殉教

僕は嫌な事がある度に煙草を吸う、声にならない思いを吐き出す為に。昇っていく祈りにも似たその煙は頼りなく中空をとまどいながらしばらく、ここがどこなのか思案しているように留まり沈黙の後どこかへ行ってしまった。


残された僕の身体は重たく沈み、それでもやっぱりこれで良かったのだと思う。


喧騒は消えて二度とは戻って来ないのを知っていたから。見ないようにしていただけで確かにその事実は常に誰の前にも横たわっている。


日々朽ちていく為だけに生きて来た罪とその償い、赦される事があるのならただ平穏を僕は願った。


そして思い出だけを、そして思い出だけを

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

逃亡 短編集 神楽 羊 @NyasoNostalgic

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