プロローグ

第25話

「彼女との出会いはいつだったでしょう。私はたった独りでいたところ同じ境遇を持つのにも関わらず明るく振る舞う彼女の存在が心の支えだったのです。彼女の力になるのなら役に立てるのならと協力したのが悲劇の始まり。


 人は都合の良さを求めます。


 他人を信じ真実から目を背け続けると現実に戻ってこれなくなる。嘘に嘘を塗り重ね真実がどうでもよくなってしまう。戻りたい場所はずっど過去にあって通り過ぎた現実をまた都合よく改変する悪循環。彼女はそれでいいと考えた。私はそれは悪いと考えた。見解の相違によって貴女たちと共に私は彼女から分かれたのです。


 彼女からは逃げた私が裏切りに見えたでしょう。しかし、彼女はその事実を都合よく捻じ曲げて世界を変えた。私に都合の良い世の中に。


 私が公に存在すればどうなるのでしょう?


 まったく不自由のなく生きていけます。


 富も名声も地位も何もかも、欲しいがままなのです。そんな世界を彼女は私のために創った。それが可能な力を彼女は持っていた。貴女と同じように。


 伝えておきますよ。私はいまで十分幸せなのです。


 旦那様が与えてくださったこのいまが十分満足なのです。貴女たちといられる時間がこの上なく重要です。だから、このままでいいのです。うふふ。出会った頃を思い出してしましいました。


 いまでは想像できないほど貴女は荒々しかった。何度も受けた不意打ちが少しずつ和らいでいくのが嬉しかったですよ。余計なことなど考えなくていい。楽しみなさい。一緒に楽しんでください。いまこの現実を。


 お願いよ、ホクト。私に旦那様のためにアスカを殺させて」

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悪縁 道茂 あき @nameless774

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