」
と頭をワシワシと撫でてくれた。
何が罪人だ。
俺は納得いかなかった、愛する人の為だったのに…俺は異界に腹を立てたが俺が腹を立てたからとどうにかなるわけでは無い。
ただ悔しかった
それからはたまに兄と手紙や通話でやりとりしながら俺は人間の世界に行く最終選考試験を目前と控えたある日たまたま親に頼まれて人間の世界に行く用事ができた。
俺は親からの用事をさっさと済ませ
いきなりのイベントに小躍りしながら
いつものように町子ちゃんを眺めに出かけた
カメラを持ち、もうすぐしたらこの街で暮らせるかもしれないんだよなとワクワクしながら道を
歩いていると何時もとは違うことが起こった
制服を着た町子ちゃんが小さな公園で同じ制服を着た女の子に囲まれて居る
あまりいい雰囲気では無い――。
冬なのにホースで水をかけられた瞬間我慢が出来なくなり飛び出した
「何やってんだよテメーら!」
俺が叫ぶと他の通行人も公園の方向を一斉に見て
町子ちゃんを囲んでいた女の子達は口々にヤバいヤバいと言いながら散って行った
残されたびしょ濡れの町子ちゃんはただ
濡れたままこちらを見ていた。
自信がないとか勇気が無いとかそんな事を考える暇なく俺は自分のニットコートを町子ちゃんの肩にかけて、赤いマフラーを巻いてあげた
「知らない男のなんて嫌かもしれないけど…
風邪ひくし…これあげるよ捨てていいから」
一方的に話して立ち去ろうとしたら
町子ちゃんは俺の手を掴み、顔を覗き込んで来て
泣きそうな表情をして何かを言おうとしているみたいだった
「…あの、助けてくれてありがとうございます。
助かりました」
そして町子ちゃんは薔薇のような赤に頬を染め笑ってくれた
「何かお礼をさせてください」
まさか会話が出来るなんて思っても見なくて
会話どころか笑ってくれて
夢のようだった。
「お礼なんて…じゃあ来年2月くらいにこの辺りに引っ越して来るかもしれないからもしまた会えたらこの辺りを案内してください。地方からなのでわからなくて…今日は物件の下見に来ていました」
咄嗟に考えたにしては上出来ではなかろうか?
町子ちゃんは俺のマスクをした顔をじっと見て
下を向いた
ブサイクな地味なマスク男から案内してくれなんて言われて警戒したのかもしれない
「怖がらせちゃいましたかね…すみません
男に案内なんて言われたら怖いですよね…すみません…」
居た堪れなくなりその場から逃げようと走り出したら背後から「きゃっ」と声がして
咄嗟に振り返ると転けた町子ちゃんが床に転がっていた。
「大丈夫!?」
駆け寄り手を差し出すと迷いもせず俺の手を取り
起き上がった。
「追いかけようとしたら躓いて…ごめんなさいまた迷惑を…」
顔を上げた瞬間額を擦りむいていて
俺は血の気が引いた。
「どうしよう、顔可愛い顔怪我…どうしよう」
慌てていると町子ちゃんは大丈夫ですよと言いながらカバンからハンカチを取り出して額をおさえた。
「すぐ治ります、それより…さっきの案内させてくださいね。またもし私を見つけたら声かけてください!かっこいい人だなって見ていたら走り去ろうとするから驚きました」
かっこいい…?まさか。おれが?
嘘だと思いつつ照れて顔が熱くなった
「俺の事見かけたら声かけてください絶対に、
俺も探すし…本当風邪ひいたらいけないので家の近くまで送らせてもらってもいいですか」
「あっ、はい…すぐそこです…」
二人黙々とただ歩いた。
歩きながら時々お互いの指先が当たる距離
こんな距離で並べるなんて夢のようで
いけないと思いつつチラチラと赤く染まったままの頬を見たり
長いまつ毛をみたり…
昔とちがって制服からもわかる膨らんだ胸元を見たりしながら歩いた
「そこの白い家です…」
立ち止まり指を差した
「ありがとうございました!また会えたら嬉しいです!」
町子ちゃんは手を差し出してきたが
「あれ、手も擦りむいてた…」
と擦りむき傷が出来ている手を引っ込めようとしたが俺は手を差し出し握手をした。
「また会えますように」
俺は並んで歩いた余韻に浸りながら兄の家に向かうと、荷物を置きに行くふりをしてこっそり
付着した血液を舐め取った
これでお互いの血液を取り込んだ事になるのかな…
町子ちゃんが俺の血を舐めたのは昔すぎてもうだめだろうか…
これで縁が繋がればいいのに
繋がりますように
可愛い声だった
柔らかい手だった
俺が守ってあげないと消えてしまいそうで
初めて出会ってからとても長い時間が過ぎ俺は
17歳の今まで思い続けてきた
もうすぐ誕生日がきて18になる。
絶対にそばに来なければと誓った。
これが去年。
それからは色々とあったりはしたけれど
無事再会して
がんばって今に至る訳だ。
出会った日の事を思い出したりしていると
とても懐かしくなった
ベッドに寝そべり天井を見上げていると
パタパタと騒がしくスリッパの音が近づいてきた
ガチャッと音を立て部屋のドアが開くと
エプロンをした町子がにっこりと微笑んでいる
「さっくん!!夕飯できました!!今日はお鍋です!」と伝えてキッチンに戻ろうとする町子を手招きして呼び寄せた
「さっくんどうしたの?」
変なのーと笑う町子を抱きしめて
沢山沢山キスをした。
「さっくん!?!?」
慌てる町子をみて笑いながら手を引きキッチンへ向かうと
俺が好きな鍋と兄さんの高いワイン、
朔おめでとうと書いたケーキが
テーブルに並んでいた。
「10月31日か…今日。」
「何?さっくんお馬鹿すぎて自分の誕生日忘れたのかなー?」
一足先にテーブルに座り兄さんはニヤニヤと
意地悪い顔をして笑っていた。
「最近バイトと練習とライヴで毎日忙しくて…誕生日より町子ハロウィンとか好きなのに1日寝てて悪かったな…」
照れと申し訳なさで視線をテーブルに向けたまま椅子へ腰掛けた。
「さっくん忙しいの知っているから大丈夫!
