キャラクターシート
特典1.レイティス王国:ミゲル陣営
【ミゲル】
二十四歳
来歴
レイティス王国中隊長
レイティス王国将軍
レイティス王国軍務長官
身体的特徴
朝焼けを思わす落ち着きのある橙がかった赤い(緋色の)髪、真っ赤な瞳
身長172cm、体重65kg、細身で
精神的特徴
王都の商家に生まれたが、五歳の頃両親が流行り病で亡くなり、王都のスラム街を根城に子どもながらスリをして生計を立てていた。七歳のある日王城内を巡視していたカートリンクの財布をスろうとして失敗し身柄を拘束される。カートリンクが保護者へ引き渡そうとしたが引き取り手がいなかったため、ガリウス同様カートリンクが身を引き受けることとなった。以後ミゲルはガリウスとともにカートリンクから剣の扱いに始まり、命の尊さや悪事を忌むこと、他人を損なえば自身の心が失われることなどを教わる。
カートリンクは国王ランドルの腹心でもあった。ランドルの孫娘ソフィア姫とミゲル、ガリウスは幼い頃から親交を持ってきた。ミゲルがカートリンクの養子となった七歳からの付き合いである。ランドルと娘ユリア王女はソフィア姫の婿候補としてミゲル、ガリウスを見据えており、ミゲルが王家と家族同士の付き合いをしてきた。
ガリウスに後れること四年、十五歳で士官学校へ入学し、タリエリ将軍麾下の小隊副官として戦場を経験することとなった。三年(十八歳)で小隊長へ昇格すると副官にラフェルを登用し、彼の率いる小隊には変わり者の什長ナラージャが編入してきた。伍長、什長は民兵から選ばれており、ナラージャも正式には民間人である。ナラージャは他の小隊といざこざを起こし、五十人の小隊を相手に九人の従卒とともに完膚なきまでにこれを打ち倒した。敵味方の見境なしにケンカをふっかける危険な臭いのするナラージャに興味を抱いたミゲルは、ナラージャと腹を割って話し合って彼を手懐けた。のちに“無敵”と称されるナラージャは比類なき攻撃力をもってミゲル小隊で軍功を重ねる。ミゲルは小隊長に就いてから“無敵”の什長ナラージャを巧みに使いこなし、三年後(二十一歳)にユレイカ中隊副官へ昇格。小隊副官だったラフェルを小隊長に格上げした。功績著しい“無敵”のナラージャはミゲルの推薦もあり、民間出身としては大出世となる小隊長へと昇格し、ミゲルの属する中隊でも変わらず先鋒を務めた。中隊副官就任から二年後(二十三歳)にユレイカ中隊長が戦死し、ミゲルが異例の若さで中隊長へと就任する。ラフェルを中隊副官に任じ、ナラージャを筆頭小隊長として遇した。
中隊長としての初陣が「テルミナ平原の戦い」である。
用兵の特徴
小隊副官時代は小隊長へたびたび進言するも却下を繰り返され、フラストレーションが溜まっていた。
小隊長になると“無敵”のナラージャを手懐け、彼を中心とした一点突破作戦を得意とする。またすでに中隊副官となっていたガリウス直属の小隊としばしば模擬戦を行ない互いに用兵の腕を磨き上げ、効果的な防御戦術を確立した。
中隊副官になるとガリウスとの模擬戦は中隊規模となり、大規模戦闘における用兵の腕前を磨きあった。模擬戦にはナラージャ小隊も防御陣に組み込まれ、防御しつつの反撃要員としての役割を任せた。
中隊長としての初陣が「テルミナ平原の戦い」である。タリエリ将軍麾下の中隊としてガリウスとともに後衛を務めたが、帝国軍のクレイド率いる騎馬中隊に側背奇襲を許し、タリエリ将軍とガリウスが軍務長官アマムを守る盾となる中、ミゲル中隊はナラージャを先頭に帝国軍エビーナ大将本隊を強襲しエビーナ大将を討ち取って戦闘が終了した。その際王国軍は軍務長官アマムこそ守りきれたが、残るタリエリ以下七人の将軍がことごとく戦死し、多くの兵を損ねることとなった。
【ガリウス】
二十八歳
来歴
レイティス王国中隊長
レイティス王国将軍
東部連合政府軍上将軍
身体的特徴
さらりとした栗色の髪、ダークブラウンの瞳
身長184cm、体重78kg、ミゲルよりも背は高いが物腰は低い
精神的特徴
