第23話 軍師・軍師誕生
さっそく
ランドル国王陛下が
そしてカイに一万の兵でも三万の大軍に勝てるという
「先の
ここまで言い終えるとカイは一息ついた。
「それはどういうことか」
陛下は眼前にいる
髪はぼさぼさで身なりもあまりよいとはいえない。
だが
それだけ洞察力に富んでいるのだろう。
彼を連れてきた
「まず部隊を兵種ごとの中隊構成にし、戦場で
兵種ごとの部隊編成は全軍を効率的に戦わせやすい。
五千人の大隊の中に軽装歩兵・重装歩兵・騎馬兵・戦車兵を混在させると、
前回はそれでクレイドに遅れをとったのだ。
「前回の
「具体的にはどうすればよいのか」
元来血気盛んなランドル陛下はカイという正体不明な男の話に引き込まれていった。
「至極簡単なことです。相手のひとりをふたりがかりで攻めます。そうすれば必ず勝てることは皆様もおわかりでしょう」
周りを見わたして皆の表情を観察したカイはさらに続けた。
「それを現実の戦闘に置き換えるなら、まず敵の部隊を分断して相手の人数を減らしてしまいます。そして敵を外側から包み込んで身動きがとれないようにするのです」
「相手の人数を減らす? どうやってかな」
ランドル陛下は奇異に感じたようだ。
一度戦闘状態に入った軍は、ひとつの目標に向かって行動するため、分断するのはまず不可能である。
「これから私がその方法をご説明
「それなら私の執務室がよいでしょう。あそこには伝令もいるが、しばし席を
ただちに陛下とカイそしてガリウスを連れて軍務長官執務室へ場を移した。
会議用の机の上にある大判のプレシア大陸の地図を挟んで、四名が向かい合って立つ。
カイは地図に
「敵を分断するなら、戦う前に限ります。戦い始めてからは敵の意図で分散しないかぎり分断などできやしません。しかし戦う前ならいかようにも分断させられます」
「確かに戦闘が始まってしまうと、合流は比較的容易だが、分断は難しいな」
国王陛下は若き
「私の狙いもそこにあります。分断するなら戦う前です。ですが、戦う前に分断が可能な状態とするには工夫が
「
「それでしたら、いっそ正面で戦うと思わせた兵の大半を帝国軍の背後に配置して、敵本国を
陛下とガリウスの意見はもっともだが、それではよくて半数にしか分断できない。
「それではよくてふたつにしか分断できません。わが軍はまだ数の上で負けています」
「ここはミゲル軍務長官
「ではどうするのだ?」
「地の利を活かすのです」
「地の利とは?」
「“
「美しい?」
「すみません。
「霧が深いのであれば、双方で敵軍の
「ご
ここまでは陛下を観客に見立てた“腹芸”にすぎない。すでに
「
「四つに分断すると、一部隊七千五百になるな。ということは、王国軍一万でも勝てることになる……。
それを聞いていたランドル陛下の
きっと
「やはりミゲル軍務長官
カイの話をすべて聞き終わった
「
この言葉でランドル国王陛下は
その理由はだいたい見当がついている。
過去にタルカス将軍が軍務長官を退いたとき「軍務長官補佐」の肩書きで権力を保持したまま居座った例があったのだ。
作戦を立てる
この時期の王国は連戦連敗で、国力を大いに
あの暗黒時代が再現されやしないか。
おそらくそれが気がかりなのだろう。
「陛下。タルカス軍務長官補佐とは状況が異なります。あの頃はまだ王国が圧倒的な優勢にあり、七連敗しても国体を
長い沈黙ののち、ランドル王は語り始めた。
「よかろう。カイ殿には“
この場にいる若い三人へすべての責任が押しつけられている状況だ。
しかしそれに
そして、その
ならば信じてみるに値すると判断されたのだろうか。
老王陛下にとって、今は信じることだけが唯一の希望だったともいえる。
軍務長官として、その希望を叶える覚悟が求められていた。
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