第4話 異変
「奏ちゃん!起きて!」
「……ん……?」
いつの間にか寝ていた。
頭が割れそうなくらいに痛い。
「ゾンビが
「それ……5人で対処できる、の?」
「するしかないのよ!武器なら腐るほどあるわ。まだこの拠点を放棄するにはもったいないの!いいから手伝って!」
そうして急いで戦場へ向かった。
頑丈そうな鉄網で囲まれた基地を一望できる高台にみんなは集まっていた。
「カナデちゃん、体調は大丈夫か?」
「頭が絶望的に痛い」
そういうとレイナが私に拳銃を向けた。
「レイナ、待て。傷が無い事はお前と花蓮が見たはずだろ?」
「それ以前から別のルートで感染してたかもしれないじゃん。おにーさんとエッチしたとか」
「……私、処女」
頭痛で苦しい時に、なんで私は処女告白してるんだろ……
どうでもいいか。
身体も熱い。
全身の血管がはち切れそう。
「……そう言え、ば……顔に、お母さんの返り血は浴びた。でもお母さんは」
「感染した初期段階なら、人によって症状はほぼ出ない。カナデちゃんの母親が感染していた場合、返り血が目にでも入ってしまったらあるいは……」
「うぅぅ……」
体が熱い。
頭も痛いし、これは、何?
「やっぱり、ここで殺す」
レイナは冷徹な目で私を見ながら拳銃を突き付けた。
「レイナ、まだオレらと同じ異能者になる可能性がある」
「カナデの兄が異曝者になった。放射線の浴びた量なら、カナデもおなじくらいのはず」
同じ環境なら、私はお兄ちゃんと同じになる可能性はもちろんある。
「……私は、既に1度死んでる身……」
ここで死んでしまっても、今更だとも思う。
けど……
「私、決めたの……お兄ちゃんを殺すまでは、死ねない……」
フェンス越しに呻き出しているゾンビたち。
お兄ちゃんを殺してあげるには、私も異能者と同等の存在にならないといけない。
まだ、ここで死ねない。
私は精一杯空気を吸って、もう一度ゾンビたちを見た。
少しだけ痛みが和らいだ気がした。
「私がゾンビを1人で駆逐する。それが出来たら殺さないでほしい。それが出来なければ喰われて死ぬだけ」
「ちょっ!奏ちゃん!流石に無茶よ?!」
「今ここで異能者として覚醒すればいいだけの話。出来なきゃレイナに殺される。それだけ」
全身に血が巡っているのがわかる。
お兄ちゃんの為に、私はまだ死なない。
そう決めたから。
レイナも健人も花蓮もアルバートを見た。
実質的な隊長である彼に、判断を委ねたようだ。
「……カナデちゃん、好きな装備を揃えてこい」
「アルバート、ありがとう」
「レイナ、健人、同行して武器庫に案内してやってくれ」
私が途中で異曝者になった時の為の首輪。
アルバートの隊長としての配慮と、優しさだと思った。
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