「人間」が息づく「普通」のファンタジー小説

 ファンタジー小説が、ゲームを小説化したようなものや転生・転移ものに席巻されつつある昨今、こちらの作品は「普通」のファンタジー小説になっているように思います。
 テンプレ展開ばかりではなく、設定ゆるゆるでもなく、脚本と小説の中間みたいな書き方でもなく。そして何より、単なる「キャラクター」ではなく「人間」を描いているような作品です。
 ウェブ小説としては、少し異質かもしれません。軽く読めて楽しめれば十分という方には、あまり向いていないのかもしれません。
 しかし、そこに「人間」が生きていると感じられるファンタジー小説を期待するのであれば、こちらの作品は大いにお勧めです。
 作者様はラブコメも書く故、ヒロインはとても生き生きとして可愛らしくなっております。それも本作の魅力ですね。
 NTRなんて不穏な展開もありますし、様々なコメントが寄せられておりますが、物語として面白いことは間違いありません。

 私見ではありますが……。
・誰もが納得できる、これは仕方ないと思うような展開ばかりが物語ではありません。悔やまれるすれ違いも、そこに人間らしさを宿す大事なワンシーンです。
・本当の一大事においては、人は冷静な判断ばかりできるわけではありません。
・女性として惹かれることと、人間として惹かれることはまた別の話です。
・人を見る目なんてそう簡単に養われるものではありません。
・読者的にもやっとすることでも、作者として筋の通っていることはあります。登場人物の心理をより深く想像するからこそ、客観的に見ると「?」となることもあります。

 ともあれ、小説書きとして嫉妬するほどに素晴らしい作品です。
 是非お読みくださいまし。

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