ハロウィンも素敵だけど誕生日が一番素敵」
ニコニコと笑いながらグラスを差し出してきた。
「あれー町子ちゃんあの服着ないのー?」
と兄さんがニヤニヤとしている
すると町子がびくっとして目を泳がせる
「え?何?俺だけのけもん?」
わざとムッとしたふりをしたら町子は慌てて
口を開いた
「ハロウィンの服やまちゃんと買いに行ったけど…サイズ少し小さくてなんか丈短いし…」
恥ずかしそうに目があちこち泳いでいる
「俺誕生日だしみたいなー…誕生日なのになー」
と言ってみたら兄さんも誕生日だしハロウィンだよー?と町子を煽る
「わかりました、着替えますから!」
町子が俺の部屋に着替えに行った時に
こそっと兄さんに質問をした。
「兄さん…みたの?」
「やまちゃんと勝手に着替えてそこではしゃいでたから…」
とリビングを指さした。
ああ…と納得した。
そして町子が自主的に先に見せたんじゃなくてよかったと安堵した。
たまに兄と町子の距離が近い気がして不安になってしまう。
兄シュウは口には出さないが見せられた日を
思い出していた。
「ちょっとみなさいよ!メガネ兄さん
町子エロ可愛く無い??」
鼻息荒く露出高い町子ちゃんを無理やり引っ張ってきた。
溢れそうな胸に露出した生足に口元が緩みそうなのを我慢して真顔を保っていたが
やまちゃんは自分だけさっさと上着を羽織り
「これから仕事なの」とウインクして去っていった。
残された町子ちゃんは恥ずかしそうに
もじもじとして上目遣いでこちらを見つめてきて
非常にムラムラとした。
あの服はなー…写真もっと撮ればよかったな…
「兄さん?」
朔は不安そうにこちらをみている
「いやぁ、風邪ひきそうだったなぁって」
興味なさそうにそんなこと言いながら町子ちゃんを待った。
◇◇願いの変化◇◇
鍋を温め直したりしているうちに町子が
黒にオレンジのメイド服に身を包み
現れた。
「町子…めっちゃ可愛い…スカートピラっとしてこう…」
俺は町子に詰め寄った。
「何?可愛いじゃん!明日までこの服な!
最高!」
確かに風邪ひきそうではあるけど
めっちゃぶっ刺さった。昔のことを思い出したからか感動が倍増されている気がする
兄さんがいなかったら正直襲っていたと思う
パンパンッと兄さんは手を叩き
「はいはい、夕飯にするから朔は頭冷やせ本当に朔は犬だね。わんわんっていってみ?」
と俺をdisって来た。
しかし実際に興奮したのは本当なので大人しく
夕飯の準備を手伝った。
町子は楽しそうに笑っている
もう昔みたいに悲しそうな顔はしていない
兄さんにはムカつく時も
町子に何かしていないか不安になってイライラする時もあるけれどやっぱ兄さんで
最初は町子とただ居たいためにスコア稼ぎをしていたけど町子にプロポーズをした今願いは変わった。
鍋を囲みながら免許の話とか
試験の話とかをしていて切り出すなら今だと思った
「なぁ、兄さん町子話を聞いてほしい」
箸を止めて二人は顔を見合わせている
「俺ずっと町子を幸せにするためにトップを狙ってた。稼げるバンドマンになって町子に楽をさせたいって願うつもりだった。でも、バンドでの成功は自分で掴みたい…だから練習量増やしてライヴも増やした。町子を寂しい気持ちにしてるから悪いなって思ってる…ごめんな?」
俺は兄さんの目をまっすぐに見つめた
「俺、やっぱ兄さんと町子とこのまま過ごしたい。俺馬鹿だから子供とか出来ても勉強とか教えらんないし…今でも兄さんに怒られてばっかだし。
だから兄さんがいた方が安心だし…やっぱ俺の兄さんじゃん?だから兄さんをもう自由にしてやってって頼むんだそんで旅行行ったり俺のライヴみてほしいし」
照れ臭かった。凄く
しかし兄さんはワイングラスを床に落とした
「は?」
兄さんの声が響いた。
口が裂けてるから言えない シラタマイチカ @shiratama612
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