北方国境の城塞都市スレーニアに住む名家の出身。二十一年前、七歳のときに異民族がスレーニアを攻め落として住民を大虐殺する。ガリウスの家族は館の秘密の隠し部屋に彼を押し込み、彼が隙間から見つめる中で次々と惨殺された。当時将軍であったカートリンクが半日後れでスレーニアに到着すると、異民族はたちまち掃滅された。カートリンクの指令により生存者の捜索が行なわれ、住民一万五千余人のうち生き残ったのはガリウスを含めて七人のみ。王国軍に守られながら王都へ帰還した「奇跡の七人」のひとりとなったが、そのときガリウスは声を失っていた。王都に身寄りもなくひとりで生きていくのも難しいと判断したカートリンクは、ガリウスの身を引き受けた。老将の庇護と四年目に家族に加わったミゲルとの共同生活を経て五年目の十二歳で声を取り戻す。そのためミゲルに謝意を感じ、彼を庇護する役目を自らに課した。
カートリンクが国王ランドルの腹心であったため、ランドルの孫娘ソフィアとの付き合いが長かったが、当初は声が出せなかったためソフィアの遊び相手としては今ひとつだった。しかしミゲルが加わって三人で遊び始めたことで声を取り戻し、以後ミゲルとソフィアはガリウスの恩人となった。
十五歳で士官学校に入り、タリエリ将軍麾下の小隊副官として戦場に出た。三年後(十八歳)でタリエリ将軍直属の中隊の小隊長に抜擢され、ユーレムを小隊副官に任じた。将軍の指揮のもと粘り強い用兵に定評を得る。四年後(二十二歳)にタリエリ将軍直属中隊の中隊補佐に抜擢され、副官だったユーレムを小隊長に引き上げる。この頃からミゲル小隊長とともに小隊規模での練兵を積極的に行ない、各小隊との絆を深めていく。四年後(二十六歳)にタリエリ将軍直属中隊の中隊長となり、タリエリ軍の筆頭中隊長となった。ユーレムを中隊副官に指名する。前年にミゲルも中隊副官となっており、中隊規模での防御戦術を重点的に磨きあった。そして二年後(二十八歳)に軍務長官アマムと帝国軍エビーナ大将との「テルミナ平原の戦い」が行なわれることとなる。
用兵の特徴
防御戦術に卓越しており、二十七歳でカートリンク軍務長官が帝国軍に敗れた戦いにおいて、王国軍が退却する際にミゲルとともに殿を務め、王国内で巻き起こる「英雄待望論」においてミゲルとともに筆頭の地位を占めるに至る。
中隊を十の小隊ごとに分けて統率し、それぞれが突出しては退くを繰り返して敵を誘い込んで半包囲して叩いていく戦術はミゲルと磨きあった防御戦術の中でも得意とするところである。五百人の中隊ながらも五千人の大隊ですら翻弄する手腕を発揮する。この防御戦術はミゲルと共有しており、帝国軍エビーナ大将と軍務長官アマムとの「テルミナ平原の戦い」においてミゲル中隊がエビーナ大将を討ち取るまでの間、アマムを守り抜いた功績によりミゲルとともに将軍へと昇格。大将となったクレイドと軍務長官カートリンクとの「テルミナ平原の戦い」において王国軍壊滅の危機を見事に救うこととなる。
【カートリンク】
七十二歳
来歴
レイティス王国軍務長官
レイティス王国将軍
レイティス王国軍務長官
クレイド大将との「テルミナ平原の戦い」で討ち死に
身体的特徴
短い銀髪、黒い瞳
165cm、58kg
精神的特徴
レイティス王国の現国王ランドルが王子だった頃から仕えている宿将。
帝国との戦いのみならず、北方や東方の異民族や野獣の群れとの戦いにも参加し勇名を馳せる。四十歳で将軍になるとランドルとともに北方の異民族との話し合いで和睦に持ち込み、同盟関係を締結するに至る。軍事のみならず国際政治にも精通している。
以後は帝国軍との戦いに集中し、将軍として戦績を重ね、軍務長官に昇格する。軍務長官は戦績によって地位が定まるため、しばしば戦わない年を作ったカートリンクはその都度軍務長官から退くこととなる。しかし次の軍務長官が帝国との戦いにことごとく敗れたことで、二、三年ののち軍務長官に返り咲いていた。
