第21話 軍師・計算という魔法
男は手元にある分厚い差し替え式の
「馬の能力と
「なんだか異民族が用いる“魔法”のようですね」
不思議そうに分厚い
「はははっ、計算という名の“魔法”さ。戦争に勝つにも計算は必要だろう?」
その言葉を聞いて、なにかを得たような気がした。
それがなにかはまだわからないのだが、心に引っかかりを感じるのだ。
「なぜ戦争に計算が必要なんだ?」
「軍務長官ともあろうお方がこんな調子じゃ、帝国軍にも負けるわな」
男は笑っているんだか
「よろしいですかい。戦争っていうやつは兵の数だけで勝負が決まるわけじゃない。兵士たちの
先ほどの競馬の
「まぁ試しに
ガリウスとともに、
レースが始まってからも、この男の
「ただ兵の数だけで勝敗が決まるのなら、今回と先月の
天下の軍務長官に向かって軍事に関する持論を述べるだけでも、この男は底が知れない。
「ほれ、ひとレース目は当てたぞ。すぐに換金だ。ついて来な」
受付で
なんと
この成績なら競馬だけでも生活していけそうだ。
だからこの男は勝つために“計算”をして勝率を高めているのだろう。
「次のレースはすぐだ。
どうもこの男のペースに乗せられている。
だが
この男なりにいろいろな配慮をしてくれているのだろう。
「ここ二戦の結果を見れば、帝国のクレイドという新米大将はひじょうに能力が高いと考えられる。それに比べおふた方は力を合わせてやっとクレイドと渡りあえる程度だ」
ガリウスに目配せをして、
「だが、おふたりは兵士たちとの相性がよろしいようだから、
「本当ですか?」
ガリウスは驚きながら男を見ている。
確かに自分たちがクレイドと互角に渡りあえるとは思ってもみなかった。
しかもあのクレイドを
一週間、
どうあがいても自分たち二人ではクレイドを超えられないと自分たちを過小評価していたのだろうか。
「おい、このレースも勝ったぞ。さぁ換金、換金っと」
また勝ったんですか、と
「さぁ、次のレースだ。これは六倍の
「話の途中で悪いのだが、あなたの名前と職業を聞かせてくれないか」
「名はカイだ。ご
競馬に勝ち負けがある以上、それで生計を立てるのは
このカイという男は、よほど馬や人を見る目に
「カイ殿。お願いがあるのだが」
表情を改めた
「軍に入ってくれないか?」
あまりにも
ガリウスも
しかし本気だ。
「私たちを、王国軍を導いてほしい」
真顔でカイを
だが、カイからの返答はない。
目を
「よし、四番行け! そうだ! そのまま、そのまま……よ〜し、やった! これで六倍だ。今日はうまい酒が飲めるな。
「私はこのたび軍務長官となった。だが
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