第30話 疾風・勇者への秘策
「こちらの損害はどうでしたか? ガリウス将軍」
「千人弱でした。私が繰り入れられたのはなんとか二百といったところでした」
ガリウスはラフェルとユーレムを連れていた。
「千の損失で二万を仕留めたとなれば、これは戦史に残る大勝利と申せますね」
カイが
「ガリウス将軍の繰り入れた敵兵の二百名は丁重に帝国領へ送り返してやれ。彼らが戦死者を連れて帰れるよう、帝国軍の宿営地に残る兵車をまわすのだ。遺体や重傷で動けない者を載せるのを部下たちに手伝わせよ」
「お待ちください、軍務長官
不思議に思ったカイは、戦力の増強こそが兵法書に記された最善策であると主張する。
「今回
「王国軍は残虐ではない」
そう印象付けるために。
「
「すまんな、カイ軍師。私にはこのような生き方しかできないのだ」
「自分の部下を
「そこまで計算して行なっているつもりはないが」
「長官
「いや、それは言うまい。王国民を
「しかし、九千の兵でクレイド大将と戦うのはいささか
「それに関しては、戦闘力には欠けますが徴兵する年齢を少し下げればよろしいでしょう。なに、数さえ揃っていればじゅうぶんな戦力になりますよ」
重苦しい会話が続いていたのに気づいたラフェルは、話の転換に、
「それでも次の
軽口を叩いた。
戦勝の
「しかし次の相手はあのクレイドだ。おそらくあの男は今回のように兵を分散してくることはないでしょう」
とユーレムが周囲の者に告げた。
それを聞くとその場にいた者は皆、難しい顔をした。
だが、カイはまったく平然としている。
「なに、まとまってきたとしても三倍の兵に勝つ戦い方を私は存じております。ただ、それには王国全軍が私の手足のように動いていただけなければなりませんが」
その場に居合わせた者は誰もがカイの顔を見てしまった。
三倍の敵と真正面から対決しても勝つ
しかし、この軍師ならやりかねない。今日の勝利はカイの
すでに軍高官の彼への信頼は揺るぎないものとなっていた。
「そうと決まれば、一刻も早く王都へ帰還し、演習を繰り返すしかあるまい」
そう言うと険しい顔つきで、全軍を王国領へと引き揚げさせた。
カンベル
そこに活路を見
しかし三倍近い兵が動かずじっとしていて、それでも勝てる
ない知恵を絞ってもなんの作戦も浮かばない。
今回のように、カイ軍師へ全面的に預けるほかない。
だが、いざ実戦となったとき、カイの命令どおりに動けなければ彼の構想する戦い方は実現しない。
それでは三倍の兵に勝つことすらままならないだろう。
であれば、王国の
軍務長官の職は、
どんなに生還者が多かろうと、より多くの敵を殺さなければその座を追われるのが
カートリンク軍務長官
だが、多くの人を殺すくらいなら、
その決断が下されるまで、
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