神様、あなたはTS転生モノというものを勘違いしている(2)
私の名前はクヘテ、黒猫の獣人族の女。
セクシュアル男爵家のお屋敷にて、御三男のトーラス坊ちゃまの専属メイドとして、長くお側に仕えさせて頂いております。
ふへへっ、羨ましかろう?
おっと、失礼しました。
坊ちゃまが10歳にお成りになられた頃、私は御当主様にトーラス坊ちゃまの専属のメイドになるようにと仰せつかりました。
恥ずかしながら、あまりの嬉しさに取り乱してしまい。窓ガラスをブチ破って屋敷を飛び出し、野山を三日三晩ほど駆けまわってしまいました。
セクシュアル男爵領の野山近隣の村々を震え上がらせた『
いやしかし、怯えた近隣の村人達に、冒険者ギルドへ私の討伐依頼を出させてしまったのは失敗でした。
討伐依頼の件がメイド長に知られ、危うく狩られるところでした。
ですが、連れ戻しに来られた坊ちゃまに首輪をつけられ。馬車にリードで繋ながれ、強制的に走ってお屋敷まで帰らされたのは、今となっては良い思い出です。
はぁ…あの時の坊ちゃまの容赦のなさ、本当に素敵でした…。
あぁ、そして思い出します。
トーラス坊ちゃまのご尊顔を、初めてお目にかかった日の事をー…
その日、私は棚の奥底に隠された。メイド長の大好物のドラ焼きを見つけ。そのあまりの美味しそうな見た目に、うっかり全部たいらげてしまいました。
やばぁっ‼︎と、思った時にはすでに遅く…。
メイド長にバレ、ギロチンで処されるという。絶体絶命の大ピンチに陥ってしまいましたー…
『おぬし、覚悟はできておるのじゃろうなぁ…えぇ?』
『はわ、はわわわっ』
オーガも斯くやという。鬼気迫るメイド長の怒気に、私はこの時、生き残るという事を諦めてしまっていました。
いや、ホント無理ですアレ。
『ん〜?ねーねー、めーどちょう。どーしたの?』
ですが、奇跡が訪れました。
『ん?おぉ、おぉ、トーラス坊ちゃま』
『ぼ、ぼぼぼ、坊ちゃま⁉︎こ、この方が…ごくり』
私の目の前に〝
もう、ホントやばかった‼︎
この時のトーラス坊ちゃま、マジでやばたにえんっ‼︎
カッコ可愛いすぎでしたわぁっ‼︎
『うむ、なに、この駄メイドがの、妾が3時のおやつにと、大事に大事に取っておった好物のドラ焼きを、意地汚くも食い散らかしてくれおってのぉ…。酷いヤツなのじゃ、坊ちゃまもそう思うじゃろう?』
『えぇーっ!もう、だメイドさん。めっ、だよっ‼︎』
『っ…‼︎は、はいぃ…。申し訳ございません坊ちゃまぁ…。はぁはぁ』
『うむうむ。なので、仕置きに首を刎ねてやろうと思っておっての。今からギロチンで処すところなのじゃ——て…おぬし、何を頬を染めておるのじゃ?』
『き、気のせいですメイド長。じゅるり…』
『えー!そんなことしたら、かわいそーだよぉ』
『む、んんー…じゃがのぉ坊ちゃま』
『かわりに、ボクのきょうのオヤツたべていいからっ!ゆるしてあげて、めーどちょう』
『はうわっ‼︎』
この時の私は、何度キュン死と蘇生を繰り返したか、今でもわかりません。
『むむむっ…ちなみに、今日の坊ちゃまのオヤツは何じゃったかのぅ?』
『とーきびっ‼︎』
『『おぉう…』』
『あまくておいしいよっ‼︎』
『う、うむぅ…。トウキビ、妾のドラ焼きのかわりがトウキビではぁ…妾、ちょっとぉ…』
『メイド長がお仕えする方よりも、お高い甘味を食している件…』
『黙れ、アレらはすべて妾の自腹じゃ』
『だめぇ…?めーどちょう、とーきびきらい?』
『う、うぬぅ…。流石に、召使いが主人のオヤツを貰うわけにはいかぬのじゃ…。残念じゃが、ものすご〜く残念じゃがっ‼︎いやぁ、食えるものなら妾もトウキビ、食べたかったのぉ〜‼︎』
『そっかぁ…』
『逃げましたね、メイド長』
『黙れ、今すぐ叩っ斬るぞ』
最終的に、幼いながらも知恵を絞った。
『この駄メイドさんは実は病気で、頭がすごくすごく残念だから。他の人に迷惑が掛からないよう、自分が責任を持ってちゃんと飼うから許してやってほしい』
という、坊ちゃまの優しいお言葉にメイド長が折れ。私は命を拾うことが出来たのでした。
坊ちゃまには感謝してもしたりません。
一生お仕えして、御恩をお返ししなくてはならないと思っています。本当に…。
あぁ…ですが、坊ちゃま。
申し訳ありません…。
どうやら今日、私は死ぬようですー…
「ト、ト、トーラス坊ちゃまのトーラス坊ちゃまがっ、私の目の前にあらあらあら露わにににぃぃ——うへへ、おふぅー…」(バタっ‼︎)
あぁ、視界が段々ボヤけてきました…。
もう、まともに前が見えません。
ですが、最後に見た。坊ちゃまの可愛らしい坊ちゃまのお姿だけは、しっかりとまぶたの裏に焼き付けて逝きたいと思います…。
「わ、我が人生に…ひとかけらの悔いなしぃっっ‼︎」
私は天に拳を突きあげ。最後にそう叫んでこの世を去りました。
DEUS VULT TEMPLATE ✖️ ~ 神様がテンプレを望んでいるようです。ですが神様、このテンプレは色々と間違っています ~ 咆哮音痴 @tanakanokanata
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。DEUS VULT TEMPLATE ✖️ ~ 神様がテンプレを望んでいるようです。ですが神様、このテンプレは色々と間違っています ~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます