第4話
電話で母親と話をしたという内容だった。「お母さんと、お父さんの文句を言った」と言って彼女は笑った。後は穏やかな時間だった。俺は読みかけの村上春樹の文庫本を読み、彼女はスマホでパズルゲームに興じ、たまに2人とも手を止めて話をした。俺の通うエステのエステテシャン(最近再婚した)の奥さんとの話や、スポーツの話、午前中にプレイしたRPGの報告をした。後は、睫毛に隠れてわかりづらいけど、俺の目が意外と茶色いと言って彼女は笑っていた。そんなふうにして2時間ほどの時間は緩やかに、あっという間に過ぎていった。
「そろそろ出ようか。」
「そうだね。カラーどうしようか悩んでるんだけどどう思う?」
多分自分で決めるんだろうな。と思いながら、全体的に入れたら?と言ってみる。何でもいいと思う。
レジでお会計をしていると、彼女がやや興奮しながら寄ってきた。
「このお店、子供向けにいくつか絵本も置いてる。猫のやつとか。なつかしー。」
振り返って店を出ながら、
「百一匹死んだ猫でしょ。知ってるよ。」
と言って彼女を見たら、
「混じってるよ!惜しいー。」
と彼女はげらげら笑っていた。外は夕方になってもまだ暑かった。
例年より遅い梅雨明け 糸内敏太郎 @itouti
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
好きなことを、好きなだけ最新/宇部 松清
★191 エッセイ・ノンフィクション 連載中 2,135話
眠れない夜の告白記最新/羽弦トリス
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 2話
パチンコあれこれ日記最新/羽弦トリス
★8 エッセイ・ノンフィクション 連載中 12話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます