第11話

案内された場所は、多くの冒険者で溢れかえっていた。


「よ、受付の嬢ちゃん!今日はどうしたんだ?」

「親方さん!えっと、新人さんの武器を見繕って欲しいんです!この子なんですけど…。」


ほお?っとこちらを見つめる親方。真剣な眼差しからは、この仕事に対する誇りが感じられた。


「お前、名前と職は?」

「シノンです。Bランク魔術師として認めてもらいました。」

「Bランク?こりゃまたえらく腕がたつらしいな。」

「いえ、そんなことは…。」

「はは、自信持ちなって。言っとくけど、この支部にBランクはシノンを入れて三人しかいないんだよ?」


フォナドが私の肩をポンポンと叩きながら優しく微笑む。というか、三人しかいない…?そこまで希少なのだろうか。いや、戦闘員十六名の中で考えるなら、二割は同じランク帯なのだ。それならばそこまで少なくはない…のか?


「嬢ちゃんの属性はなんだい?」

「あ、えっと…水と氷が得意です。」


この世界には、基本四属性の火、水、風、土と、派生四属性の雷、氷、音、木という概念がある。稀にこの枠に当てはまらない魔法を扱う存在も居るらしいが、それはイレギュラーだ。そして、火を消す為には水、木を燃やすには火というように自然の摂理に則った得手不得手はあるが、基本的に弱点はないと思って良い。出力によっては火で水を蒸発させたりなんて事もありうるからだ。因みにこの知識もフォナドに教わった。

それはともかく、厳密に言えば私は自分の魔力属性を知らない。だが、頭に浮かぶ術式が水と氷なので、多分系統的には間違ってないだろう。


「じゃあ、こんなのはどうだ?木と氷で出来てるこれは氷霜ひょうそうの杖って言ってな、特殊な魔石を核としてモチーフに埋め込んでるから決して溶けない。更に、僅かに魔力を込めるとちょっとした傷なら治せる回復効果と水系統属性威力強化も付与されてる。」

「え!?そ、そんなに強い杖を頂いても良いんですか…?」


慌てて質問すると、親方はニカッと笑い、大きく頷いた。


「ああ、こいつはBランク以上の冒険者にしか渡しちゃいけねぇっていう規制がかかってんだが、このギルドにはお前さんしか対象者がいないんだ。なんせ唯一の魔術師はDランクだからな。」


なるほど、そういう事か。それならば有難く使わせてもらおう。まだ若干戸惑いは抜けないものの、両手で恭しく杖を賜る。


「良かったねシノン。」

「…うん!」


私は氷霜の杖を大事に抱えながら、フォナドに笑いかけた。彼の頬が微妙に赤くなっている気がするが、大丈夫だろうか?

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