第一章 将軍昇格式典
第1話 式典・ふたりの孤児
士官学校の
士官学校を卒業する際に、卒業者のみが着用する特別なマントだ。
色づきを深める広い中庭を見やりながら物思いに
レイティス王国軍では五百名までを統率する中隊長、五十名までを従える小隊長は士官学校の生徒が直接任にあたる。
大隊を率いる将軍となるには士官学校を卒業しなければならないのだ。
卒業に
それを受けて演習で諸将軍と手合わせし、実戦で通用するかを軍務長官が
五千人の大隊を指揮する将軍は、平時なら軍務長官を含めて十三名で構成されている。
欠員が出た時点で補充する人数だけ卒業して将軍に昇格できるのだ。
ただ将軍位の欠員に昇格者の従える兵数が
士官学校に長年在籍していても昇格できないまま戦死か
士官学校に通った経歴があるだけで優先して官職へ
後ろ盾を持たない弱小貴族はこぞってわが子を通わせた。
入学試験を通過できなかった者、学費が払えない者は戦時に
たとえ兵卒であっても戦果がとくに
立身出世の
今月軍務長官職に復帰したカートリンク将軍に養われたのち、十五歳で士官学校へ入学した。
今年二十四歳で卒業し将軍の列に加わる段取りとなっている。
将軍昇格は四十歳過ぎが多いため異例の若さといえた。
そのぶん諸将軍の視線は氷河から
将軍の列に加わった日から実戦で大隊五千人の指揮を
これまでは率いる中隊の生存を優先し、倒す敵も最小限にしてきた。
これからは戦局全般の結果つまり帝国軍の戦死者数を問われるだろう。
昇格するための
わが軍の“切り
そんな中で前任の軍務長官であるアマム将軍と、
かといって実戦で憎んでもない人を大量に殺すのには、中隊長のときでさえ心を
昇格有望と目されていた五十代の中隊長は「襲われたら身を守るのと同じで、悩むだけ時間のムダ」と
だがその中隊長は先の
身寄りがなかったので、王都といえど治安のよろしくない裏街で悪さをして生き
いつものように
自分たちの
将軍の
カートリンク将軍からは剣の
将軍が事あるごとに伝えてきた命の
大人へと成長し異例の出世で中隊長となっても、人の命を無条件に奪うことには抵抗を感じ続けている。
それが、今や大隊五千人の命を預かる将軍になろうとしていた。
「ミゲル、やはりここにいたね」
少し長めに切り
投げた視線がガリウスの肩を捉える。
「今は
俺の返答に赤いマントを
二十八歳であるが俺と同じく
だが二十一年前、七歳のときに国境紛争で異民族に
そこで繰り広げられた無差別の大
家族すべてが彼を隠し部屋へ
そのさまを隠し扉の
声をあげて見つけられでもしたら。彼をかばった家族の遺志は
翌夜明け前に王国軍は
事が済み兵を率いていたカートリンク将軍が生存者の捜索を命じる。
その際、
住民一万五千余人のうち生き残ったのは七人のみ。
王国軍に
身寄りもなくひとりで生きていくのも難しいと判断したカートリンク将軍は彼の身を受けた。
心のこもった老将の庇護と四年目に俺が加わっての共同生活。
ガリウスより若く、後から入っていったが、声の出せない彼の世話を自ら買って出た。
始めは声を出せないことへの興味半分だったのだが、接しているうちに守るべき対象と認識するようになる。
そして彼が十二歳のときにようやく声を取り戻した。
そのためガリウスは俺を高く評価しており、つねに背後から
十五歳で先に士官学校へ入り、本年に卒業する英才へと成長したのだ。
この年長者が
卒業を鼻にかけないのがガリウスの美徳である。
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