第6話 作戦
私が異能者になって獲たのは極限の集中力だった。
それだけ。
圧倒的な力でもなければ、優れた五感を駆使した驚異的な敵索能力でもない。
力を技術と集中力で補なってナイフを振るい、二丁拳銃を操りゾンビを殺す。
アルバート自警団の中で最もバランスのとれた戦闘スタイルとなった。
「カナデちゃん、いいんだな?」
「はい」
「わかった」
アルバートはそうして作戦会議を始めた。
「異曝者討伐作戦会議を始める」
お兄ちゃんを殺す為の会議。
ゾンビたちよりも圧倒的な脅威である異曝者。
それは私のお兄ちゃんであっても関係ない。
「現在、異曝者はポイントF32から2時間ほど動いていない」
異曝者は理性を失った凶暴な人間と変わらない。
人を超えた力を持っているけど、肉は喰べるし眠る。
それもゾンビとはまた違う点らしい。
「異曝者は欲望のままに食い散らかす事が非常に多い。その為、血の匂いに釣られて周りをゾンビに囲まれている事もある」
理性を失ったお兄ちゃんの身体能力なら、ゾンビたちを簡単に殲滅する事もできるだろうし、逃げるのもおそらく簡単だ。
「アルバート、ミサイルは使えないの?ここは基地なんだし」
お兄ちゃんには発信機も着いてるし、周りに群がっているゾンビたちも一掃できる。
「場合によっては国がこの基地にミサイルを撃ち込む可能性がある」
「基地として機能していないはずの場所からミサイルが飛べば国は困るもの」
花蓮が頭を悩ませながら答えた。
そうしたいのは山々なのだろう。
ゾンビたちと接触する機会も無く安全に高確率で一掃できるけど、国がそれを知って助けに来てくれるなんて思っていないからだろう。
そもそも民間人が基地に逃げ込んだとして、ミサイルを撃つ事ができる時点で国からすれば異常と判断しているのかもしれない。
敵国が基地を利用して日本に攻撃を仕掛けることが容易になるからかもしれない。
敵国はおろか本国すら信用できない。
それが今の日本だ。
「では作戦を告げる……」
☆☆☆
一際高いビルにいるお兄ちゃん。
狙撃できるポイントは無く、ビルの周りにはゾンビが群がっているのが夜でもよくわかる。
あれだけ高い場所にも関わらず集まっているのは、上で喰事をしているか、血を滴らせたまま屋上へ登ったのだろう。
ますますお兄ちゃんが人ではなくなってしまった。
『ポイントF31アルバート』
iイルミネーターという総合情報処理端末を通してアルバートからの通達だった。
サングラスみたいなメガネとヘッドセットからは各自の位置や通信が聞こえる。
地図データがレンズに映っていて、まるでFPSゲームでもしているような感覚になる。
『ポイントF30健人、待機』
『ポイントE31レイナ、待機』
「『ポイントE30花蓮・奏、待機』」
それぞれがグレネードランチャーを持って所定の位置に待機していた。
さらにグレネード爆弾も持てるだけ持ち込み、周りのゾンビを片付ける。
『作戦開始』
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