第2話 「異世界転生したら最強能力だった~世界の均衡のために俺(カオス・ニュートライザー)を自由に使ってもらっては困るんだよ、勇者君~」

 =プロローグ=


「あなたは残念ながら死んでしまいました」

 目の前にいる金髪ロングヘアーの女神っぽい衣装を着ている女の人がそう言った。

「えっと…」

 徐々に思い出してきた。

 確か俺はいつも通り大学に自転車で向かっていた。

 そして、その途中で突然目の前が真っ暗になったような。

「今回の件は私の不手際ですので、特別にあなたを現世の記憶付きで異世界転生させます」

 あー、よくある展開だな。

 それなら…。

「俺を最強能力にしてくれませんか?」

 女神は嫌そうな顔をしている。

 しかし、彼女は自分のミスをごまかしたいのだろう。

「わかりました。最強能力ですね」

 そして、開き直りこう言う。

「本当は前世の記憶を持ち越すだけでもありえないことですからね?」

「ありがとうございます」

 とりあえず感謝の言葉を述べる。

 女神はなにやら杖を取り出し、呪文を唱えた。

 これが転生の儀式か?

「では、いってらっしゃいませ!」

 彼女がそう叫ぶと、俺の体が徐々に消え始めた。

 視界が暗くなっていく…。


 =第一話=


 ここは…。

 どこだかわからない不思議な空間。

 意識がぼんやりしていて、自分が起きているのかそれとも眠っているのかもわからない。

 自分の体も見えないほど暗いこの場所は一体?

「ようこそ、勇者様」

 そんな声と同時に目の前が明るくなる。

 周りには王様や魔術師の姿が見える。

 そして、下を見るとそこには俺の体とバカでかい魔法陣がある。

 どうやら俺は召喚されたようだ。


 ん?待てよ?

 確か俺は「転生」するんじゃなかったのか?

 つまり俺はこの世界で産まれ、新たな人生を始めるはずだ。

 だから、今のこの状況は…。

 異世界「転移」では?

 あの女神様、間違えたのか?


「勇者様?起きてください、勇者様」

 魔術師が俺に声をかける。

 どうやら俺がまだ意識を失っていると思っているらしい。

 俺は体を動かそうとした。

 しかし、体はピクリとも動かない。

 あれ?どうしてだ?

 自分の体をぐるっと見回すが、どこかけがをしているわけでもなさそうだ…。

「うう…」

 俺の体が唸り声をあげながら動き出した。

 まともに動いてよかった、よかった。

「おまえを勇者としてこの世界に召喚した。名を名乗れ」

 王様っぽい人がそう言った。

「俺の名前は…」

「僕の名前はコルダーです」

 おいおい、口が勝手にしゃべるとはどういうことだ?

 まさか、誰かに操られているのか?

 俺は周りを見渡したが、特に怪しい人物は見当たらない。強いて言うなら、俺以外の全員が怪しいが。

「勇者コルダーよ。お主には魔王の討伐をお願いしたい」

「わかりました。やってやろうじゃないですか。」

 俺は自信満々に答えた。しかし、王様はそれを無視した。

「えっと、できるかわかりませんがやってみます」

 やはり俺の口が意思とは別に話始める。

 まさかこの口、というか体は俺とは関係ないのか?


 そういえば…。

 どうりで、自分の体を見回すことができたわけだ。

 ゲームのやりすぎで三人称視点に疑問を抱かなかったがよく考えるとおかしいじゃないか。


 …じゃあ、俺は誰だ?

 前世の記憶はある。女神と契約したからな。

 しかし、今世の記憶はない。

 転生なのだから、あたりまえか。

 つまり、俺は今産まれたのか?


 そんなことを考えていると王様が口を開いた。

「これより、スキル鑑定を始める」

 そして、魔術師がなにやら準備を始めた。

 水晶玉を勇者の前に置く。

「この水晶に手をかざしてください。」

 勇者が言われるままに手をかざすと、水晶玉に文字が浮かび上がる。


<スキル:カオス・ニュートライザー>


「おぉ!これは伝説のスキルですぞ!」

「うむ、勇者にふさわしい能力を持っているようだな。ぜひ、その能力で世界の平和を取り戻してほしい」

「は、はい!」

 あれ?俺も最強能力持ってるはずなんだけど…。

 どうやって調べればいいんだ?体がないのに。

「さっそくスキルの詳しい調査をしましょう、勇者様」

 勇者は魔術師に連れられて、王の間を出た。

 俺はそれについていく、というか連れていかれる。

 なぜかは知らんが、俺は勇者から離れられないようだ。




 しばらく歩いていると、城の外の開けた場所に着いた。

「ここは訓練場です、勇者様」

「一度あの的にスキルを使ってみてください」

 魔術師が遠くの的を指さす。

 しかし、勇者はおろおろするばかりでスキルを使わない。

 見かねた魔術師が声をかける。

「どうしました?」

「あの、スキルってどうやって使うんですか?」

「ステータス画面のスキルを選択すると、スキルが使えますぞ」

「ステータスはどうやって?」

「あぁ、これは失礼しました。ステータスは念じれば出てきますぞ」

 しばらくすると勇者の目の前にステータスが現れた。

 ちなみに、俺にもステータスがあると思ったんだが…。出ないので、ないのだろう。

 勇者はスキルの説明を読んでいる。

 スキルの説明には『混沌とした世界を平和に導くための強大な力。※強大すぎるゆえに調整を誤ると世界が崩壊します』と書かれている。

 なんて恐ろしいスキルなんだ。

 彼には頑張って調整してもらわねば…。

 勇者とは苦労が多い職業だなぁ。


<スキルの出力を設定してください>

<ー%>


 こんなウィンドウが目の前に出てきた。

 スキルを使う前に毎回調整するのだろうか。

 スキルの調整は大事だぞ? どうする勇者コルダー君?

 訓練で世界を滅ぼすなよ?


 しかし、勇者は動かない。


 あれ?選ばないの?

 早く選びなよ。


 緊張でもしているのか?


 ん~?

 よく見ると時間止まってる?


 まさか…。


 俺が選ぶのか!?


 いつまで経っても勇者は、というか時は動かない。

 動けるのは俺だけだ。

 俺が選ばないといけないみたいだ。


 しかし、どうして俺が?

 俺は最強能力になって異世界転生して、楽しく過ごそうと思ってただけなのに。

 なぜ勇者のスキル管理をしなきゃならんのだ?


 待てよ。

 最強能力…になる…。


 あの女神…勘違いしやがったな!

 俺は最強能力を持った転生者にしてくれって意味で言ったんだよ!

 なのに、あいつ…!

 俺を文字通り最強能力にしやがったな!

 人間…いや、生き物ですらない概念になんてなりたいわけないだろ!

 どうりでおかしいと思ったんだよ。

 俺の体がないし、なぜか勇者から離れられないし、ステータスが出ないし。


 まさかこんな形で異世界転生を始めることになるとは思いもしなかった。

 これからどうすりゃいいんだよ~。


――――――――――――――――――――


 ここまでお読みいただきありがとうございます。

 この作品は2020年 11月11日 に小説家になろうに投稿されたものです。

 未完の理由は、ネタ切れ……ですかね?

 この能力、調整が難しくて、投げ出しちゃいました。

 アイデアとしては面白いと思います。

 この頃は、私も小説を書き始めたばかりだったので未熟でしたが、今なら書けるかもしれません。


 それでは、またお会いしましょう。

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