真夜中の復讐

星海棗(ひとみなつめ)

第1話プロローグ

≪王妃ミア様が暗殺されたぞ。≫


村中に響き渡るその知らせを私は、今まで忘れることはなかった。そう、この復讐を果たすまでは、私は見つかってはいけない。そう誓って生きてきたんだ。


私は、ゾフィア。現在でいうドイツの近くの小国ベルグシュタイン王国のフォーゲル一家の第一王女であった。父である、ヤコブ王は、旅先で見つけた私の母ミアと結婚した。ミアは、アジア圏の国の王女であったらしい。ヤコブは、ミアのことを溺愛していたが、ミアはこの国の人と見た目も違うため、家臣や宰相、村の人から好かれていなかった。王にはふさわしい人がいると。だが、王妃ミアは賢妻であったため、王妃なのに村へ行っては、常に村の支援策などを王に提案し、村の生活を発展させた。その結果、村の人からは愛される王妃となった。


とここまでが、私の両親の話。私には、一人の妹がいる。名はエミリア。この国の第二王女であった。エミリアは父の血を多く受け継いだから私と違い、この国の人に近い見た目だった。彼女は、私のことが好きで常に一緒に行動していた。隣国の王子に会いに行く際も常についてきた。けど、そこがかわいかった。


そんな家族仲の良い王族家庭で、村民に愛され平和に暮らしていた。だが、忘れてはいけない。村民に愛されようが、どこの国にだって反対勢力がいることを。


ある地下通路で密かに男の低い声が響き渡っていた。


「シュバイツァー様、あなたの娘様を王妃にしてください。そうすれば、王もお飾りでこちらの好きなように動くことが出来ます。」

「シュバイツァー様、あの王妃のせいで、私達貴族の懐はさみしいです。この際、英雄気取りをしている王妃を排斥しましょう。」

「背後には大きい組織がいません。今度、第二王女誕生パーティーを行うみたいです。それが最後のチャンスかと。」

周囲の真っ黒い服を着た男たちが囁いている。


「そんなあからさまにやったら、私がやったとばれてしまう。そうだ、王妃には病気になってもらいましょう。少しずつ気づかないように毒を盛るのです。」


とがった髭をなでながら、この中で一番体格の良い男が話した。その男は、貴族勢力の長シュバイツァーであり、その周りは貴族院のメンバーだった。この男は、王様の近くで国の施策を考えているほど賢い男であった。だが、ずる賢かったため、貴族に有利な施策を常に考えていた。重税を課したりして、村民を痛めつけて、自身の懐を温めていた。そのため、村民からは嫌われ者であった。


それから1週間後、第二王女誕生パーティーが開かれた。私は、母親を驚かそうとして、家政婦と村の人と一緒に計画し村で大きなケーキを作っていた。そして届けようとしたとき、大きな叫び声と共に鎧を着た男が入ってきた。


「王妃ミア様が暗殺されたぞ。王妃ミア様が暗殺されたぞ。」


村中騒然となった。私は、その叫んでいた男に見つかり、そのまま城に連れ戻された。この男は、王の近衛騎士団の隊長だ。彼は私とエミリアを連れて王のもとへ戻ったが、王は、放心状態であった。


それから5日後、王妃ミアの葬儀が行われた。王は、表情は無くなり、この世のすべてに絶望していた。王に聞いても、誰に聞いても王妃の死因は分からないまま葬儀が行われてしまった。


それから3年がたち、王様は宰相の言いなりの抜け殻状態であった。それこそ世にいう「お飾りの王」だった。


シュバイツァーは良い機会だと考え、

「王として妻を持つことは必要であります王様。跡継ぎの御子もこの国のために新しいお妃さまを迎え入れてください。」


と言い王に自身の娘のエマを紹介した。それから3日後、王の了承を得て娘が王の前に現れた。


「ハインケル家の娘のハインケル・エマです。」


30代のとても美しい美女だった。彼女は、前の夫と離婚し子供4人を連れている女性であった。王は、


「結婚でも何でもしてよい。もう、そんなのどうでもよい。」


と投げやりであった。私と当時4歳だったエミリアは、新しい母であると喜んだ。喜んだ、だが、母親ではなくそこにやってきたのは悪魔だった。


エマは王に、


「私と結婚する代わりに私の子供たちを第一王女、第二王女、第三王女、第四王女にして欲しいわ。あと、前妻との娘、あの子たち私の子供をいじめそうだし、この国にふさわしくないから家政婦にでもして下さらないかしら。もし嫌なら王妃の権限で牢屋に縛り付けましょう。おほほほ。」


新しい王妃が来てから1週間、殴られたり、蹴られたり、新しい王女に服を破かれたりと、嫌がらせを受けていた。

王は、そのことを密かに知り、あの人にそっくりな子供だけでも、そう思って、近衛騎士団に頼み私とエミリアを連れて密かに逃げることにした。


出発の時


「ゾフィア、エミリア守ってあげられなくてすまんな。この国は、私が何とかする。君たちには、どこかの国で幸せになってくれ。頼む。」


王は泣きながら2人を抱きしめていた。

私は、エミリアと違う国へ行くこととなった。だが、私達はこの誓いを忘れることはなかった。


≪15年後、またここで会いましょう。そして、私達の幸せを取り戻す復讐劇を始めましょう。≫

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

真夜中の復讐 星海棗(ひとみなつめ) @rotbuch

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