三回目の正直
黒心
三回目の正直
ある女子学生は濃い涙を流した。
天井のない世界で、銀河の消えた明る世界を見下ろした。黒い壁面に散りばめられた蛍光色に立ち尽くす。
後悔の滲んだ制服を両手で握りしめた。
「もう、むりだよ……」
耳元に元凶を当てて悲壮を漂わせ言った。電話からは気を揉む声が出てくるが、彼女の耳は初めから慈愛に汚染された慰めなど求めていなかった。最期をかざる場所を見定めて、星のない暗い夜を選んだ。
"今どこにいる?!"
電話を切った。電源も切った。
彼がこの場所に気付いたときには餞別を送ろう。きっと諦めてくれる。
「ごめんね」
なぜ謝ったのだろう。見つからない場所で、静かに消えたいだけなのに……もうムチに打たれるには嫌だ。
この日はむんむんと熱のこもった空気がじめっと漂った。深夜を迎える建物たちはそろそろ明かりを消していく。走る電車に黒い影は見えない。あるいは誰もいなくなるのを待っている。
いつもの癖で持ってきた腕時計を手に持つ。決行の時間は過ぎていた。
「はぁ」
ため息をつく。また、またやっちゃった。足りないものが多すぎて、数えることはあきらめて、ロマンチックな心をずっと持っていたいから、どうでもいいって決めたのに。
「邪魔しないでよ!」
胸に向かって叫んだ。命運を運ぶ足は動いてくれない。どうして。
コンクリートの端まで行って腕時計を投げ捨てる。青い決意は揺れた。足を踏み外せば済む話。悲劇の数字に化けるだけなのに。
決めたのに、Aに誓ったはずだった。
後ろから突然つかまれた。弱弱しい彼の右腕だ。
「待ってくれ」
私はにっこり微笑んだ。どうやら彼にも伝わったらしく、手を放してくれた。代わりに、体を放してもらえなかった。
"一人はさみしい"
遠く向こうのその彼方、始まりのチャイムが鳴った。建物の光は消え、外灯すらともらない闇が来た。銀河は姿を現し、月が陰より顔を出す。豪華絢爛、シャンデリアは世界を包み込んだ。
二人は餞別を送る。
ちょうどその時、最終電車が明かりを消した。
三回目の正直 黒心 @seishei
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