チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【12】『もう、いらない』【なずみのホラー便 第99弾】

なずみ智子

チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【12】『もう、いらない』

【問題】


 T紗さんは、小学校1年生の娘・U菜ちゃんのお母さんでした。

 クリスマス前、U菜ちゃんはしきりに”ルノちゃん”というクマのぬいぐるみをT紗さんにおねだりするようになりました。

 T紗さんが「どうして、ルノちゃんが欲しいの?」と聞けば、「だって、クラスで人気の女の子は皆、ルノちゃんを持っているんだもん。だから、ルノちゃんが欲しいの」とU菜ちゃんは答えました。

 よって、T紗さんはクリスマスプレゼントとして、U菜ちゃんに”ルノちゃん”を買ってあげることにしました。

 U菜ちゃんと一緒にデパートに行った時、U菜ちゃんのクラスメイトのV実ちゃんの姿もありました。

 V実ちゃんはお父さんと手を繋いでいました。

 きっとV実ちゃんも、クリスマスプレゼントを買ってもらうのでしょう。

 さっそくT紗さんはU菜ちゃんに”ルノちゃん”を買ってあげようとしました。

 けれども、U菜ちゃんは「もう、いらない」と言いました。

 それなら……と、T紗さんは近くにディスプレイされていた、”ピムちゃん”という可愛いブタのぬいぐるみを買ってあげようとしました。

 けれども、U菜ちゃんは膨れっ面のまま、首をブンブンと横に振るばかりでした。

 さて、U菜ちゃんがあれほど欲しがっていた”ルノちゃん”を「もう、いらない」と言った理由は何でしょうか?



【質問と解答】


キクちゃん : あれ? えーと、チエコ先生……この問題は、第11問『欲しいもの』の変化球バージョンでしょうか?


チエコ先生 : そうよ。前回、キクちゃんがリズミカルに正解にまで辿り着けたから、うれしくなったの。よって、類似問題をもう1問お届けするわ。ただし、解答は前回とは違うわよ。


キクちゃん : 今回も同性ならではの勘を働かせて解く問題なんでしょうかね? まず……クラスメイトのV実ちゃんは、U菜ちゃんとよく遊ぶお友だちでしたか?


チエコ先生 : NO。


キクちゃん : V実ちゃんがお父さんに買ってもらったのは、クマの”ルノちゃん”のぬいぐるみでしたか?


チエコ先生 : YES。


キクちゃん : ……! V実ちゃんは、クマの”ルノちゃん”のぬいぐるみの方を買ってもらっていたんですね。えーと……U菜ちゃんはV実ちゃんが”ルノちゃん”のぬいぐるみをお父さんに買ってもらうところを見ていましたか?


チエコ先生 : YES。


キクちゃん : うーん、うーん……あ! そうだ! 確かU菜ちゃんは「だって、クラスで人気の女の子は皆、ルノちゃんを持っているんだもん。だから、ルノちゃんが欲しいの」と言っていましたね。ということは……U菜ちゃんは、”V実ちゃんは自分より上のスクールカーストに属している”と思っていましたか?


チエコ先生 : NO。


キクちゃん : もうすぐ、辿り着けそうな気がします……U菜ちゃんはV実ちゃんをスクールカースト的に自分より下だと見下していましたか?


チエコ先生 : YES。


キクちゃん : 分かりました。U菜ちゃんは、クラスのカースト上位に所属してい女の子たちに近づきたい、あるいは同一化したいと、その子たちが持っているアイテム(ルノちゃん)が欲しかった。”ルノちゃん”そのものが好きなわけではなかった。でも”それ”をやっと買ってもらえると思ったら、自分より下のカーストに所属しているはずの子が”それ”を手に入れたところを見た。そうなると途端に、そのアイテムの価値が下がった……もとい、下げられた気がして、「もう、いらない」と言って膨れっ面になったということですね?


チエコ先生 : YES。正解よ。


キクちゃん : 正解したのはうれしいんですが、なんかモヤモヤしちゃいます。物には何の罪もないのに……それにU菜ちゃんみたいな子は、ちょっと苦手かもしれないです。でも、よくよく考えると、私自身も、人気のアイドルとかが使っている物と同じ物が欲しくなってしまったり、同じ服を着てみたいって思う時は全くないわけではないです……というか、ありますね。


チエコ先生 : 精神分析でいう『同一化』ね。



(完)

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