第2話

ここでパチたろの相棒となるマナについて語ろう。彼女は奴隷時代かなり苦労した事により運がとても上がった。

パチたろの運の無さは苦労や努力をした経験が足りないからなのかも知れない。日頃の行いというやつだ。人助けをする事により他人のぶんまで苦労する。これは無駄ではないのである。

情けは人の為ならず。そうきちんと自分に返ってくるのだ。呪いが失敗した場合自分に返ってくるのと同じように。

マナの身体能力がパチたろより低いのはこの異世界の重力と関係する。地球は異世界よりかなり重力が強いのだ。よって身体能力に差が出る。まあ、説明はこんな所かな。

マナの性テクニックの上手さはプライベートな事だから伏せておくが、かなり高い。これも彼女を選んだ理由である。パチたろには夜の訓練もしっかり積んで貰わなくてはならない。


「ねえ、あんたが神様が言ってた地球人? へーふーん中々じゃないの。さ、行こうか。ギルドに登録してから魔物狩りに」


マナがパチたろの容姿をじっと見て、うんとうなづいた。どうやら気に入ったらしい。不細工だったら帰ると言っていたのでとりあえず安心した。


「ギルドって何だ」


マナが呆れたようにパチたろの方を振り返って見た。胸を揺らして激しく地面を踏み抜く。


「あんたね、ゲームとかしない訳? 私ですら地球のゲームをやってるのに」


「ゲームしないな。最新のゲーム機はパチンコのVIPレベルが上がって貰ったが1度も起動していねえな」


「はあ? 勿体ない。より上手くなったり、キャラをコツコツ育てて魔王を倒したり、車でレースしたり、戦闘機でドッグファイトしたり、イケメンとラブラブしたり色んなゲームがあるのにしないなんて勿体ない。私なんかさ、奴隷から解放されてから自由な時間はずっとゲームや漫画に使ってるわよ」


「俺はゲームも漫画も興味ねえ。全てはパチンコだ。勝った時のあの喜びがたまらねえ」


「ゲームでも勝った喜びあるわよ! 努力達成という達成感のオマケ付きでね! 運だけのパチンコとは違うのよ。ゲームの技能を上げたり、時間を使ってレベル上げたり、修練や努力のスキルが磨けるのよ。極めれば集中力だって上がる。ゲームやりなさい。ゲーム!」


「俺は浮気はしねえ。パチンコ一筋だ」


「あんたねえ、浮気は男女の関係でもない限り大丈夫よ。まあ、男女関係で浮気したら刺すけどね」


「怖!」


「おしりの穴にズブッとね」


「ケツかよ!」


「そう。無理やり挿入される痛みを通して少しでも痛みを知ってもらうんだ」


「でも、それで許すんだ? 別れないんだ?」


「まあね。たまには目移りする事もあると思う。最終的に私の元に帰ってきて私が1ばんならそれでいい」


「俺とお前は合わないな。俺は一途だ。浮気はしねえが、浮気を許せる気持ちもわからねえ」


「好きなら許すのが当たり前じゃない」


「好きでも許せねえよ」


「本当に合わないわね。さ、ギルドに着いたわよ。さっさと手続きしましょ」


ふたりが話しながら歩いている間にギルドに到着したらしい。大きな建物のギルドには様々な部屋がある。

魔物を貯蔵する倉庫もある。地球から輸入した大型冷凍室もある。

テレビもあるし、ゲームも漫画も小説もラノベもある動画見放題サービスはネットが繋がらないのでさすがに無いが、映画やドラマのラインナップはかなり豪華だ。だが、パチンコは導入しないし、させない。あれは麻薬だ。エアコンも効いていて真夏でも快適な為、冒険者達の憩いの場にもなっている。

