ドライブ好きな彼女と東京デートする。

暇な人

エピローグ 出会い

 これから俺たちの物語を見てくださる皆さんには、まず俺らの出会いを語らなければならないであろう。あれは確かそう、2年前だったはず…。



 「やっと着いた…」

首都高速道路湾岸線、辰巳第一PA(パーキングエリア)。月末の日曜日、俺は休みを利用して朝から愛車のレヴォーグでここまで来た。

理由はただ一つ。「東京モーターショー2019」に参加するためだ。

「あとちょっと頑張りますかねっと」

自販機で買った缶コーヒーを片手に、俺はレヴォーグに乗り込む。エンジン始動をしながらコーヒーを喉に通す。

「しゅっぱーつ」

シフトをドライブに入れ、ゆっくりと速度を出す。日曜日だからか、そこまで道路は混んでいなかった。合流をしながら台場ICを目指す。

 有明ジャンクションを通過する。ここまで来ればゴールはあと少し。

 「ここやな」

緑の看板には「台場」の文字。お台場なんか来たのは何年ぶりだろうか。昔家族で来たのは覚えているが、下手したらそれ以来かもしれない。

 料金所を通過し、右折する。どうせ近い駐車場は満車だろうと、俺は少し遠い臨時駐車場へ向かう。


 「ほうほう…。これが新型の…。」

スバルブース。開場からまだ1時間程しか経っていないが、すでにブースには人だかりができていた。俺は人だかりに加わり、新型のレヴォーグをカメラに収めていた。ふと隣を見ると、そこには女性が立っていたが、表情は決して明るいものではなかった。

「…どうかなさいましたか?」

「いえ、何でもないんです…ただ、一緒に来る人が急に来れなくなってしまって…良かったら私と一緒に回ってくれませんか?」

そう言うと、彼女は俺の手を取って笑顔で見る。

「構いませんけど…俺なんかでいいんですか?」

「もちろんです!あなたスバルがお好きなんですよね?私もスバル車が大好きで…」

ほう。スバル好きとな。ならば話は早い。

「そうですよ。俺はずっとスバルが好きで…今はレヴォーグに乗ってます。恰好いいんですよね~。」

「レヴォーグに乗ってらっしゃるんですか!?いいな~。私も乗りたいんですけど…何せ今はお金がなくて…」

「車って何かとお金かかりますからねぇ。」

「さっ!こんなこと話してないでスバルブース、楽しみつくしちゃいましょう!」


 「そういえばなんですが、貴女、お名前は…?」

「あっ!言ってませんでしたね、すみません。私は喜多野美優、と言います。」

「喜多野さん。俺は澤多優、と言います。よろしく」

「優さん!こちらこそよろしくお願いします!」

彼女…いや、喜多野美優はそう言うと、今まで見たことの無い可愛さの笑顔をこちらに向けた。



 「今日はありがとうございました~。おかげさまで楽しく過ごせました~。」

「いえいえ。こちらこそ楽しかったです。」

「あの…良ければこれからも、時々会ったりしませんか?もっとお話ししたいです!」

「もちろん!何なら…俺とお付き合い、していただけませんか?」

「……はい!」

今日一日を彼女と共に過ごした。いつの間にか俺は彼女のことを「ただ今日偶然会った」ではなく「一緒に来た」かのような時間だった。それはとても楽しかったのでもあるし、好意を持ち始めたのもあるだろう。

「じゃあ、今度はドライブ、行きましょう!」

俺はそう言うと、彼女はうなずく。

「もちろんです!楽しみにしてます!じゃあまた今度!」

彼女はそう言うと手を振りながらゆっくりと歩き始め、駅へと向かった。


 初めての彼女。初めて自分から連絡先を聞いた。初めて、自分の愛車に人を乗せることになる。

…今更ながら緊張してきた。彼女ってどんな感じに接せばいいんだ?ドライブってどこに行けばいいんだ?

わからん。




 2年後。彼女に電話をかける。

「もしもし美優?今度ドライブ行こうぜ。1年半ぶりのドライブに、さ」

『あ、優君~。ドライブ?大歓迎だよ!楽しみにしてる!」

さぁて。どこへ行くかな。

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