取り狩り屋

Yasu\堂廻上山勝縁

 取り狩り屋

時は幕末の手前の頃だった。


一人の男は刀を持ち、九州各地を飛び回っていた。


追放の意味を知るために、、、、、




「聞いたか?また、人殺しだそうだ。家族一家ともにだそうだ。」


「聞いたわ。これで5人目よね?、、、、、悔しいねえ、、、」


(・・・・心当たりはあるんだがなぁ、、、、怖いんだよねえ、、、殺されるのが、、)


「そうだよなぁ、、、、」


「ええ、かわいそうよねえ、、、、」


「福岡藩は何をやってるんだかねぇ?」






ざわざわと人々は騒いでいる。


鬱陶しい。


心当たりがあるなら言ってしまえばいいのに。


反応で分かる。




「すみません。その話、あそこの鰻屋で詳しく教えてはもらえませんか?」


________




「おい、次作。さっさと借金返しやがれ。お前には百両借金があるんだよ。」


次作「んなもんおいらは知らねえだ!甥っ子が勝手にいっただけだ!百両も借金なんかあるわけねえろ!」


「うるせぇ!」




次作という青年は殴られていた。彼はただの百姓だ。


彼には借金がある。


とはいえ、その金は決して彼が背負ったものではなかった。




「俺に指図すんのかぁ?ああん?この九州地方の三本の指に入る借金取り屋であるこの鹿喰組に逆らうのか?」


次作「あああ!逆らってやるよ!」


「・・・・じゃあ死ね!」


「あぶ!」




殴るけるの暴行が始まる。


血反吐が辺り一面に広がる。


周りの空気は鉄のようなにおいが飛んでいく。




その時である。




「あ?なんだあいつ。」




目の前に現れたのは、左足がない武士であった。




「おい!おい!見ろよあれ!左足がないぜあいつ!棒みたいなのが義足かなぁ?」


「マジかよ!笑えるぜ!無様で今にも死にそうなくらいひょろひょろだなぁ!」






「・・・・貴様らは、借金取りにもかかわらず、それを超えて殺人を犯すのか?町のやつらはひどくおびえている。お前らが裏で支配していて、文句を言うのなら殺す、、、、なんたることだ。本当にそれが借金取りのやることか?」




「うるせえな!」


「やっちまいましょうぜ!親分!」


「我ら鹿喰組をなめんなよ!お前らやってしまえ!」


「「合点!」」




掛け声と同時に、三十人ほどの人間が襲い掛かる。




次作「危ない!」




・・・・反吐が出る。


(お前はどうしてそんなことをするんだ!)


(我らは藩主の一族であるぞ!これくらい許されている!)


(それが、お前らのやることなのか!)


(これ以上言うなら、勘当だぞ?)




・・・こいつらも、あの糞親父と同じか、、、


_____


次作「・・・・」(どうなったんだ?死んじゃったのか?俺のために、、、俺なんかのために、、、)




「ぎゃああああ!」


次作「?」(え?)




次作が目を開けた瞬間、目の前に広がっていたのは、散乱する屍だった。




「お前たちは、、、力をつけすぎた、、、借金取りはこんなにも多くの人を殺しはしない、民衆を支配もしない、、、、度が過ぎている。」


「ゆ、許してくれ!命だけは、、、」




「ならば聞こう。西成重宗を知っているか?」


「そんな奴は知らない!知らない!」




彼は笑った。




「そうか、、、、ならばあの世への土産に聞いておけ、、、、わが名は島津斉興のいとこ、元島津家、島津縁和。」




次作「!」(薩摩藩主現当主、斉興さまのいとこ、、、縁和?そういえば数年前にあらぬ罪でお家を追放された島津家のご親戚様がいると、、、まさかこのお方様が、、、)


縁和「御免。」




次の瞬間、男の首は飛んだ。




縁和「鹿喰組は終わったな、、、、収穫無し、、、やりすぎれば、こんなことになってしまうのだ、、、それがこの世の定めだ、、、」




縁和は天を仰ぐ、刀をしまい、すぐ支度を整え歩き始める。




次作「・・・あのっ!助けてくれてありがとうございました!」


縁和「礼などいらない、、、、困っているやつがいたからほっとけなかったのと、、、ただ単純に殺したいなと思ったから殺した。」




次作は背筋がぞくっとした。




縁和「私は歩まなければならない、自らを追放し、左足を奪った西成を殺すために、、、情報が必要なのだ、、、じゃあな、、、」




次作「・・・・あ、あのっ!」




精一杯の声で彼は叫ぶ。




次作「お体に気を付けて!自分を大事にしてください!後、お役人様に捕まらないように!」


縁和「・・・ありがとう。」






縁和はスタスタと去っていった。


近くの川で洗濯をし、刀を洗い、証拠を隠滅する。


縁和「・・・あの男も殺しておくべきだったな、、、名前を聞かれてしまっていた、、、」


_______


大隅


「まだ、縁和を殺せないのか?西成。」


西成「申し訳ございませぬ。左足を斬ってそのままにすれば出血多量で死ぬだろうと思ってましたから、、、、」


「いいから早くあの親不孝息子を殺せ。わが家に不幸が下る前に、、、」


西成「ははっ!」




「あいつは、、、追放せずに殺すべきだったな、、、、」


早く斬ってやらねばな、なあ、縁和、、、、


______




縁和「次は、中津の宇佐組の所にでも行くか、、、取り立て屋からの情報は有益だ。行こう。復讐のために、、、」





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