贖罪
「あんたはいつもそうだ。俺が何度助けてやると言ってもその薄暗い場所へすぐ潜りこんじまう。地獄の方がまだ陽気だぜ。」
悪魔は憐れんだ素振りを見せてこちらを見た。
「分かってるよ、お前には感謝してる。だけどさ、俺の贖罪は決して終わらないと言ったろ?」
悪魔は溜息を一つついた。
「"贖罪"ねえ。あんたはそれで良いかもしれないがね、希望と絶望の温度差を喰ってる我々からしたらもうちょっと楽しくやってもらわないと困るんだよなあ。願い事叶えてやったろ?その女の子の魂の居場所を知りたいって。ギブ&テイクで行こうぜ?あの子はちゃんと天国へ行ってるよ。地獄には居なかったから間違いない、この私のお墨付きだ。」
そうすると悪魔は僕の肩を優しく叩いた。
「確かにお前はあの女の子を死なせてしまった。でもな、あれは不幸な事故だったんだ。お前のせいじゃない、そうだろ?それに魂ってのは廻るもんなんだよ。そういうものなの、だから気に病む必要はねえよ。私が存在してるってのがその証明になりはしないかね?」
どこか、人間臭いこの悪魔を僕は嫌いになれなかった。
涙が出た。
溢れ出したと自覚したらもう止まらなかった。
「償いたかったんだ…もし、彼女が生きていたなら一生かけて謝り続けたかったんだ。でもそれは駄目だと思った。僕の顔を見る度、連絡を取る度、何度も何度も彼女を傷つけると思ったから。お前が現れた時、願いを叶えてくれるって言ったね?だからあの子を治して欲しいと僕は言った。…亡くなっていた事に少しホッとした自分が居たんだ、だから…もうここには居られない。」
堰を切ったように言葉が溢れ出した。そして嗚咽を漏らす。
「仕方がなかったんだよ、これ以上は堂々巡りだ。諦めなさい、それがあんたの為だ。」
悪魔は諭すように言った。
「分かった。」
僕はそう言うと魂を悪魔に渡した。
「毎度あり、良い旅を。」
そう言うと悪魔は魂を僕から取り上げた。
─────その女の子はずっと元気に暮らしていた。
これで良かったのだ、と僕は思った。
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