第15話 死闘・再戦を期して
敗残の負傷兵を統率しながらガリウスとともに王国領への帰途を急ぐ。
それに先駆けて王都へ伝令を走らせた。
生存した将軍には、事の
伝令の発出後、負傷者・
全軍を
「結局、将軍で生き残ったのは
「後詰めでしたからね。兵たちの話では前衛の部隊は
ガリウスはしょげかえりながら答えた。
祖父同然のカートリンク軍務長官
しかも王国軍は勝利に万全を期して全将軍を出撃させた。
にもかかわらず、
クレイドに名乗りをあげたときに
おそらくは彼女が養父の
クレイド本隊にいたのだから、かなり優秀で人望の厚い指揮官なのだろう。
再戦の機会があればなんとしてでも倒さねばならない。
それが養われた者の、せめてもの役目である。
そんな思いでガリウスを見、
「それにしてもクレイドは
率直な感想だった。
「戦闘中に
「あれほど見事な部隊運用を見せるとは思いませんでした」
「果たしてそうかな……」
ガリウスは
後衛から
とても
そう考えたとき、戦場で聞こえたあの
そして、ある結論が導き出された。
「ひょっとすると、初めからわがほうを半包囲するつもりでいたのではなかろうか。戦端が開く前に運用の指示をあらかじめ各部隊へ伝えてあったのだとすれば。あの動きは納得できる」
「なるほど。もしあの戦術があらかじめ決められていたものだとしたら……。あの奇妙な
会話はここで途切れた。
なにしろ相手は
それに
どう戦えばよいものか、すぐには思い浮かばなかった。
これまでレイティス王国とボッサム帝国の
クレイド以外であっても同一兵種の小隊・中隊の構成までは同じ。
それを組み合わせて全軍の中にいくつかの軍団を構成するのが常だ。
王国将軍・帝国大隊長であれば騎兵も戦車も少数だが有している。
だから大隊長の誰が総大将つまり王国軍務長官や帝国大将に
だがクレイドは帝国軍三万を兵種ごとに構成して役割分担を明確にした。
クレイドが全軍を
考えを払うように頭を振ってガリウスに問いかけた。
「しかし、帝国軍がいつまた今回のように攻めてくるともしれない。そのときはお前が総指揮を執ることになろう。今から対策を立てておかなければ、今回のように
果たして
七将軍
だがふたりとも、己にそこまでの軍略はないだろうと感じてもいる。
あとは生き残った中隊長を将軍へ昇格させて、指揮能力の高い者がクレイドと対決すればよい。
だが、昨日中隊長だった者が明日軍務長官というわけにはいかない。
ものの順序でいえば、現在将軍職にある
「しかも動員できる兵の数も限られていますしね」
ガリウスの言うとおりだ。
王国軍は今回の戦いに正規兵全軍の四万を投入した。
それが終わってみれば数えて六千弱である。重傷者だけで八千を超えているのだ。
これでは王都に残した予備役三千の兵を加えても九千にも満たない。臨時に
仮にクレイドが来月も
仮に中隊長の何名かを将軍へ格上げしても、率いる兵が存在しない。
今回の
対して帝国軍は今回の
「三万対一万。三倍の兵を持つクレイドが相手となれば、これまでの戦い方を
重傷だがかろうじて生きている兵たちを運ぶ役目は
いずれも帝国兵であっても重傷者や瀕死の者であっても
「大将、次の
「その可能性が高いだろう。三倍の兵を
「それなら
「クレイドとの
「さすが察しがいい。大将の信条である“
「いや、その
「どうしてさ、大将」
「クレイドはすでに大将つまり戦場での帝国側の責任者となっている。どんなに個人の
「ということは、次の
「そうならないように、ナラージャも対策を考えてくれないか?」
「残念ながら、小官は目の前の指揮官を倒すしか興味がない。そこへ持ち込むまでの
「次の軍務長官はガリウス将軍に決まりだ。対策は次期
「私には三倍のクレイド大将に勝つ
「まぁ、あの
三人でさまざまなクレイドの
「三倍のクレイドに勝つ
「本当に大将は軍務長官にならないのか? 俺の中隊は大将の
「期待しても
「ガリウス将軍には失礼ですがね。私はミゲル大将、あなたこそが軍務長官にふわさしいと思うんだが」
「思うのは勝手だが、他人に
ナラージャはその言葉にしばし考え、「わかりました、
王城の入り口まで到着したので、全軍を停止させて城内の国王陛下へ再び伝令を走らせた。
負傷者・
またランドル国王陛下と面会してカートリンク軍務長官
返答の伝令を待ちながら、重苦しい雨の中で今後の行く末を案じた。
「しかし、あの混乱の中で僕たちの名前を
と軽口を叩いてきた。
「あのクレイドに認められたと思いたいな」
「どうしてかな?」
「相手が変に意識してくれれば、
ガリウスは苦笑いを返すばかりだ。
「大将なら、やってのけそうだから面白いんだが」
ナラージャも愛想よく答えてきた。
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