『5』
「夏休み、空いてない?」
「ごめん、忙しいんだよねー……」
親友に聞けば、そんな言葉が返ってきた。
当たり前だ、部活も塾も休みが少ないらしいし。
だけど唯一私が頼れたかもしれなかった人だ。
もう無理だけど。
三者面談が近いから腕もどうしようもない。
とにかく抑え込んだ。
何も考えないようにした。
山盛りの課題を前に絶望しつつ、周りを見渡す。
楽しそうだなあ。
私をこんなとこに堕としといて。
なんでそんなに笑っていられるんだろう。
頭が痛い。
人のせいにしてばっかりだって自覚はある。
だけどつらいの。
助けてほしくて、気づいてほしくて。
そんな思い、届かないって知ってるから。
机に突っ伏して何も聞こえないように、見えないようにする。
だけどあいつの声は否応なく耳に入ってきた。
ちょっと癖があって、低いけど心地よくて、笑った声は最高にかわいいって、思ってたのに。
私以外にその声は発せられてる。
それだけで、嫉妬で狂いそう。
最初は好きだった声も、罵詈雑言ばっかりで苦しくなってくだけだった。
上手くゲームができなくて、つまらないって言われて、仕方ないじゃんさ。
そりゃもうちょっと明るくてかわいければよかったのかもしれないけど。
気が付けばそんなことばかり考えていた。
その日は簡単に言えば、最悪だった。
給食着を忘れたり、オープンスクールがあるっていうのに上履きを学校に忘れたり、テストの点がひどかったり……。
帰りには偶然あいつと出くわして心がざわついた。
吹っ切れたはずだったのに。
気が付けば気持ちは戻ってきて、ずっと苦しいんだ。
夏休みが始まってから、ずっと寂しくて仕方ない。
課題も手につかない。
どうしようもないこの気持ちの行き場はなかった。
そうだ。ネットに全部吐き出しちゃえばいい。
私はパソコンに向き合って必死で指を動かした。
文字数が増えるたびに楽になっていく気がした。
誰が見るわけでもない小説に感情を込めて語りかけた。
お願いします、私の気持ちが届いていますように。
そう願いながら一文字一文字打った。
届いているかは私には分からない。
だけれど未来を見て書いている私には、届いていると思い込むしかなかった。
アニメを見ながらパソコンとにらめっこ。
納得のいく文章が書けなくて、何度も書き直した。
予約投稿を幾つもためて、毎日投稿になるようにした。
みんながこの文章を読むころには私の考えも変わっているんだろうと思いつつ予約する。
とにかく、楽になれる上に文才も手に入る……かもしれない。
そんなのやるしかない。続けるしかないでしょう。
パソコンを閉じて、ゆっくりと考える。
私が認めてもらえるようになるのはいつ頃だろう。
共感性人生 天草ナツキ @amakusanatuki
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