五十一歳(二十一年前)のとき東方の異民族により国境の城塞都市スレーニアに攻め込まれた際、軍官吏が予定時刻に到着しなかったため出立が半日後れた。この軍官吏は到着を待っていたカートリンクが軍法に照らしてその場で斬首された。出立が半日後れたことでスレーニアは壊滅し、奪い取った異民族を根絶する凄惨な戦いが繰り広げられた。生存者を探索する中で口のきけないガリウスを見つけ、王都で身寄りを探した。しかし誰も名乗り出なかったため、カートリンク自身が引き受けて育てることとなった。
その後五十五歳(十七年前)のときに王城内を巡視していたところ、赤毛の少年に財布をスられそうになった。しかしカートリンクはその場で子どもを捕まえて官憲へ引き渡したが、両親はすでに亡く、彼を育てるべき人物が誰もいないことを知った。そこでカートリンクは赤毛の少年ミゲルを自ら育てることを決意した。
そこでいったん軍務長官職を辞し、口のきけないガリウスとの共同生活において、ミゲルに「生きる」ことの意義を説き、彼を教化することに心を砕いた。ミゲルはカートリンクの言うことをよく聞き、また口のきけないガリウスへ積極的に話しかけてくれたおかげで一年後にガリウスは十二歳のときに声を取り戻した。その後二人に剣や槍の扱い方から馬の乗り方、一般教養を教え込む。そして三年後(五十八歳)のときに十五歳となったガリウスが士官学校へ進んだ。後れること四年(六十二歳)にミゲルも十五歳となり士官学校へと進む。
その後軍功を立てて軍務長官職に返り咲き、帝国と東方異民族との戦いに奮闘する。しかし帝国との戦いで二年間に敗戦と戦闘回避を行なったため六十四歳にして軍務長官職を解任された。後を託された軍務長官は帝国に大勝し、カートリンクは閑職へと追いやられた。しかし翌年の戦いで大敗してたった二年で軍務長官職を解任された。そこでカートリンクは六十六歳にして再び軍務長官職へ返り咲いた。そこから五年間(七十一歳)までの軍務長官としての戦績は二勝二敗一分(勝・敗・勝・分・敗)と平凡な戦績だったため軍務長官を決める投票が行なわれ、配下の将軍が多かったアマムが新たな軍務長官となった。
そうして迎えた七十二歳に、帝国軍エビーナ大将と軍務長官アマムとの「テルミナ平原の戦い」が始まる。
用兵の特徴
手堅い陣形と戦術、各将軍との緊密な連携による運用により数々の戦いに勝利をもたらした英傑。若き頃からの朋友であるランドル王からの信頼も篤く、王国軍は数多くの勝利を重ねてきた。とくに帝国の前皇帝フロウが死去し、十七歳の若さで病弱のレブニスが皇帝になると、年齢を理由に軍務長官職を辞しタルカス将軍が新しい軍務長官となった。最初の一年は帝国に大勝した。しかしクレイドが「惰弱帝」レブニスの健康と知略をたった一年で高めたことにより、皇帝が自ら前線へと出陣し精兵と化した帝国軍を相手に軍務長官タルカスが敵しようはずもなかった。ランドル国王からの要請により、再び軍務長官に就くと五年間で二勝二敗一分の成績を残した。帝国軍の充実ぶりを考えればじゅうぶん善戦しているのだが、単に数字だけを見れば平凡そのもの。そこで将軍アマムが「次の軍務長官は将軍たち自身が選ぶべきだ」と主張し、投票の結果手下の多いアマムがまんまと軍務長官職を手に入れた。しかしエビーナ大将とアマムとの「テルミナ平原の戦い」において、参加した将軍がアマムを除いて全員討ち死にしたため、またしてもカートリンクが軍務長官へ返り咲いた。
帝国で新任されたクレイド大将とカートリンクとの「テルミナ平原の戦い」において歴史的な大敗を喫し、後詰のミゲル将軍とガリウス将軍を残して六名の将軍と自らもともに討ち取られた。しかしその遺志は養子であるミゲルとガリウスに引き継がれ、大敗であってもすぐれた防御戦術を駆使して多くの兵の命を救い出し、後日の再戦を期する兵数を生還させた手腕は見事であった。
【タリエリ】
五十二歳
来歴
レイティス王国中隊長
レイティス王国将軍
身体的特徴
角刈りの黒髪で口ひげが特徴的
174cm、75kg
精神的特徴
