第4話

パチたろは初戦を終えて無事に街に帰ってきた。レベルは上がっていない。幸運だけは5上がった。10になった。


「少しだけ食事取ってそれから修行するよ。パチたろ」


「少しだけ? 物凄く腹減ってるんだが」


「修行を終えたらガッツリ食べさせてやるから文句言うな」


「わかった」


「素直じゃない。さあ、ちゃっちゃと食って修行よ」


こうしてパチたろとマナは美味しそうな匂いがする店に入っていった。看板には牛の絵が書いてあり店の名はキャット邸牛なのに猫であるどっちだよ。


「マスター筋肉スペシャル2つ」


「あいよ。ステーキはいいのかい?」


「それは後からまた来た時に注文するよ」


「ステーキ!? マジか! 3ヶ月前にパチンコで勝って以来久々だ」


「喜んでくれて何より。修行が終わったらステーキだぞ。素敵だろ?」


「おう! ステーキは素敵な食べ物だ」


パチたろが喜んでいると、水が出された。水はお代わり自由で店の裏の井戸水。よく冷えている。スイカを冷やすのにも良さそうだ。

そして筋肉スペシャルがやってきた。ブロッコリーと鳥のササミのサラダと鳥のササミのフライが沢山。野菜スープも付いている。

そして出てきた筋肉スペシャルにガッカリするパチたろ。美味しそうにモリモリ食べるマナ。対照的だ。


「さっさと食う。ステーキ無しにするよ」


「そ、それは勘弁!」


猛烈な勢いでガツガツ食べるパチたろ。みるみる間に皿が空になっていく。


「やれば出来るじゃない。さ、行くぞ。パチたろ」


「お、おう!」


「マスターお金ここ置いて行くね」


「おう。また後でな。ステーキの肉用意しておく。少しサービスして大きめに切っておくか。兄ちゃん頑張れよ」


「肉大きめにしてくれるみたい。頑張れよだってさ」


「マジか! マスターいい人だな」


こうして修行は始まった。わしなら軽い食事など与えずに即修行だが、マナは甘い。


「はい。反復横跳びスタート。学校で慣れてるでしょ?」


「はい! 師匠」


「なんだその遅いのは。舐めてるのか貴様。鈍牛の方がまだ早いぞ!」


「く! 鎧が重くてこれが限界であります!」


「火事場のバカ力だ。馬鹿者! 死ぬ気でやってみろ。ほらゴーレムのパンチが降ってくるぞ」


「うおー! 当たってたまるか! 当たるのはパチンコだけで十分だ!」


パチたろは反復横跳びの速度が増した。よくわからんやつ。マナの滅茶苦茶な理論について行っている。


「やれば出来るじゃない。次は前と後ろに反復飛び!」


「はい! 師匠!」


前後に素早く飛ぶパチたろ。こいつは凄いかも知れない。


「今度は剣を持って反復横跳び。飛んだ後ですぐさま剣を振り下ろす!」


「はい! 師匠!」


剣を持って反復横跳びをすると凄く動きが鈍った。こりゃダメだ。凄くはないようだ。


「どうした。動きが鈍ってるぞ。お前の力はそんなものか。今の動きだとゴーレムのパンチに潰されてるぞ」


「はい。師匠。俺は死んだ。次こそは!」


「戦場に次は無いぞ! 今この瞬間に全ての力を出せ!」


「はい! 師匠!」


パチたろの速度はまたしても上がった。飛んでは剣を振るの繰り返し。バックステップに移った時には更に剣の振り上げて振り下ろす速度が上がった。レベルは上がらないが。


「そろそろ2時間か。よし、そこまで。よくやった。これを毎回異世界に来た時に続けるがいい」


「はい! 師匠!」


「さあ、ステーキ食べに戻るよ。ギルドの練習場もそろそろ閉まるしね」


「ふう。汗だくだぜ。3ヶ月ぶりのステーキだ!」


「あたしのおごりだからなおさら美味しいな。稼ぎのないあんたのパートナーも大変だ」


「感謝するよ。マナ師匠。本当に助かる」


「その師匠ってのやめろ。せめて修行の時だけにしとけ」


「はい! 師匠……いやマナさん」


「さんはいらない」


「マナ」


「おう」


こうして再びキャット邸に戻ってきた2人。パチたろはステーキが待ち遠しいようだ。ヨダレが出ている。

しばらく待っていると1キロはありそうなヒレステーキが出てきた。


「おー! 食べていいのか?」


「おう。ガンガン食えや。よく噛んでな」


「おう! ありがとう! この借りはいつか返す!」


大粒の涙を流しながら美味い美味いと何度も言いながら食べるパチたろ。普段の畑で採れた野菜ばかりの食生活の反動だろう。泣くほどとは。


