第26話 疾風・夜明け前、朝霧の中
カンベル
“軍師”カイは戦場へ先着した直後に
カイが想定していたとおりの展開だ。これで勝利に確信を持った。
王国軍はこの
東からふたつ目の部隊を率いながら
「うまい具合に
「土地
なるほどな。
あまり知識のない土地の気象は、ここで
軍務長官であれ“軍師”であれ、世のすべてを知っている必要などないのだ。
詳しい者を味方につけて、その者を有効に活用していく。
政治でもそうだろう。
ランドル国王陛下が高齢のムジャカ
組織のトップに立つ人間は、
軍においても
命令違反は
軍律が正しく行なわれていれば、兵たちは自身がなにを行なうべきなのか。上司の指示を受けた段階で自ずと気づくものなのだ。
「ここまではすべて予測どおり。あとはガリウス将軍らの部隊が帝国軍に気づかれず速やかに合流してくれるのを待つばかりです」
そのための伝令もすでにカイが発してある。
このカイという男は戦場での細かな作業にも
ここまで軍務に明るいとは、やはり
このように優秀な人物がまだ
軍務長官として、適性の高い軍幹部を得るのは最も優先される職務である。
つまらない人物が部隊長を務めれば王国軍は致命的な失策を
危機を未然に防ぐためにも、軍は優秀な人物を多数抱える必要があるのだ。
そもそもタルカス将軍が台頭してきたときから、レイティス王国の悲劇は始まった。
アマム将軍が彼を担いで「反カートリンク派」の象徴とし、他の将軍に賄賂を送って仲間に取り込んだ。
その結果が将軍の質低下を招き、ついに王国は自滅の道へと突き進んでしまった。
もしカートリンク軍務長官
あまりにも優秀な軍務長官のもとで、それを超えるような人材が生まれるのは難しい。
現実問題として「反カートリンク派」に連なる将軍も、元を正せばカートリンク軍務長官の時代に
そう考えれば、有能な上司は有能な部下を生み出せず、無能な上司は無能な部下しか生み出さない、ということになってしまう。
どちらにしても昇格した将軍は一流の上司には
カートリンク軍務長官
軍歴の最初から優秀だったのだ。
その人物に
同じくカートリンク軍務長官
せめて全軍を指揮する軍務長官となった
それに比べて“軍師”カイは
この
先を読む眼力は
「不思議に思うのだが、カイ軍師はなぜここまで軍略や軍務に
カイは
「実は、私も以前は士官学校におりまして。小隊長として前線で兵を率いたこともあります。ですがそのときの中隊長と折り合いが悪く、
「そのときの中隊長は今どうしているのか」
「
そうか、と言いながらその
王国軍優勢のまま推移していたとき、クレイドが騎馬中隊長として王国軍の
それによる混乱で多くの将軍が戦死した。戦没者の中にその中隊長もいたのだろう。
「正面の敵はヒューイット大将の本隊だったな」
未明に届けられた
「今こちらが先手をとって攻めれば、兵数で
「作戦を聞いたときから不思議だったのだが。まるでこの位置にどちらかの大将が来るのをわかっていたような口ぶりだな」
「こちらが四隊に分かれれば、向こうも四隊に分かれざるをえません。ふたりの大将が出撃してくる以上、中央二隊を両大将が直接率いるだろうことは想像がつきますからね」
この論に
「戦局を見わたして各部隊に指示を出すには、中央にいたほうが効率的だからですよ。わが軍もそうでしょう」
カイの発言になるほどなと
戦場の
また司令官が中央にいれば伝令が末端まで伝わる速度を等しくできる。
機動的な行動を可能にするのなら、
前回の敗戦ではカートリンク軍務長官
もちろんほぼ全滅した前衛四将軍が長官
だが長官
軍の中央にいたのであれば、帝国軍の騎馬中隊に左右から
結局、カートリンク軍務長官
この
彼なら正しい戦術を導き出せるはずだ。
そう考えていたとき、東西の丘を越えてガリウスたちの部隊が相次いで到着した。
ここからは、ゆったりとしている
「今回の
演説により覚悟が定まり士気の高まった王国軍は、ただちに前進を開始した。
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