6-6・その後

 戦いが終わり、夕方になってルイーズは、島の外に臨時で作られた、命美めいみ使いのテントの中のベッドで目を覚ました。

「大丈夫?」

 ベッドの横には、心配そうにしているティメオとサラがいた。

「大丈夫よ。二人とも怪我は?」

 ルイーズが二人の怪我したところを見てみると、服は破れていたものの、怪我はすっかり治っていた。

「怪我ならノランさんが治してくれたよ。他の軽症者もすでに完治済みで、怪我が大きかった者たちは、裏の世界の病院へ運んだ。でも皆大したことないって」

 サラはそう言いながら、怪我が治癒した部分を見せた。

「よかった」

 ルイーズはホッと胸をなでおろした。

「でも服、破けちゃったね。もしよかったら、うちの店で無料で修理するよ」

「あぁ、そうしてもらおうかな~。ティメオは?」

 サラが聞くと、ティメオは破けた場所をギュッと握り締めた。

「俺はこの服、破けたままにしておこうと思う。自分の力不足で怪我したんだし、戒めってことでさ」

 ティメオから力不足という言葉を聞き、ルイーズは首を横に振った。

「そんな、力不足だなんて。私には魔法の力とか詳しくは分からないけど、でもティメオもサラもみんな精一杯戦ったじゃない!」

「あぁ、確かに。でも、やっぱり服はこのままにしておくよ。心配してくれてありがとう、ルイーズ」

「うん」

 ルイーズは頷くと、ティメオが服を握り締めていた手の上から、自分の手を重ねた。


 二人のとても良い雰囲気に、ふたりの気持ちを知っているサラは、今がチャンスとティメオの肩に手を置いた。

「そう言えば、ティメオってルイーズに何か話があったんじゃない?」

「はぁ?」

 突然話を振られたティメオは何のことかとサラを見た。

 けどサラは引かなかった。このまま自分がティメオの背中を押さなければ、絶対に二人はこのままの関係で終わってしまう確信があったのだ。

 サラはルイーズに聞こえないようコッソリ魔法をかけると、ティメオに小さな声で囁いた。

「告白のチャンス」

「えぇっ! いつから気づいて……」

 まさか気づかれていたなんて思っても観なかったティメオは動揺を隠せないでいた。

 しかしそんなことはお構いなしに、サラがティメオの肩を叩いた。

「ほら、早く散歩にでも誘いなって」

「えっ、はっ……でも……」

 まだ動揺を隠せないティメオの事は気にせず、サラは魔法を解いた。

「あっ聞こえるようになった。何を二人で話してたの?」

 魔法をかけられていたルイーズは、食い気味に聞いた。

「あぁ、ごめんごめん。ティメオはルイーズに話したいことがあるって言ってたからさ、ね、ティメオ」

 サラはそう言うと、ティメオにウィンクをした。

「えっと……さ、そうなんだルイーズ。聞いてほしいことがあるんだけど、もしルイーズの体が大丈夫なら、少し散歩に行かないか?」

「いいよ。でも何?」

 不思議そうに聞き返すルイーズの肩に、サラが手をポンっと置いた。

「とりあえず行っておいで」

「えっ、うん、わかった」


 散歩に出ると、島はとても幻想的な雰囲気になっていた。

 夕日から海に光が伸び、まるで光の道のような絶景に、ティメオとルイーズは思わず目を奪われた。

「綺麗」

 ティメオも、ルイーズの隣に並んだ。

「アイメルに負けないくらい綺麗だな」

「うん」

 ティメオはルイーズと向かい合うと、真っ直ぐにルイーズの目を見つめた。

「ルイーズあのさ、聞いて欲しいことがあるんだ」

「うん」

 ティメオは姿勢を正すと、意を決して口を開いた。

「初めて会った時から、ルイーズのことが好きでした。二人で一緒に出掛けたりしながら、ルイーズの事を知っていく中、俺の中でルイーズへの想いがどんどん強くなっていったんだ。だから……その……俺と、付き合って下さい。これから先もずっと一緒にいたいんだ……」

「えっ、ティメオ……」

 突然の告白に、ルイーズの顔は真っ赤になった。

けれど、ルイーズの心の中で答えはもうとっくに決まっていて、満面の笑みで返事を返した。

「はい。私もずっとそばにいたいです!」

 返事を聞き、ティメオの顔に安堵の表情が浮かんだ。

「ホント⁉ やった、これからもよろしくね」

「ふふっ、うん、よろしくね」

 二人が見つめ合いながら、ギュッと抱きしめ合うと、ノラン・レオ・サラが、大きな拍手をしながら、木の陰から出てきた。

「わっ」

「見てたの~!」

 恥ずかしそうな二人の周りには、笑い声と祝福の声が響いた。

命美星も二人を祝福しているかのように、そよ風で木々をカサカサと拍手をしているように撫でていった。


 数日して、すっかり元気になったルイーズは、ティメオと共にアイメルへ遊びに来ていていた。

「この間、ゾエさんに薬のお礼に行ったの。薬に本当に助けられたって言ったら、ゾエさん棚からまた同じ薬をくれたのよ。持っていて損はないからって。だからティメオの分も貰ってきた。はい」

 ルイーズは砂浜を歩きながら、隣を歩くティメオに石化薬を差し出し、ティメオはそれを受け取った。

「ありがとう。本当にこの薬には助けられたから嬉しいよ。俺も今度、この薬のお礼をしに行かなきゃな。でももうこれを使うことがないように祈っているよ。そうだ、木のカフェのコーヒー豆でも持って行こうか?」

 ティメオが聞くと、ルイーズはうんうんと頷いた。

「それいいね。じゃあその時私は、紅茶の茶葉を持って行こうかな~」

「二つも持って行ったら、ゾエさんすごく喜んでくれるだろうな。いつ行こうか?」

「来週はどう? 休み合わせるよ」

「じゃあその後、またどこか行くか」

「うん!」

「あぁ、でもサラにも何かお礼をしないと」

「サラに?何で?」

「いや、何でもないよ」

「えっ~⁉気になる!!」

 二人は楽しそうに話しながら、手を繋いでのんびりとアイメルの町を歩いて行った。



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ルイーズと裏の世界~星の秘密と謎の男~ チーム織幸 @team-orisachi

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