ゆっくり過ごしながら冒険者達は美味しい依頼や、強い冒険者でなくてはならない依頼を待っていたりする。今も50人程の冒険者が待機という名目で遊んでいる。


「よう。マナじゃないか。新しい男か?」


「よう。ギルマス。まあ、そんな所ね」


「何だ。あの男の人なんて言ったんだ? お前も異世界語だと何言ってるか全くわからねえ」


パチたろは面食らっている。当然だろう。マナはゲームや漫画で日本語が達者なので話せるが、異世界語はパチたろには全く理解出来ないだろう。

自動翻訳のスキルを与える事も出来るが、祖父母に甘えきったパチたろには痛い目を見て苦労して根性を叩き直す必要がある。


「んとね、あの男はこう言った。何だこの不細工は。お前こんなのと付き合ってるのか?」


「そして私はこう答えた。そんな訳ないでしょ。まあ、ゲームで私に勝てたら付き合ってもいいけどねってね」


「そ、そうすか」


パチたろはかなりへこんだ様子だ。ざまあみろ。このワイルドイケメンが。不細工の気持ちを味わうがいい。特に苦労する事無く女にモテおって。しかし、マナの通訳が事実とかなり違う所が面白い。ナイスだ。


「マナ。そのイケメンを新規登録すればいいのね? ねえ、連絡先教えていい? かなり好みかも」


「ダメ。こいつはあたしのだ。何も知らない事をいい事にあれこれ仕込んで私だけを愛するように洗脳するんだ。こいつは伸びるよ。それもかなりね」


「あの綺麗な受付嬢さんはなんて? かなり好意的だが」


マナは笑顔でパチたろの方を振り向くとこう言った。


「彼女はこう言った。すっげえ不細工。こりゃ戦闘能力も期待できないね。登録しても死ぬだけだけどどうする?」


「そして私はこう答えた。大丈夫。私が守るし、手取り足取り教えるから問題ない。彼はいつかきっと大きく羽ばたく。伸び代の塊だ。だから今は彼を悪く言うな」


「おー! ありがとうマナ! お前はいや、あなたはこの世界のオアシスで俺の希望だ」


パチたろは感動してマナに抱きついて強く抱きしめた。マナはニヤリと微笑んだ。計算通り。ちょろいぜ。パチたろ。マナ恐ろしい子。


「さあ、登録も済んだし行くわよ。とりあえず、1番弱いゴブリン退治ね。でも、戦闘経験ではあんたよりゴブリンの方が上。あんたにとっては生きるか死ぬかの戦いね」


「あのよう、所で神様から借りた剣めっちゃ重いんだが。これで戦えるのか? もっと軽いのがいいんだが。鎧も重いし」


「それね。私も思った」


「お悩みのご様子。ちょっと待って下さいね。今鑑定します。むむ。これは凄い。修験者の剣と鎧ですね。経験値3倍ですって合わせて6倍。これは絶対いい装備です。伝説級ですよ」


「ん、これはそのまま翻訳でいいか。修験者の剣と鎧だって。経験値が他人の6倍手に入るチート装備。不細工なお前はこれくらいしないと人間ですらねえなーって言ってた。言い過ぎよね。大丈夫。私は味方だから」


「マナお前だけが頼りだ。大好……いやまだ早いぞ。なんでもない」


「ちっ」


「ん、今舌打ちした?」


「してないわよ。チュッてしたの」


「そ、そうか」


こうして2人はギルドを出てゴブリン退治に向かった。ゴブリン合計10匹を狩って帰ればいいんだが、上手く1匹ずつ現れてくれるといいが、群れで生活する奴らの事だ。そう上手く行かないだろう。

さあ、パチたろの異世界での初戦だ。上手に切り抜けられるだろうか。

もしもの時の為にマナには風の魔剣と風のマントを与えてある。重さはほぼ無いのに凄まじい切れ味という優れものだ。更に刀身は見えず伸ばす事も可能。

更に風のマントで身を守れば矢を風の障壁で弾き返せる。パチたろの装備とは雲泥の差である。彼には苦労してもらわなくてはならない。この苦労の積み重ねが低すぎる運を上げる事に繋がるだろう。もうすでに上昇の兆しがある。

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