第12話
「ではでは、早速ですがシノンさんにはお仕事を…。」
「あ、待ってください。実は、俺達パーティを組もうと思ってるんです。なので、手続きをお願いします。」
受付に戻り、話を進めようとするミーシャを制し、要件を伝えるフォナド。その言葉を聞いて、彼女はきょとんと目を瞬かせた。これが私が冒険者登録する為に彼が出した条件だった。
「え…フォナドさん、今までパーティ参加要請が来ても全て断ってたじゃないですか。一体全体どうしたんですか?」
「…そうなの?」
ミーシャから得た新事実に、思わずフォナドに問いかける。彼はバツが悪そうに肩を竦め、頭を搔く。
「まあ…こないだリコール村を襲った魔物の事もありますし、新人である彼女一人で行動させるのは危険だと思いまして。それに、今まで要請を出してた冒険者達は皆熟練者だったでしょう?」
「それはそうですけど…それでもシノンさんよりは低ランクでしたよ?…まあ、これ以上の余計な詮索はしないでおきましょう。それでは、こちらのパーティ登録申請書に必要事項を…。」
「ちょーーっと待ったあ!」
突如後ろから飛んできた制止の声に飛び上がる。今度はなんだ。
「そこのあなた!見た所新人よね?彼はAランク冒険者なのよ?なんで新人がそんな人とパーティを組もうとしてるのかしら?」
やけに胸を強調してくるローブを纏った、如何にも魔術師といった体の女性が憤慨しながら近づいてくる。私は目を白黒させながら後ずさりするしか出来ない。
「おいイル、やめとけって。」
「うるさい!私は納得いかないの!」
傍らに立つ青年の呼び掛けにも応じず、イルと呼ばれた女性はこちらにずんずんと近寄ってくる。
「なんで、私達の要請には応じてくれないのにこの子とはパーティを組むの!?経験も実力もない新人と行動するより、年数を重ねてる私達と仕事をした方が絶対に効率的じゃない!」
かつてない程ズバズバと物申す女性に物怖じしながらも、内心穏やかではなかった。確かに彼女の言う通りだが、何故そこまで言われないといけないのか。
ムスッとしていると、彼女の視線が私の杖へと移る。
「…って、それ氷霜の杖じゃない!?あのオヤジ、何度言っても私には譲ってくれなかったのに!」
「いやそれは当然だろ…。お前Dランクじゃん。」
青年の鋭いツッコミに完全スルーを決め込むイル。図太い。というか、もしかしなくてもこの人がもう一人の魔術師なのか。
「あのー、これ以上騒ぐなら営業妨害で摘み出しますよぉ?」
見兼ねたミーシャが止めに入る。しかし、それでもイルは引き下がらない。
「それなら、公平に私と勝負しなさい!」
「ええ…。」
かくして、二人の対決は幕を開けるのだった。
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