「異世界に来て良かっただろう? パチたろ」


「ああ。良かった! 体はキツいが最高だ!」


「あんたは修行の惑星地球から来ただけあって筋がいい。今度の戦闘は大丈夫。期待してるよ」


「今度こそ! 俺には秘策があるしな」


「さあ、食べ終わったらさっそく残りのゴブリン7匹倒しに行くよ」


「お、おう。倒すぞ。文字通り」


こうしてパチたろとマナは再び森に向かった。夕暮れ時の森でしばらくゴブリンを探すと黒い煙が見えた。

その煙の所に行ってみるとゴブリンが7匹いた。食事を取っているようだ。というか、これから人間を焼こうとしている。


「待てコラ貴様ら!」


「コラ! いきなり出るな不意打ちのチャンスが!」


パチたろが怒って飛び出し、マナが慌ててその後を追う。


「ぎぎゃぎゃ! なんだお前ら。食事の邪魔をするな人間の女のステーキ!」


「ステーキなら牛を食えや! いや、牛さんにも命が。ああ……俺はなんて事を!」


「なに敵の前で泣いてるのよ。パチたろ。私は女の子を助けるからあんたはゴブリン倒しなさい」


「おう! 任せろ。倒すぞ。文字通りな!」


「さっきから何よ。倒すを強調して」


するとパチたろはゴブリンを剣を立てて剣の腹で叩いた。斬らずに叩いた。刃を使わず。


「はっはっは! 倒したぞ! これで殺してない」


「あーそういう事。確かに倒したね。あーあこのヘタレが」


華麗にゴブリンの攻撃を避けながら次々とゴブリンを倒していくパチたろにマナも文句が言えずにいた。

そして、焚き火の前で棒に吊るされていた女の子をマナが縄を切って助けた。するとその女の子は驚きの行動に出る。


「よくも私を犯してくれたわね! 死ね死ね死ね!」


パチたろが気絶させて倒したゴブリン達を次々に拾った短剣で刺殺していく。


「7匹で代わる代わる何度も何度も何時間も!

殺す殺す死ね死ね! 」


可愛い顔は崩れ果て物凄い形相でゴブリン達を何度も突き刺し、その綺麗な裸は血まみれになった。

パチたろとマナは唖然としてそれを見守っていた。あまりの殺意に動けなかったと言っていい。


「ふう。7匹全部殺したぜ。奴らの罪は消えんがこれで我慢してやる。あ、助けて頂きありがとうございます。私はアンリミ。ゴブリンに犯され処女を奪われ更に回された哀れな女です。これから全てのゴブリンを根絶やしにする為に裁縫師から冒険者に転職しようと思っています。どうぞ宜しくお願い致します」


「あ、はい。よろしく。俺はパチたろ冒険者で地球人です」


「わたしはマナ。奴隷出身。悲惨な性体験は忘れるのが1番だよ。わたしも奴隷時代色々あった。時間が解決してくれる。話すだけで濡れるくらい好きな男が出来て抱かれるとかね」


「それは無理かな。ゴブリンだけでなく男も無理そう」


「今はそうだけどさっきも言ったように時間が解決してくれる」


「今は信じられないな。色々苦労してるのはわかるけど」


「うん。今は仕方ないよ」


「そうね」


こうしてパチたろとマナは伝説のゴブリンキラーとして有名となるアンリミと出会ったのであった。

丸裸のアンリミに風のマントを貸して、それで肌を隠して、3人で街に帰る途中、パチたろのレベルが上がってのでスキルの習得に立ち止まっていた。

殺さなくても剣で殴り倒すだけで6倍の経験値が入ったようだ。殺せば更に経験値が入るが。一気にレベル16になっていた。



「スキル取得は重要よ。始めのほうはレベルがすぐ上がるけど、後の方はレベルがなかなか上がらなくなるので大変。慎重に選びなさい」


「おう。わかった!」


「なんだろ。まさかと思いますが、あのスキル選びました?」


鑑定スキルを持っていたアンリミが驚いている。そんな凄いスキルをパチたろは持っていたのだろうか?


「ふーこれで毎日の髭剃りから解放されたぜ」


「ちょ! バカ! 男の髭は男らしくていいじゃない! アンリミ残りのスキルポイントは?」


「あ、はい。150ポイントも消費したので残りたったの10ですね」


「このクソバカ! あんたやっぱりカスよ!

クズよ! 見込みあると見直して損した! 行くよ。アンリミ 」


「あ、はい」


こうしてパチたろはマナとアンリミに置いていかれた。待ってくれよーと走るパチたろ。やはり彼は持っていない。相変わらずクズ道まっしぐらだった。

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