第一章 真夜中の宴 -2-
「ピラ、離せやい」
「今からミーナ踊るから、ちゃんと見ててあげて」
「は、何で俺」
「馬鹿ね、私は今から演奏でしょ」
ピラティは得意げに、ない力こぶをポンと叩く。
彼女が弾くのは横笛。音もリズムよくダンスをするピラティの演奏は、聞いていてウキウキ楽しくなる。
今弾いているエルフたちと交代で、輪が乱れる瞬間、曲調も一気に変わるのだ。
ピラティの演奏ならきっと楽しい曲だろうと、ミーナは確信して逸る気持ちが頬を染める。
輪から引っこ抜かれたイラインはチラチラと、しきりに躍り狂う友人を気にし、それからミーナに目を合わせた。蒸気させたミーナの顔には気付かずに。
「仕方ねーな」
口調が乱暴でも、発せられた言葉には温もりがあって、気遣いが息をしている。嬉しかった。
半端者のミーナを妖精のダンスに誘ってくれる、優しいエルフたち。
「うん。ピラティ、イライン、ありがとう」
背を向けた二人が振り返る。ミーナに向けられる笑顔はどれも温かい。
彼らはライトエルフ。
ライトエルフというのは、エルフの中にある三種類のうちの一つ。
『エルフ』は「白い精霊」または「輝ける精霊」を意味し、元来よりエルフは豊饒をもたらす祖霊だった。緑や白の服を着ていて、それはもう、物凄く美形。
そして三種類の属性というのは、いわば性格のこと。一つは『ライトエルフ』、一つは『たそがれのエルフ』、そしてもう一つが『ダークエルフ』。
『ライトエルフ』はピラティやイラインのように善良な者たちのこと。彼らは#群れをなす妖精__トゥルーピング・フェアリーズ__#で、ウェイランド王と夏の女王に統治されている。
ちなみに、ウェイランドは元鍛冶屋。昔、人間に酷い仕打ちをされた際、目を覆いたくなるくらい残忍なやり方で復讐したことがあると有名。
つまり絶対に怒らせてはいけない。起こらせたら何があるか、想像するだけでも恐ろしい。夏の女王はウェイランドとは違い、優しいけれど。
『たそがれのエルフ』は一番メジャーで、数が多い。
大抵のエルフはたそがれのエルフと言われていて、きっとこの場にも混じっているだろう。見分けがつかないため、見つけるのは困難ではあるが。
普段妖精を見ることがない人間の目撃するエルフはきっと九割方が、たそがれのエルフだろう。
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