大好き
ひまじん黒猫
第1話
夕日に照らされ、赤く染る中で彩は顔を私に向けて言った。
「舞のアドバイスのおかげで、初めてキスできたんだ。ありがとう」
真っ直ぐに感謝を伝えられるのは、なんだか恥ずかしい。
「そんな事ないよ。アドバイスなんかしなくても、きっと直ぐにしていたよ。」
「そんな事無いなんて、嘘だよ。舞が背中を押してくれなかったら、きっと恥ずかしくてできなかったもん。だからね、ありがと」
幼稚園から一緒の幼馴染の、彩は今彼氏がいる。
彩が一目惚れして告白して以来、二人は付き合っている。二人ともラブラブなカップルだ。
それから彩の何時もの彼氏トークが始まった。
彼のこんな所がかっこよくて、かっわいかったと言う話を私は、口を挟むことなく聞いていく。
彼氏のことを話している時の彩は、とてもいきいきしていて何時もの2倍くらい元気な気がした。
そんな彩の、顔を見て嬉しくなり私は笑顔をうかべた。
けれど、その笑顔の下に私は悲しみを隠していた。
するといきなり、彩は彼氏トークをやめ私に聞いた。
「そう言えば、舞は今好きな人いないの?舞可愛いから直ぐにできそうなのに」
それを聞いた途端、心臓がはねた気がした。
けれど私は、動揺を隠し答えた。
「居るわけないよ。それに私は彼氏はいらないから」
「え〜〜、居るんなら手助けしてあげようと思ってたのに。」
彩は、不満げに口を尖らせた。
「結局ダブルデートしたいだけでしょ」
「あれ?やっぱりバレたか」
「長い間幼なじみやってるんだから、何でもわかるのよ」
「やっぱり舞はすごいな〜。でも、好きな人が出来たら言ってね、全力でサポートするからね!」
私は、なんでもないかのように答えた。
「その時は、よろしくね」
満開の笑顔で、彩は言った。
「絶対だよ、絶対にだからね!」
私は呆れたように返した
「はい、はい」
その事に、聞けた彩は満足そうにした後、また彼氏トークを始めた。
けれど、彩との約束はきっと守られることは無いだろう。
私は、今好きな人がいる。しかも5年越しの片思いだ。なんなら告白もしていない。
その人は、良く笑い、良く泣いて、私に様々な顔を見せてくれた。
そんなあなたが大好きだ。
けれど、この思いはきっと、届くことは無いだろう。いや、届けようすることですら許されない。
もしこの思いが、伝わったとしても、あなたはきっと私の想いに答えてはくれないでしょう。
だから私は、この想いを伝えずにいることを誓った。この想いを大切にこころに仕舞い、あなたの隣にいると決めた。これから、大人になっても、子供が出来ても、年寄りになっても、そばにいよう。
だから、あなたはわからなくていい。
私は唐突に言った。
「彩大好き」
彩は、一瞬ぽかんとしたが。
「私も大好きだよ」
あなたはそう言ってくれた。
けれど、あなたの大好きと私の大好きは同じようで違う。
本当なら、あなたにこんな気持ちを持っている私は、いない方がいいんだろう。
私のことを忘れてくれた方がいいんだろう。
でも、いつまでもそばにいたい。
その気持ちだけは、捨てられなかった。
だからせめて、一生あなたの親友でいさせて。
「これからもずっと、よろしくね」
「こちらこそよろしくね」
大好き ひまじん黒猫 @himazinkuroneko
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