カートリンクが将来を託すに足る人材と見込み、麾下の小隊長であった頃から育て上げた。
二十一年前の三十一歳のときに筆頭中隊長として城塞都市スレーニア奪還戦で大いに功績を挙げ、当時史上最も若い将軍に任じられた。
その後「カートリンクの懐刀」として帝国軍や異民族、野獣の群れなどと戦って軍功を重ねてきた。
才覚はアマムの比ではなかったが政争を殊更嫌い、地位に執着もしなかったため一度も軍務長官になることなくエビーナ大将とアマム軍務長官との「テルミナ平原の戦い」において、アマムを守るためにクレイドを食い止めようとしてガリウスの眼の前で討ち死にした。
用兵の特徴
攻守のバランスがとれた良将。兵士たちからも慕われており、堅牢な防御陣で敵の攻撃を受け止め、瞬時に攻勢に転じて完膚なきまでに叩きのめすカウンター戦術に長ける。とくに麾下のガリウス隊の防御戦術と、ミゲル隊(“無敵”のナラージャ)の突貫力を効果的に用いて軍功を重ねた。政争を嫌い、軍務長官候補になりながらもつねに辞退してきた。用兵の実力はカートリンクに匹敵し、部下の個性を伸ばす育成力にも長けている。カートリンクがタリエリを高く買っていたように、タリエリはミゲルとガリウスを高く買っていた。ふたりの昇格が他を圧する早さだったのは、タリエリがミゲルとガリウスに手柄を与える用兵をしていたためである。
カートリンク派のためアマムと確執を抱えており、エビーナ大将とアマム軍務長官との「テルミナ平原の戦い」において、数合わせとしてアマムから後詰を命じられた。帝国軍のクレイド騎馬中隊が側背攻撃を仕掛けてきた際、アマムを守るためにガリウスと連携してクレイドを迎え撃ち、ミゲルに敵大将エビーナを討ち取るよう指示を出す。鬼神の如きクレイドの奮戦ぶりを脅威に感じ、ガリウスの前に防御陣を布いたが、クレイドの勢いを完全には食い止められずにクレイドと直接槍を交えて敗れ死亡する。しかしクレイドの勢いをある程度落とすことに成功し、結果としてガリウス中隊がクレイド中隊を阻止し、ミゲル中隊がエビーナ大将を討ち取るまで軍務長官アマムを守り抜いた。
【カイ】
二十五歳
来歴
レイティス王国小隊長
競馬師
レイティス王国軍師
肉体的特徴
ボサボサの黒髪に黒い瞳
168cm、65kg
精神的特徴
十五歳で士官学校に入学し小隊副官となり、十七歳で小隊長になる。
しかし直属のアマム派の中隊長が考えもしなかった作戦を立案して実行し、「独断専行」で軍規に反したとして十八歳で軍を追われることとなった。
それからは競馬の研究に余念がなく、二十歳になると馬と騎手を見る目が一流になった(名伯楽になった)。馬と騎手の能力だけでなく、当日の馬の体調や騎手との相性、馬場状態や天候などを「計算」して勝ち馬を予想する。「計算」して勝つ確率の高い馬の勝馬投票券を購入することで、二十二歳になる頃には豪遊できるほどの金額を稼ぎ出していた。
また、レイティス王国とボッサム帝国の戦いが行なわれると聞けば、たとえ競馬が開催されていても現地へ赴き、双方の戦い方や用兵の様子を細かく観察していた。
カイが目をつけたのは王国軍中隊長だったミゲルの攻めの強さとガリウスの守りの強さである。また帝国軍では怪傑クレイド騎馬中隊長の活躍にも注目していた。
さまざまな大将と軍務長官の戦いを見てきたが、その形勢判断は開戦前からついていたほどの眼力の持ち主である。そして帝国大将と大隊長、王国軍務長官と将軍の性格や傾向などにも精通した。
エビーナ大将とアマム軍務長官による「テルミナ平原の戦い」に際し、王国軍の大敗を逸早く察知し、タリエリ将軍へ匿名で危険性を説く書簡を送っていた。しかしそれが活かされることはなく、タリエリを含む王国将軍がすべて討ち取られてしまった。この事態にアマムが引退を余儀なくされると見ていたが、将軍に格下げだけで戦後処理が済んでしまった。これはアマムを欠いた場合、若輩ではあるが戦功著しく新将軍となるであろうミゲルとガリウスに兵士が割り当てられるという王国将軍たちの反発が根強くあったからだ。年齢が半人前なら率いる兵も半数で構わないとカートリンク軍務長官を除いた王国将軍たちの意見が採用されることにつながり、アマムは将軍としての地位をなんとか保つことにつながった。
