第2話 食事処カタギ

1.鳴り響く怒声


朝陽が図書館に射し込む清々しい朝。たまにしかいない午前中のバイトで図書館に来ていた。今サビスレ図書館には、私ととげちゃんしかいない。月に一度、司さんは用事があるらしく図書館を閉める日があった。ただ、人手が増えたことで最近私たちに任せて出かけるようになった。二人なら大丈夫だと任せたのか、それとも仕事を認めてもらえたのかはわからない。私はこのことに関して嬉しいとしか思っていなかった。まあ、人があまり来ないので油断していたのかもしれない。ここに来る数少ない人たちは、癖が強いことを



「そりゃ無責任じゃないか、ええ‼」



私は開架をとげちゃんに任せ、閉架で資料の整理をしていると、開架の方からこの清々しい日に似つかわしくない怒声が聞こえてきた。その声は、聞き覚えのある声で大丈夫だろうとは思うが、初めて相対するとげちゃんは大変だろう。私は開架へと急ぐ



「やっぱり、館地さんか」


「おお、珮夏ちゃん。おはようさん」



開架では珍しく委縮して頭を下げているとげちゃんと先ほどの怒声を上げたとは思えないほどのほほんとした表情で仙人のような髭を生やした老人の姿があった



「どうかしましたか?」


「何でもねぇ。それより亜廉君はいないのか」


「申し訳ないです。司吹は午前中用事があって。何かお困りのことがあるなら私が聞きますが」


「・・・いや、いい。今日はこれでお暇するよ」


「そうですか。まだ涼しいですが、すぐ暑くなってきますから。お気をつけて」



館地さんは片手を上げ、踵を返して図書館から出ていく。これでよかったのだろうか、粘り強く聞き出せばよかっただろうか。それよりも今はこっちのフォローをしなくちゃ。私の隣にはまだ頭を下げているとげちゃんがいた



「とげちゃん。もう頭を上げて大丈夫だよ。館地さんもう帰ったから」


「珮夏、ごめんなさい。私・・・」


「謝らなくても大丈夫。あの人はその、ああいう人だから」



館地さんがなぜあんな怒声を上げたのかはなんとなくわかっていた。私自身も食らった言葉だから



「ああいう人?」


「そそ、試しているというかなんというか。あれでしょ、レファを受ける前の説明をしたら怒鳴られたってとこ?」


「なんでわかったの⁉」


「はははっ、私も食らったからあの言葉。それより本当に気にしなくて大丈夫だからね。またあの人、何事もなかったかのように来るから」


「そうだといいんだけど。私、ああいわれて何も言い返せなかった」


「そりゃそうだよ。館地さんが言ってることも一理あるもん。私も最初は言い返せなかったし。まあ、とげちゃんが言い返せなかったんだもの、当たり前か」


「そんなことは・・・最初はってことはそのあとどう言い返したの?」


「ん?うーんと確か“レファレンスを受けてから言ってください”だったかな」

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