第13話

そんなこんなで、一同はアインの街にほど近い、ルルーシュの森へと足を運んだ。


「良い?制限時間内に魔物をより多く倒した方の勝ちよ。」

「はあ…。」


ちょうどこの森の魔物を討伐してくれという依頼があり、勝敗をつけるにはうってつけだとイルが勝手に受注したのだ。私は勿論、フォナドもイルの連れである青年も呆れを隠せない。まあ、隠そうとしていないとも言えるが。


「スタートの合図はこいつが務めるわ。不正がないように、それぞれ審判役をつける。」

「こいつ呼ばわりかよ。ったく…。二人とも、準備はいいか?」


青年の言葉に私とイルは頷く。


「それでは、はじめ!」


掛け声と同時に、四つの影はそれぞれ反対方向へと駆け出した。私と青年は西、イルとフォナドは東。この組み合わせになったのは、知り合い同士にして万が一にでも不正を働かないようにとの配慮だ。全て、彼女の提案だった。


(やってる事は無茶苦茶だけど、意外としっかりしてる所もあるのね…。)


とてつもなく失礼な事を思いながら、私は魔物を探す。やがて、頭上から羽音が聞こえ始めた。見上げると、黄色いカブトムシのような魔物が三体、私の真上を旋回している。


「取り囲め!アクアプリズン!」


現れた水球が、魔物を閉じ込める。そのまま磁石のように中心に吸引され、中の獲物が抜け出す事は困難。そういう術式だ。


「貫け!アイスランス!」


氷の槍がそのまま魔物を串刺しにする。為す術もなく絶命したそれらは、水球が消えたと同時に地面へと急降下。ドサッと鈍い音がし、砂塵が勢いよく舞った。


「すげぇ…。」


青年が口をポカンと開きながら感嘆する。そこまで驚かれるレベルなのだろうか。記憶がない為か、そこら辺の感覚がイマイチ掴めない。


「あ、あっちにも!」


新たな魔物の気配を察知し、向き直る。今度は大きなミミズみたいな見た目だ。正直、気持ち悪い。


「ウォータープレス!」

「ピギッ!?」


問答無用で水圧で押し潰す。なんか、プチッと嫌な音がした。聞こえなかったフリをしよう。

そんな現実逃避をしつつ、私はどんどん魔物を仕留めていった。リコール村で戦った二頭獣より遥かに弱かったのもあり、難なく戦果を上げられる。


「おいおい、嘘だろ…。」


青年が後ろでそう呟いた事など露知らず、二十二体目の魔物を討伐したところでタイムウォッチが鳴り響く。


「時間だ。」

「わかりました。戻りましょうか。」


…何故彼は若干引き気味なのだろうか。首を傾げつつも、スタート地点へと戻るため踵を返した。

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記憶喪失ですが、魔術師になりました! 桜音羽 詩葉 @0_utaha_0

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