悪しき風潮を感じ取ったカイは、近いうちに帝国軍が王国軍を掃滅するだろうと予測する。
そして前回の戦いのひと月後に開かれたクレイド大将とカートリンク軍務長官との「テルミナ平原の戦い」において、その危惧が具現化した。
しかし想定外なことも存在した。
クレイドの用兵が戦況に応じて陣形を変えるひじょうに機能的なものであり、これまで陣形対陣形であった戦い方が大きく変わる転機となったのである。そんな激戦の中で王国軍が見せた退却戦の見事さにも類い稀な筋の良さを感じもした。
クレイド大将に刺激を受け、王国軍務長官に名乗り出て戦いたいと思い始めるが、一介の小隊長崩れにそんな大役がまわってくることはないだろう。
王国軍は最終的に生き残った将軍ふたりミゲルとガリウスのうちミゲルを新たな軍務長官に任命した。
その事実をカイは伝え聞いたが、すぐに競馬師の生活に戻ることになる。
そんな折、ミゲル軍務長官が城内視察をすることとなった。いつもどおり勝馬投票券を購入して日銭を稼いでいたカイの姿に着目したミゲルは、カイと話し合うことにした。
カイはミゲルの探りについぺらぺらと軍事の知識を披露してしまった。クレイド大将に勝つ方法を模索していたミゲルとガリウスはなんの打開策も有していなかったが、カイにはクレイドを倒す策略があるという。
それを知ったミゲルはカイに懇請して軍務長官補佐として迎えることとした。
王国軍では以前タルカスが軍務長官の補佐役として影で実権を握ってきたので、王国内部では国王や宰相が良い顔をしなかった。しかしカイの計略を聞くうちに、カイの実力のほどを痛感することとなった。ただし「軍務長官補佐」という称号にはいい印象がないため、ミゲルは「軍師」の称号をカイに与え、戦場での計略を発案する立場として定めた。これはカイにとっても責任が重くなることだが、あえてそれを受け入れて帝国軍を打ち破らんと士気を高めた。
用兵の特徴
用兵面では類い稀な才能を発揮する。クレイドが戦闘中に陣形を変化させることに対し、カイは陣形そのものを持たない流動的な運用を心がけた。
ひと塊の方形陣から円陣へ、またその逆の移行に始まり、戦場を移動して戦う将軍を中心に結節点を持たせることでまさに「水の如き」流動性を確保した。
またこれまでの指揮命令系統を再整備し、帝国軍よりも一段階少ない手順で末端の兵士たちに命令を実行させることに成功した。
その手腕により、ヒューイット大将&マシャード大将とミゲル軍務長官との「カンベル山稜の戦い」において「秋暁の霧」を味方につけて三倍する帝国軍を四分割させて、それを各個撃破する用兵手腕を見せつけた。
そしてクレイド大将とミゲル軍務長官との「テルミナ平原の戦い」において、三倍する帝国軍が守りを固めてくるだろうと承知して、「秋暁の霧」を味方につけた高機動戦術と流動的な編成によって名将としてのクレイドを受け身にまわらせることに成功し、帝国軍からろくな反撃も受けずにその兵員を削り取り続けた。これにより帝国クレイド軍は撤退していくこととなる。
【ラフェル】
二十四歳
来歴
レイティス王国中隊副官
レイティス王国中隊長
レイティス王国将軍
肉体的特徴
ベッコウ色の髪にブラウンの瞳
180cm、75kg
精神的特徴
ミゲルと同期の王国軍人。才幹のあるミゲルの学友として絆を深め、ミゲルが先に小隊長へと昇進すると、人事異動でその副官となる。
ミゲルから信頼を得ており、ミゲルの昇格に従って地位を高める。
同期のミゲルが急速に昇進していくさまを見ても、脅威や敵愾心などは抱かず、ミゲルに対して憧れを抱いており才能を高く評価している。
ミゲルが将軍になるとミゲル隊筆頭中隊長となり、実務部隊の長となる。
用兵の特徴
