第6話

またしても致命的なスキルミスをしてしまったパチたろ。ドラゴンを撃退し、しかも味方にしてしまった功績も霞んで見える。

ベルーナは傷だらけだったが、時間が経てば傷が綺麗に消えてしまった。激レアスキルの再生の効果だろう。


「そろそろ夜だから地球に帰ろうかな」


「勝手に帰れば。さよなら」


「またねとか無いんですかマナ師匠!」


マナはパチたろに冷たい。かなり怒っているようだ。アンリミとベルーナは心配そうに見ている。


「とりあえず、ご飯でも食べませんこと?」


「それはいい。我も腹が減った。再生のスキルは腹が猛烈に減るのが難点だ」


アンリミが空気を変えるべくいい提案をした。ベルーナは物凄い腹の音だ。地面が軽く振動する程の。


「パチカスクズたろは金ないから無理じゃん。魔物討伐数ゼロだし。私はもうおごらないよ」


「うう……ごめんって」


「許さない」


「どうしたら許してくれるんだ?」


「スキルを振り直せたらいいのにね」


「神様どうすか?」


おっと俺に振ってきた。スキルの振り分けは可能なのだが1000ポイント必要。こんな出費が出来る奴なんてほとんどいない。


「スキルのリセットはスキルポイント1000だ。諦めるんだな。無駄に使ったポイントが650で助かったな。1000ポイント使うよりマシだ」


「神様わかりました。スキルリセットは諦めます。今日はもう辛いんで地球に帰ります」


「お前な異世界で金を稼いでそれを日本の円に換金してやろうと考えていたのに稼ぎ無しかよ。今日の晩飯どうするんだ」


「畑のトマト採って食べます。そろそろ赤くなってきたので」


「そうか。マナ許してやらんか?」


「許しません」


「神様のお願いなんだが?」


「無理です」


「そ、そうですか」


無理ですと言ったマナの形相が凄まじくてこの俺も引くしかなかった。神様を恐怖させる迫力って何事だ。


「全く期待させて裏切られるって最悪」


「今度は期待に答えるから!」


「パチンコも今度こそって失敗したんでしょ? 人生にやり直しはないのよ」


「お願いだよ。頼むよ。もう許してくれよ」


「許さん」


「あーあこれはダメね。なら私がパチたろ貰うね」


「む! この男は我が貰うぞ。この男は面白いスキルを沢山持っている。我は秘密の隠しスキルも見えるのでな。習得方法まではわからんが」


「あんたら殺すよ?」


マナの凄まじい殺気。ベルーナが後に飛んで距離を取った。頬を汗が流れる。


「この我を恐怖させるとは。この女何者!?

どれどれスキルツリーはどうなっておるかの。ほうこれは興味深い。大魔女となるか剣聖となるか分岐している。闇と光どっちを取るか見物じゃのう」


「マナちゃん今のままなら闇ね。私も闇属性仲良くしましょ」


「アンリミ。私はまだ魔法が使えないのに大魔女のスキルを覚えると思うの? とりあえず剣技にスキルを振ってるから剣聖かな」


「ち! 光属性か!」


「ほう剣聖か。この世に1人しかいない剣聖、こんな所に剣聖の後継者がいたとは。闇堕ちしない事を祈ろう」


「あーあ、バカらしい。スキルポイントを適切に振り分ければ皆剣聖になれるのよ。わかった? パチたろ」


「この世にひとりだから剣聖! 皆とか無理だから!」


「あ? パチたろこのゲーマーでMMOで適切なステ振りでレベル上の相手も倒して名声を得た私に口答えすんのか?」


「ご、ごめんなさい」


マナの迫力に黙るパチたろ。彼女の迫力の正体がわかった。まさか未来の剣聖だったとは。しかも、光と闇の特性を両方持っている。相対するスキルを持つとはなんという奇跡。

この異世界で最高の魔法は光と闇。それら片方のスキルを持つだけでも確率0.25%なのにそれを両方持っているとは。

マナが闇堕ちしたら恐ろしい事になる。大魔女とは私を殺しかけた程の実力者。その力は神に匹敵する。世を滅ぼす存在。大魔王と大魔女が手を組んだら神をも滅ぼす事だろう。

いっその事マナが育つ前に殺してしまいたいという情けない考えが浮かんでしまう。それくら大魔女は危険なのだ。


「ベルーナさん私も見てください」


「ん、ああ。アンリミはあれだ。本来の天才裁縫師のスキルが全てゴブリンを殺すためのスキルに入れ替わっている。ゴブリンには無敵になるが、他の敵には全くダメだ」


「やったー! 最高! この世のゴブリン皆殺しにして根絶やしにするぞ!」


「まあ、パチたろはそんなお前らより凄いスキルを沢山隠し持ってるがな」


「ねえ、さっきから異世界で何を話してるんだ?」


「私達は神スキル持ちだけどあんたはカススキルばっかりだって。仕方ないから私が面倒見てあげる。行くわよ。パチたろ。ご飯食べさせてあげる」


「マナやっと許してくれたんだな!」


「許さん。でもほおっておけない」


「やれやれ世話の焼ける2人じゃな」


「ええ全く。私達もいきましょ。ベルーナさん」


こうしてようやくパチたろとマナは仲直りし、パチたろに腹いっぱい食べさせて酒も沢山飲ませた。

ベルーナとアンリミは涙を流しながら美味しそうに食べて飲むパチたろを笑顔で見ながらそれを魚に酒を飲んでちびちび食べていた。


「もう食えねえ。飲めねえ」


「それじゃ、行くわよ。地球にね。明日は朝から買物よ。ゲーム沢山買わなくちゃ! 地球輸入より断然安く買えるのよ」


「わーい! 地球!」


「我も行こう。地球か」


「あんたらはいいの! 神様! 私とパチたろだけ地球に転送して!」


「は!? 抜け駆けですの!?」


「待て! 我も行くぞ! 夜のお務めも下僕の仕事」


こうしてパチたろに3人が抱きつくような形となり、地球に転送された。


「ここがパチたろの家か。大きな武家屋敷じゃのう」


「うわーうわー涼しい! でも体が重い。10倍重い」


「マナ大変だ。鎧脱がないと立ち上がる事も出来ない」


皆試しの時の修行の惑星である地球の重力に驚いている。


「これはいい。パチたろ。このまま筋肉トレーニングするよ! ほらほら早く」


マナは汗を流しながら嬉しそうに激しくトレーニングしている。重力で喜ぶ奴って珍しい。そのうちエクスタシーに到達して地面に倒れた。激しく痙攣している。


「地球最高ー! 愛してるー!」


重力に苦しむアンリミとベルーナその中で大喜びで叫ぶマナ。物凄く体育会系なのね。

こうして地球での時間が始まった。アンリミとベルーナは重力が辛くてすぐに寝た。マナは筋トレが捗ったのが嬉しくて興奮が冷めずにパチたろのベッドに乗り込んでいた。

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