第六章 名将への挑戦
第31話 雌伏・激戦の帰路
カンベル
「帝国軍としては二大将を失った手前、来月にも仕掛けてくるとは考えにくいのではないか?」
「いえ、ひとり残ったからこそ、次戦は確実に
「二大将を
その言葉を
「レブニス帝は先月クレイドを騎馬中隊長から一気に大将に任じました。
「おそらくヤツへの皇帝の
それほどの人物が王国にいれば、私などが軍務長官などという分不相応な地位に
「皇帝はクレイドを筆頭大将とするため、できることならヒューイット大将、マシャード大将両名には失敗して欲しかったはずです」
「虫の息の王国軍に敗れるとは思わないのではないか?」
私たちとて、ただで敗れるとはかぎらないではないか。
「レブニス帝としては、三倍の兵力で王都を落とせたら締めたものだったはず。そのまま王国を
「確かに私たちがいなくなれば王国は思いのままだろうな」
「そして
「意味はない?」
筆頭が誰であっても意味がない、と言われてしまうと少し考えざるをえない。王国軍を例にとれば、アマム軍務長官がタルカス軍務長官補佐を担いでまで権力に執着していた。帝国では事情が違うのだろうか。
「そうです。仮にヒューイット大将が筆頭となっても、
「異民族はともかく、
「だから、仮に王国を
なるほど、そういうわけか。それならヒューイット大将とマシャード大将が、互いに連絡を取り合わなかった理由にもなる。
しかし戦場で
「結果は
「そうです。そしてレブニス帝はふたりの大将が負けることを密かに望んでいた。だから対抗心を
「つまりこの
「これも
「クレイド大将が軍権を握ったら、帝国を打倒する手段はなくなるのではないか?」
「それがそうでもないのです。あまりにも優秀な司令官の下では、優秀な
「それは私も考えていた。王国軍もカートリンク軍務長官
「帝国軍も似たようなものです。エビーナ大将は
この話はピンとこなかった。
「前線がいちばん安全なのか?」
「はい。前線は孤立させられないかぎり、
「あれに
「はい。レブニス帝にしろクレイド大将にしろ、今回の残存兵からわれらの戦いぶりをつぶさに
「そうだ。次戦ではいかに三倍の兵力を有していても、兵を四分割してくるとは思えない。兵力分散は明らかに
「その点はクレイド大将も心得ているでしょう。兵力分散の
「問題はそこだな。兵を固められれば数の勝負に持ち込まれてしまうだろう。帝国軍はおよそ二万九千、わが軍は一万弱。ひとりがひとりを
「数の勝負に持ち込ませなければよいのです」
「どのようにしてだ?」
カイが
「この中に帝国の
「その
われながら、肝の冷える話をしている。
「だからミゲル長官には『私にも帝国軍を破る秘策がある』くらいの雰囲気を出していただかなければなりません。
「確かに。では自信満々な表情を浮かべながら王都へ
「そんな慣れないことはなさらぬよう。なにも考えずただ前だけを
「わかった。そうしよう」
カイの進言どおり、愛馬に
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