ミゲルの戦術を間近で研究し、その合理性や狙いなどを把握することに努めていた。そのため、ミゲル直属の兵員をそのまま引き継いで統率しても、兵員を混乱させることなく運用できた。ミゲルが得意とする防御戦術も引き継いでいる。
ガリウス隊のユーレムとは幼馴染みであり、ラフェルとユーレムはミゲルとガリウスに匹敵するほどの出世スピードを誇ることとなった。
ヒューイット大将&マシャード大将とミゲル軍務長官による「カンベル山稜の戦い」においてマシャード大将を討ち取り、戦後に将軍へと昇格することとなった。
【ユーレム】
二十五歳
来歴
レイティス王国中隊副官
レイティス王国中隊長
レイティス王国将軍
肉体的特徴
シルバーグレイの髪に、真鍮色の瞳。
170cm、75kg。
精神的特徴
勝気な性格で、ひじょうに攻勢に定評のある人材である。防御戦術に精通したガリウス隊の副官や筆頭隊長を務める。
ガリウス小隊の副官を任じられてから、つねにガリウスに伴い出世を重ねた。ミゲル隊のラフェルと幼馴染みで、ミゲルとガリウスに引けをとらない出世スピードを誇る。
ガリウス隊の防御戦術もひととおり習得しているが、元来攻勢に定評がある。ガリウスが用いる十の小隊を突出・交代を繰り返す防御戦術は、突出する小隊が攻勢に強くなければ成立しない。それを担うのがユーレムの役割である。
ガリウスからの信任も篤く、筆頭小隊長としてもガリウスの副官としても、信頼に応えるだけの成果を収めてきた。
用兵の特徴
勝気な性格で戦況に流されやすく危うい場面も何度となく招くものの、窮地にあって活路を見出す胆力と行動力に定評がある。
ガリウスが将軍になるとガリウス隊筆頭中隊長となる。クレイド大将とカートリンク軍務長官との「テルミナ平原の戦い」が終息し、ミゲルが次の軍務長官に就任すると、ガリウス将軍の副官となる。
根っからの軍人気質ではあるが、ミゲル長官の「不殺」精神に理解を示し、戦いのない世の中を築くために奮闘する。
ヒューイット大将&マシャード大将とミゲル軍務長官による「カンベル山稜の戦い」においてヒューイット大将を討ち取り、戦後に将軍へと昇格することとなった。
【ナラージャ】
三十八歳
来歴
レイティス王国兵員
レイティス王国伍長
レイティス王国什長
レイティス王国小隊長補佐
レイティス王国小隊長
レイティス王国中隊長
肉体的特徴
ブラウンの髪に、碧眼
192cm、100kgで筋肉質
精神的特徴
別名“無敵のナラージャ”と呼ばれ、一対一での決闘において負け知らずの豪傑。その槍技・剣技は帝国軍クレイドをも上回る。文字どおり「無敵」を誇る。
小隊を率いてもつねに先頭に立って血路を開き、敵司令官を切り捨てて敵部隊を退却に追い込む手腕を発揮する。
それは彼を見出だしたミゲルが、敵の戦死者に対しても深い悲しみを抱くことを知っているからでもあった。
什長から中隊長へと昇格していくが、つねにミゲルの懐刀として戦況を一変させる活躍を見せる。
用兵の特徴
特別にあつらえた黄色の防具に身を包み、戦場のどこからでもナラージャの位置は敵味方が認識している。彼が戦場に突撃することで、戦況が一変してしまうと戦場にいる皆がわかっているからだ。
その圧倒的な攻撃力を持つナラージャ隊長本人が先陣を切って帝国軍に突撃していくさまは、帝国軍に恐怖を植え付け、王国軍には希望を見出ださせる。
出世欲はないのだが、戦場に出れば必ず敵司令官を打ち倒してくることで、ミゲルとともにトントン拍子で階級を駆け上がることとなった。
それでも窮地を救ってくれたミゲルへの恩義から彼を盛り立て、将来の軍務長官に仕立てようと、獅子奮迅の活躍を見せる。
軍のトップである軍務長官が「不戦」のミゲルであれば、戦争が終結するかもしれない。争いがなくなれば、ナラージャは武者修行の旅に出たいと考えている。しかしその願いは、ミゲルの出世によって大きく変わっていくことになった。
次回『レイティス王国:アマム陣営』を追加致します。
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