第11話 終焉

 俺は『支払い』の意味を知って震えた。

 あれは石原のアナグラムだったんだ。

 石原は俺と同じく倶利伽羅からパワハラを受けていた。オムツ交換や食事介助から遅いって理由で賃金を下げられ、恋人である肥前史恵を倶利伽羅に奪われた。史恵の恋の順番は西野→石原→倶利伽羅だ。

 香取署の会議室に天童や長崎、鈴江を集めた。

 

 石原は妖怪退治を副業でしていた。介護の仕事はキツいわりに給料が安い。妖怪は1匹倒すごとに5万もらえる。石原は二口女を狙っていた。  

 魔法を覚えるには5人殺さないといけない。

 あの婆さん、倶利伽羅、倶利伽羅の愛人、野田、チンピラの5人。

 婆さん・倶利伽羅・倶利伽羅の愛人は私怨から殺したが、他の2人は依頼されたから殺した。

 あの婆さんは本当、ストレスが溜まった。息子は弁護士らしく、『あんた、私を殺そうとしてるだろ?息子に言ったらあんたなんかおしまいだよ』と脅された。

 野田を殺してくれとネットで依頼してきたのは堀って奴だった。堀は野田からパワハラを受けていたらしく、500万を支払ってくれた。

 肥前食品を逃げるように去り、一念発起して伊能忠敬記念館で学芸員として働き出した。野田は堀が辞めてからも恐喝などをして来た。あの記念館で取り引きするようにおびき寄せ、深夜石原が首を絞めて殺し、首をノコギリで切り落とした。 

 根来って刑事も哀れだな?

 彼の母親は振り込め詐欺に遭って首吊り自殺を図ってる。命は取り留めたが一生寝たきりだ。

 母親を嵌めたのは辺見だった。

 根来も500万を支払ってくれた。

 石原はあっという間に金持ちになった。

 

 石原は洋館にやって来た。日は暮れて、空は紫色だ。佐原三菱館は千葉県香取市佐原イにある歴史的建造物。1914年(大正3年)に建てられた煉瓦造の旧三菱銀行佐原支店旧本館の建物。千葉県の有形文化財に指定されている。

 佐原三菱館は、明治の洋風煉瓦造建築の様式を受け継いだもので、外観はルネサンス建築様式、屋根は木骨銅板葺き、正面右にドームを配している。 内部は吹き抜けで、2階の周囲に回廊がある。窓や出入り口には上部巻上げ式のよろい戸、鉄製のサッシが残っている。 建築当時の図面にはこのほか、カウンター奥の壁中央に大理石張りの暖炉、南東隅には二階への螺旋階段があった。 佐原の町並みの中では、その特徴的外観からシンボル的な存在の建物である。


 根来の背中が見えた。彼はまだ、石原の気配に気づいていない。石原はサプレッサーを装着したハンドガンを構えた。

 発射薬が燃焼して発生した高圧のガスが弾丸と共に銃口から放出される際、甲高い破裂音が生じる(マズルブラスト)。サプレッサーは、その内部にバッフルやワイプで区切られた多数の空気室を設け、ガスを空気室内に拡散させ、徐々に冷却しつつ圧力を下げてから外部に放出することで、これを軽減する。銃声や発砲炎の抑制は、射手の聴覚・視覚の保護という観点からも重視され、ヨーロッパ諸国では民生用の猟銃やスポーツライフルに取り付けられることも多い。


 しばしば誤解されるが、サプレッサーによる消音効果は「銃声を完全に消す」ほどのものではない。音速以上で弾丸が飛ぶと衝撃波によって大きな音が発生するが、サプレッサーのみでこれを抑制することは困難である。例えば、一般的な5.56mm仕様のAR-15ライフル用サプレッサーの消音効果は30-35dB程度と言われており、165-170dB程度の銃声を135dB程度まで抑制できる。これは手持ち式削岩機の作動音と同程度で、アメリカの労働安全衛生局(OSHA)が苦痛・恒久的な聴覚障害を引き起こす恐れがある騒音の基準として定めた140dBをわずかに下回る。亜音速弾を用いると衝撃波による音を抑制することができるが、それでも弾丸の風切り音は残る。


 熱を持つと消音効果に悪影響が出るため、水や専用冷却材を入れると消音効果が高まるものもある。


 一般的に、サプレッサーを取り付けるとガスが十分に外部へと放出されず、銃身内圧が通常よりも高くなる。自動銃のうち、規制子などガス圧を調整する構造を備えないものは、必要以上のガスが流入し、動作不良を引き起こすことがある。火薬の燃えカスなども銃内部に留まりやすくなり、頻繁な清掃が必要になる。


 石原は心臓が口から飛び出そうになった。

 そのとき、1人の男が近づいて来た。

 男の正体は西野なのだが、石原は西野と面識がない。

 石原はトリガーを絞った。

 銃声が響き、根来の白いワイシャツが血で真っ赤に染まった。

 西野が悲鳴を上げてうずくまる。

「もうやめろ!」

 声がした方を振り返ると安藤が立っていた。

 鈴江や天童、沼津も一緒だった。

 新たな客が現れた。二口女だった。

「マーベルの映画みたいだ」

 鈴江は呑気なことを言った。

 天童や沼津はリボルバー拳銃をホルスターから抜き、怪物を一斉射撃したが全く効果がないようだった。

「このままじゃ殺られるぞ!」

 天童の顔が真っ青になった。弾切れだ。

 そのとき、石原の手から炎が放たれた。

「パイロキネシス!?」

 沼津が叫んだ。

 火の玉攻撃を浴びた二口女は真っ黒焦げになり、絶命した。

 一難去ってまた一難、今度は巨大な鳥が雲間から現れた。

 石原は西野を生贄にするべくハンドガンのトリガーを引いた。ドンッ!💥

 撃たれたのは安藤だった。

「ウッ、ウグッ……」

 安藤は腹を押さえて呻いた。深紅の血が滴り落ちた。

 怪鳥は安藤たちを襲うことなく彼方へ消えた。

「卓也ッ!!」

 鈴江が叫んだ。

 次の瞬間、石原の背中から血飛沫が上がった。

 撃ったのは虫の息の根来だった。

「救急車!救急車を呼べ!!」

 鈴江は腹の底から叫んだ。

 

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香取殺人事件 鷹山トシキ @1982

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