第五章 新体制での初陣に挑む
第24話 疾風・勝利への演説
軍師カイは新たに組織した
今回クレイド大将は帝都守護の任に
正確に
将軍昇格の式典で用いた本堂の中で兵たちが居並ぶ。
軍務長官である
まず紫地に黄色い十字が染め抜かれている軍務長官を表すマントを
「王国一万の兵士諸君。私が新たに軍務長官となったミゲルだ。前の
場内から
無理もない。
前戦において将軍として指揮していたとはいえ三十前の男が軍務長官だ。王国の歴史上で最も若くして就任している。
俺より年上の兵も大勢いる。いくら肩書きが軍務長官であっても、素直に命令を聞くとはかぎらない。
「私の信条は『より少ない
堂内からちらほらと拍手が
「では、私を補佐してくれる軍師のカイを紹介しよう」
俺とガリウスは前戦でひとりでも多くの兵を生かすために
率いていた計五千の兵と生還した他大隊所属の生存兵からは全幅の信頼を寄せられていると言ってよい。
しかし“軍師”のカイという男は兵たちの
将軍としての実績もないのだ。
この“軍師”をにわかに信じられないのも無理からぬことだ。
ここで
「私が軍師のカイだ。軍師とは若き軍務長官
しかし堂内の
「ここで問題となるのは、そもそも軍務長官に補佐役を置くことである。すでに亡くなられたが、タルカス軍務長官補佐という立てた
二戦続けて大敗とあって分隊長や筆頭中隊長の将軍昇格は見送られている。
つまり軍務長官と将軍一名だけが大隊指揮官ということになるのだ。
いくら全軍一万であろうと、この二名が戦死した際に空席となった軍務長官職・将軍職へは大隊を率いた経験のない未熟者が
兵士の不安はいや増すばかりだろう。
「帝国軍は一週間後にわが国に対して総攻撃を仕掛けてくる。数は三万。総大将はヒューイット大将、マシャード大将の両名である」
この一言が混乱に
一万対三万では勝敗など目に見えている。
もはや王国の敗北は必至だ。
全軍に
黒装束に漆黒の髪、
頼まれて正装し身だしなみを整えているカイには、兵たちの動揺する理由に見当がついていたようだ。
「だが案ずることはない。私の言うとおりに動いてくれれば、三万の兵など恐るるに
場の
「私やミゲル軍務長官
ガリウスと交代して話を引き継いだ。
「この場にいる者で、一万の軍勢で三万を相手にして勝つ
誰も
だが三倍の軍勢を前にして、それに勝つ方策など思いもつかないのが現実である。
そういった空気が流れ出したのを見て、カイは勝利を確信したようだ。
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