第5話 覚醒
フェンスに群がっているゾンビたちを後ろから見ていた。
セーラー服に黒髪ロングの女子高生が両脇に拳銃ぶら下げて、腰にナイフを2本とグレネード爆弾。
装備はそれだけ。
拳銃になんとなくレーザーサイトなんて付けてみたけど、どれだけ意味があるのか。
私は深呼吸して、拳銃を引き抜いた。
気付いたゾンビがのそりのそりと歩いてくる。
「私の為に死んで」
ゾンビの頭を次々に撃ち抜いていく。
先程まで酷い頭痛だったのに、今ならなんでもできる、気がする。
極限の集中力。
倒れたゾンビに足を引っ掛けれて後ろのゾンビたちもコケていく。
グレネード爆弾を倒れたゾンビたちに投げ込んで数を間引く。
「上から見た時より、数が多い!」
ゾンビたちが爆発で距離感がまばらになった為、私はすかさずナイフを逆手に持って突っ込んだ。
俊敏性重視にしたから残弾数は限られてる。
「はああぁぁぁ!」
腐りかけたゾンビたちの首を削ぎ落としていく。
力任せじゃ無理だけど、使い方は包丁と同じ!
距離をとって一対一をひたすら繰り返す。
単調で動きの遅いゾンビたちなら、囲まれないかぎりなんとかなる。
感覚でどう動けばいいのか、なんとなくわかる。
腕を振り回したゾンビをスレスレで避けて後頭部にナイフを突き刺し、背中を蹴りながら引き抜いてそのまま次のゾンビの首を切り落とす。
「まずい」
再びゾンビたちがダマになり始めた。
グレネードを転がして距離をとって拳銃に持ち替えて間引く。
「グレネードが切れた」
頼りは二丁の拳銃とナイフ2本。
「奏ちゃん!」
花蓮が叫ぶと、犬が猛スピードで走ってきた、
可愛げは欠片もなく、片目が潰れて口は裂けている。
「速い!」
銃弾を2発外して、私はナイフを構えて真っ向から向かった。
飛び込んできた犬ゾンビが私を喰らおうと大きく口を開いた。
私は右手に持った逆手ナイフで犬ゾンビの口を引き裂いた。
勢いよく走ってきた犬ゾンビは魚の開きのように綺麗におろされた。
「しまっ!」
背後から迫っていたゾンビに気付かず、喰われそうになった私を守ったのはレイナだった。
「ゴウカク、よ」
「やるじゃねぇか!奏!」
「奏ちゃん、ナイスファイトよ!」
「あとは任せろ」
そうして一瞬でゾンビたちは一掃された。
それを見た私は、極度の疲労で倒れてしまった。
☆☆☆
ベットの上で目が覚めた。
疲労感はまだ凄いけど、久しぶりにぐっすり眠った気がした。
「カナデ、おはよー」
「レイナ……」
眠る私の横に居てくれたのだろう。
優しい笑顔を向けてくれた。
「ごめんね。カナデ」
寝起きの私に抱き着いてきた。
「ううん。みんなを護るための事だし」
感染している可能性はないとは言えない新入りと、仲間の命では仕方ない事。
学校生活だったら、関係にヒビのひとつも入ったりとかあっただろう。
だけど、この世界では誰もが合理的に考えないと生きていけない。
助ける命を選ばなければいけない。
「カナデ、怒ってる?」
「怒ってないよ」
レイナの、みんなに対しての気持ちを知れたから、私は大丈夫。
「怒ってはないけど、お返し」
「ああっ!カナデ!そこはダメェ〜!」
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