第2話 殲滅

目の前で、ゾンビたちが駆逐されていく。


アサルトライフルで頭を撃ち抜き、グレネードで爆破していく。


現れた人達は、私と同じくらいの歳の人達。

なのに、みんな動きが異常だった。


「アルバート!キリがないぞ!」

「健人!道を潰せ!」

「あいよ!」


健人と呼ばれた人が突如、コンクリートの道路に向かって拳を振るった。

コンクリートは崩れ落ち、一緒にゾンビたちも落ちていった。


「……へ……」


なにが、どうなっているのだろうか。


「ねぇ貴女、大丈夫?ケガはしてない?」

「……え……あ、はぃ」

「あたしは花蓮。今ちょっとヤバいから、あたしの側を離れないでね」

「……うん」


花蓮は別方向から来るゾンビたちに向かって何かをいくつも投げ付けた。

グレネードではないみたい。


花蓮はスナイパーライフルでその何かを撃ち抜き、爆発した。


「汚い花火ね」


そう言ってにこやかに私に笑いかける花蓮。

その若さでどうやったら100メートル先の爆発物を撃ち抜けるのか意味がわからない。


「アル!1キロくらい先からもゾンビたちが来てる!」

「撤退準備しとけ!」


アルバートと呼ばれた隊長らしき人がお兄ちゃんと戦っていた。


お兄ちゃんが振り回した拳が、防御したアルバートの腕を吹き飛ばして千切れた。


「痛てぇな!……花蓮!発信機をこの異曝者に撃ち込め!」


アルバートはお兄ちゃんを蹴り飛ばして指示を出し、そして無くなった腕が生えてきた。


「レイナと健人は避難通路の確保!」


アルバートはグレネードのピンを外し、野球選手さながらのフォームでお兄ちゃんの飛んで行った方向へ投げ付けた。


「総員退避!」


私たちはグレネードの爆発をバックに逃げ出した。



☆☆☆



「やばかったな」

「死ぬかと思いましたよ!タイチョー!」

「アルと同等の力のあの異曝者、アレはまずいですね」

「道ぶっ壊したけど、次からあの道使えないな。やり過ぎた」


私は脅えたまま、彼らに連れられて元自衛隊の基地の中に来た。


「貴女もとりあえずシャワーを浴びに……そう言えばまだ名前は聞いていなかったわね?」

「……私は、奏」

「花蓮、脅えてるぞ?なんかしたのか?」

「してないわよ!」

「まあカナデちゃん、とりあえずシャワーを浴びてくるといい。聞きたい事もたくさんあると思うけど、まずは落ち着かないとな」

「奏ちゃん、行きましょ」

「レイナもいく〜」

「あ、はい」


基地の中を歩いている道中、他の人は誰も見かけなかった。


「カナデって呼んでいい?」


レイナと呼ばれた人はどこかカタコトで、異国の人なのだろうか。


「はい……」

「ねぇ奏ちゃん貴女、銃は扱えるのかしら?」

「お父さんが教えてくれたので、一応扱えます」

「カナデ、私たちにケイゴは要らないよ!みんな若い!」

「あたしとレイナは15歳、アルバートと健人は16歳、みんな歳が近いし、敬語は無しにしましょうって事なのよ」

「……えと、頑張る、ます」


未だパニックのまま、私たちはシャワーを浴びた。


「カナデはん、エエ乳シテマンナ〜」

「レ、レイナっさん!」

「レイナ!貴女どこでそんな言葉覚えたの?!」


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